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売れプロ10期生の羽室 文博(はむろ ふみひろ)と申します。
私のリレーブログでは、コロナ禍を経た、現在の観光産業における日本の宿泊市場について連載をさせていただいております。今回は、デジタル化が進む宿泊市場と個々の宿泊施設でのシステム対応についてお話したいと思います。
約5兆円の市場規模を持つわが国の宿泊市場ですが、前回、前々回のブログでお示ししたように利用者にとって、2000年代に入り、ネット予約が主流をしめて参りました。さらに2010年代における訪日旅行者の急増もネット予約増加に拍車をかけています。
【売れプロ10期生】リレーブログ 10月8日投稿 「コロナ禍における日本の宿泊市場」
【売れプロ10期生】リレーブログ 11月3日投稿 「わが国における宿泊市場の変遷について」
==全体の6割超えるネット予約==
楽天トラベルでの個人的な経験から推測しますと、全国内市場の6割超をネットによる予約が占めていると考えられます。宿泊施設によっては、8割を超える予約がネット経由となっており、デジタルへの対応は不可避となっています。そこでまず、利用者がWEBやアプリを利用して、宿泊施設にどのように情報が伝達されているかをご説明します。
筆者作成 概略図
==OTA・サイトコントローラー・予約エンジン・PMS==
上の図は、宿泊利用者がオンラインで予約をする際に使用されるシステムを図解したものになります。宿泊予約サイトや宿泊施設のHPをご利用されている方も多いと思いますが、宿泊施設の部屋や食事、そして宿泊プランを選択して予約を確定させていきます。選択するための情報は事前に宿泊施設側で登録をしておきます。この登録をするために「OTA=オンライン・トラベル・エージェンシー」はWEBで「管理画面」を用意し、宿泊施設情報を登録してもらいます。それぞれの宿泊施設でも独自にHPを用意します。そして、そこから予約情報を受け取るためのシステム「予約エンジン」を接続しています。
自社HPと複数のOTAの管理画面を個別に設定すると、大変な労力がかかってしまいます。そこで、一括でプランや料金の管理を可能にする「サイトコントローラー」というシステムを利用することになります。「予約エンジン」や「サイトコントローラー」はそれぞれの事業者から提供されるサービスですので、個別に契約が必要となり、個々に費用が発生します。
これらのシステムを経由して予約情報を「PMS=ホテルシステム」に集約します。このPMSで一番使われる機能は「部屋割り」ということになりますが、すべての情報の集約場所になりますので、このシステムに経理システムや顧客管理システム、あるいは館内精算システムなどをつなげていくことになります。
==独特な日本の宿泊マーケット==
海外大手ホテルチェーンでは、これらのシステムを自社開発し、そこから得られるデータを活用してマーケティングに利用しています。マリオットやヒルトンのロイヤルカスタマー向けプログラムをご利用されていらっしゃる方も多いのはないでしょうか。このデータ活用こそ、重要なポイントになっていきます。
日本の宿泊マーケットは世界の中でもユニークなところがあります。宿泊に特化したビジネスホテルという業態は我が国独自の発展をしています。また、地方に点在する旅館は独立した中小企業によって営まれ、産業としてのまとまりが弱く、情報・データを活用するという点も遅れていると言わざるを得ません。
観光産業を日本の成長戦略に組み込んでいくためにも、個々の宿泊施設のデジタル活用という視点は非常に重要だと考えています。また、そこで得られるデータを共有して活用ができれば、地域のデジタルマーケティングにも有効であると思います。
DX時代に対応するためにも、中小企業診断士としては、データ活用の提案が欠かせないものとなっています。そのためにも個々のシステムの役割や機能についての理解をし、そこから得られるデータをどのように活用していくかが求められています。特に宿泊マーケットにおいては、将来の需要に対する予測の観点が必要となります。
次回のリレーブログでは、個々の宿泊施設におけるマーケティングについてお話をしたいと思います。新政権による「Go Toトラベル事業」の概要も見えてきました。2022年は、少し明るいニュースが聞こえてくることを願っております。