再生支援の総合的対策 | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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 みなさんこんにちは。売れプロ12期生の印南(いんなみ)です。第7回は『再生支援の総合的対策』についてお話します。 

 

 コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進み、令和6年4月には民間金融機関による実質無利子・無担保融資の返済開始の最後のピークを迎えます。 

 

 こうした中、令和6年3月8日に経済産業省・金融庁・財務省の連名にて官民金融機関等による再生支援等を一層促すための施策として「再生支援の総合的対策」を公表しました。 

 令和5年8月に経済環境の変化を踏まえた資金繰り支援や、挑戦意欲がある中小企業の経営改善・再生支援の強化を図るため、『挑戦する中小企業応援パッケージ』が公表されましたが、今回の公表は一歩踏み込んだ対策となったとの印象です。 

 それでは金融庁から公表した報道発表資料を中心に、経産省からの公表も交えて事業者への支援体制がどのように変化したのかを見ていきましょう。 

 

1.発表者 

 前回は金融庁の他、農林水産大臣のみ。今回は総理大臣を筆頭に4省庁の大臣名での声明であり、今回の対策への意気込みが違うことがうかがえます。 

 

【前回】 

 金融庁、農林水産省 

 

【今回】 

 内閣総理大臣 岸田 文雄、財務大臣兼金融担当大臣 鈴木 俊一、 

 厚生労働大臣 武見 敬三、農林水産大臣 坂本 哲志、経済産業大臣 齋藤 健 

 

2.資金繰り支援 

 これまで宿泊業や飲食業を中心とした支援体制の文言から、業種問わず対応する様に変更されております。 

 また、CFの把握だけでなく、融資判断についても明文化され、平時・有時共に一歩先を見据えた柔軟な金融支援が今まで以上に求められる形となりました。 

 

【前回】 

  • 政府系金融機関をはじめ他の支援機関との連携・協働に努める 

  • 特にコロナの影響を受けてきた宿泊業・飲食業 

  • 事業者の足元の業況やキャッシュフローの状況を積極的に把握 

 

【今回】 

  • 融資判断は、事業者の現下の決算状況・借入状況や条件変更の有無等のみで機械的・硬直的に判断しない 

  • 事業の特性、各種支援施策の実施見込み等も踏まえ、今後の経営改善や事業再生に繋がるよう、丁寧かつ親身に対応する 

  • 返済(据置)期間が到来する既往債務の条件変更や借換え等について、申込みを断念させるような対応を取らないことは勿論のこと、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を継続する 

 

3.資本性劣後ローンについて 

 これまでコロナ特例資本性劣後ローンは借入後、3年経過した際に税引き後当期純利益が黒字であった場合の金利が高く(2.6%~2.95% 借入期間に応じて上昇)、また分割弁済が出来ない等不便な事が多かったが、今回の公表で部分弁済が可能となりました。 

 加えて、対象者が小規模事業者まで拡充されたこと、早期経営改善計画でも活用できる等、利用方法の柔軟性を高めた形になったことは評価できると思います。 

 

【追加された内容】 

  • 早期経営改善計画策定支援を通じて策定した事業計画を、コロナ資本性劣後ローンの申込時に必要な事業計画(民間金融機関による協調支援なしの場合)として活用できるようにし、小規模事業者の資本性劣後ローンの活用を促進 

  • 貸付から5年経過後は、事業者が民間金融機関等からの支援があれば、当該金融機関等にも相談の上、事業者申出による期限前弁済(部分弁済を含む)が可能 

 

4.官民金融機関による支援の強化 

 これまでは、具体的な対応策等は明示されず、各支援機関が協調して柔軟に対応する等、ある程度各金融機関に委ねるような事が多かったが、今回営業現場の第一線(外回り)迄浸透させる等の具体的な指示が明記されました。 

 加えて、再生支援から廃業に至るまでの支援体制の拡充等についての明記が目立ちました。 

 

【追加された内容(民間金融機関)】 

  • 営業現場の第一線まで漏れなく説明し、運用開始までに確実に浸透させる 

  • 事業者の現状のみならず状況の変化の兆候を把握し、一歩先を見据えた対応を徹底 

  • メイン・非メインに関わらず金融機関自身の経営資源の状況を踏まえた対応促進 

  • 早期に経営再建計画等の策定支援を行う中で、必要に応じて「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」策定を促進する 

  • 事業者の経営状況に応じたソリューションや経営改善・再生支援に関する取組みを積極的に発信すること 

【追加された内容(日本政策金融公庫等)】 

  • 中小企業GL(R6.1改定)の活用について、その趣旨・内容を営業現場の第一線の職員等まで十分に浸透、事業再生計画の成立や円滑な廃業を主体的に支援する 

  • 弁護士等の専門家との連携強化を通じて、地方における事業再生の担い手の育成に努める 

【追加された内容(官民金融機関)】 

  • 社会保険料や税金等を滞納している事業者に対し、優先的に支払うべき債権であることを認識させ、事業者の状況を踏まえた条件変更等の対応を徹底 

 

5.信用保証協会による支援強化 

 今回の公表の中で一番変化が大きかったのが、この信用保証協会への要請でした。 
 

 これまで日本政策金融公庫を除く、最終処理前の貸出残高(現状の表面貸出残高)が一番多い民間金融機関がメイン行となり、事業再生支援でのファシリテーター役を担うことが一般的でありました。 

 今回の変更で、信用保証協会が主体的に事業再生を担うことになることから、メイン行の考え方が変更となる可能性があります。 

 また、事業再生の取り組みへの目標及び公表も明示されており、今後保証協会等がどのような方針で事業再生に取り組むのかを注視する必要があります。 

 

【前回】 

  • 信用保証協会と連携し、既往の信用保証付融資からの借換、新規資金需要にも対応できるコロナ借換保証の積極的な活用に努めること 

  • コロナ借換保証の利用時の必要な手続きに係る支援にも積極的に取り組むこと

【今回】 

  • 信用保証付融資のシェアが高い事業者等から支援先のターゲティングを行い、主体的に経営支援の必要性を検討し、支援を行う 

  • 協会毎に経営支援の効果検証指標を設定し、支援のPDCAを徹底する 

  • 中小企業活性化協議会などを信用保証委託契約書に明記し、再生支援・スポンサー探しの事前相談の円滑化を図る 

  • 信用保証付融資のシェアが高い事業者(求償債権事業者含む)は、民間金融機関等の関係機関と連携の上、主体的に事業再生支援等の必要性を検討し、直接又は間接的に、中小企業活性化協議会への相談持込みを実施する 

  • 求償権消滅保証等などを活用し事業再生を支援し、金融機関との取引を再開させるため対応を講じること 

  • 事業継続されずとも、保証人がその資力に応じた弁済を誠実に行った等考慮すべき事情がある場合は、保証履行請求は、一律に保証金額に対して行うのではなく個々の債務者やその保証人の実情に応じた柔軟な対応に努めること 

  • 過去に破産や廃業等を経験した経営者でも、過去の事実だけを以て判断を行うのではなく、足下の事業計画等を踏まえ、保証審査を行うこと 

  • 時効が到来している求償権や特別清算(第二会社方式含む)等による法的手続きによって免責が確定している求償権について、求償権残高から権利行使不能な求償権を除外することは、地方自治法96-1-10の『権利の放棄』には該当せず、特段の手続きを経ることなく従来通り求償権の整理を行えることに留意する 

 

6.中小企業活性化協議会による支援の強化 

 今回から活性化協議会が単独で記載されており、低評価の活性協に対しかなり強い口調での業務改善命令が出ております。 

 活性協の行政については毎年公表されており、最高評価をA、最低評価をEとする5段階で評価されており、評価Cまでが合格水準となっております。 

 令和5年10月に公表された『2022年度に認定支援機関が実施した 中小企業再生支援業務(事業引継ぎ分 を除く)に関する事業評価報告書』では5つの協議会がD判定となっており、再生支援完了、抜本案件完了、再チャレンジ支援完了等、各支援の実績が全体的に低調、かつ、地域金融機関、信用保証協会、民間支援専門家、関係支援機関との連携体制も確立していない協議会がD判定となっております。 

 また、再生案件の増加が予想される中、弁護士との連携というのも強化するように促されていることも押さえておくべきポイントではないかと思います。 

 

【前回】 

  • 政府系金融機関や信用保証協会、中小企業活性化協議会、REVIC等の支援機関と一丸となって、認定経営革新等支援機関による経営改善計画策定支援事業や早期経営改善計画策定支援事業も効果的に活用しながら、事業者の経営改善や事業再生、再チャレンジ等の総合的支援に努めること 

【今回】 

  • 毎年度の業績が低評価である中小企業活性化協議会の支援レベルの底上げを図ること

  • 中小企業活性化協議会で再生支援を行う弁護士等の下で、地域の専門家が「補佐人」として支援に参画できる制度等の活用を推進すること 

  • 信用保証協会との連携についても一層実効的なものにするよう務めること 

 7.再生ファンドによる支援の強化 

 今回の公表から新たに明文化され、最近では金融機関が再生ファンド運営に乗り出すニュースが出ております。

 新しい所で言うと、商工中金が令和6年2月に紀陽銀行など6つの地方銀行と独立行政法人の中小企業基盤整備機構(中小機構)と連携し、経営が悪化した中小企業を支援する約72億円のファンドを設立しました。

 投資額は1件当たり4~5億円程度での支援を予定しており、事業再生の必要性が高まる中、事業再生ファンドを使った改善手法は増えるのではないかと予想されます。 

 

【前回】 

 記載なし 

 

【今回】 

  • 中小企業基盤整備機構においては、中小企業再生ファンドに係る存続期間の拡充等を通じて、小規模事業者に対する支援を強化すること 

  • 官民金融機関や信用保証協会は再生ファンドのエグジット対応や再生計画実行中のリファイナンスを足下の事業計画等を踏まえて、個々の事業者の実情に応じた柔軟な対応に努めること 

 この他、経営者保証の充実、「事業再生情報ネットワーク」の創設、令和6年能登半島地震に関する事業者等への資金繰り支援の徹底等が盛り込まれました。 

 

 今回の公表からコロナによる世界的な経済対策が必要な局面から、国内における金融調整の本格化に重きがシフトしたことで、金融庁も本腰を入れて金融安定化を図っていきたいとの思惑がうかがえます。 

 

 保証協会においても、今回から対応方針の大きな変革が求められる一方、民間金融機関の中には不良債権の顕在化から思うように引当が出来ない所もあり、今後ますます金融調整が難航する局面が増えるのではないかと予想されます。 

 

 我々、中小企業診断士においても様々な金融調整を図る中で公認会計士や弁護士等の他士業との連携を密にし、この難局を乗り越える必要があると思います。 

 

 ここまでお読みいただきましてありがとうございました。また、次回も事業再生について皆さんと情報共有していきたいと考えておりますので、宜しくお願いいたします。 

 

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