晩夏光

打つも果てるも 火花のいのち 太刀の軋りの 消えぬひま
(宮澤賢治)
夏の終りを告げるには
白刃一閃
そんな
鋭さよりも 瞬きよりも
ゆるやかに
自由落下してゆく
しだれ花火が相応しい
夏を
名残り惜しむように
幾ばくかの猶予を与えられたいのち
夏草にむせ返る夜の 蛍火
灼けた路面に鮮やかに萌える 赤いカンナ
ペルセウスの放つ矢の如き 流星
夏は
はかなげな炎に揺れている
迫りくる切なさは
誰しもが
その胸に
ひとつずつ
いつ果てるとも知らぬ
小さな炎を宿しているから
打つも果てるも ひとつのいのち
このリフレインを 遠く離れていた恋人に書き送ったのは
立原道造だっただろうか
*
小さな旅と知りながら
心のこる部屋
インクや本や時計よ
時計は一時でとまつてゐる
皿やナイフや花瓶よ
花はあした涸れるだらう
さうして僕は汽車にのるだらう
田舎の道に人は見るだらう
ひとりの僕がかなしげに眼をつむるのを
思ひ出よ 僕の夢よ
僕はすべてを忘れるだらう そのとき
僕は思ふだらう もうみんななくしたと
(立原道造 「旅装」)
日射しがもう少し やわらかくなったら
長袖のシャツで 秋を迎える
旅に出てみたい
*
最後の
大華火が
空高く上がると
眩い光に
少しだけ遅れて
「 夏もお終い 」
と
無限を震わせる 音が響いた

音楽劇 「オリビアを聴きながら」

音楽劇「オリビアを聴きながら」扉座/RAYNET 青山円形劇場 2012年8月22日~31日
青山円形劇場は、その名の通り、円形の舞台をぐるりと囲むように客席が設けられている。
今回はその丸い舞台を、大きなアナログのレコード盤に見立てている。
そう、レコード盤がCDへと変わっていった、70年代後半から80年代に若き日を過ごしたのが、
今回の物語の主人公。現在は、中年と呼ばれる40代から50代となっている。
80年代と現在・・・そのふたつの時代を、行きつ戻りつしながら、尾崎亜美の曲に乗せて物語は進んでゆく。
「扉座が辿ってきた時代と、そこに生きた若者の夢と希望と挫折・・・」(パンフレット)
劇団「扉座」は、主宰であり、今作の作・演出である横内謙介が、ちょうどそんな時代、80年代自身の高校の演劇部を母体として結成した劇団「善人会議」がその前身である。
そういった意味でも、作者自身の十代から現在までの時代背景をなぞるような物語となっている。
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同志諸君!
尾崎亜美さんの名曲の数々を繋ぎ合わせて、切ないラブストーリーを紡ごうというのが当初のプランだったのが、企画進行中に3月の大震災が起きて、気分が大きく変わり、ちょっとシリアスなメッセージを持つ、闘う人たちの音楽劇になりました。
「私は緩いOLたちの恋バナとかじゃ、つまんないと思ってたのよ。大事なことやろう」
音楽監督も務めてくれた亜美さんが、誰よりも賛同してくれて、前代未聞の中年男子、というかオッサンたちのための尾崎ワールドを創り出してくれました。出演者たちもそれを面白がり、テーマに共感してくれて、泣けて、燃える、ボクらのオリビアが完成したのです。」 作・演出 横内謙介より (パンフレットから)
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主人公の経て来た時間。
高校の文化祭の後夜祭、「オリビアを聴きながら」を弾き語る彼女との出会い、そして恋愛と別れ。
時を隔てて、厳しい社会状況の中、不条理を感じながらも生きていく今日。
同世代に近く生きてきたと言える私も、どこか脳裏に、はたまた鼻腔の奥に、同じ匂いを嗅いだ記憶が、舞台を、メロディを、トレースした。
バブルから失われた十年を経て、現在に至る時間の流れ、抗うことも無く、時に違和感を感じつつも過ごしてきた時間の流れ。
表立って台詞にはなっていないが、非情にも思える時間の流れに、押されてきた背中とその歩みを、たった今、ふと立ち止まらせる何かがある。
3.11と言ってしまうことには若干の躊躇いもあるが、そこから照射される光の強さは、それまで、至極当たり前の如く歩いて来た私達を、確かに立ち止まらせ、振り返らせた。
そうするに十分過ぎる、未だかつて、経験したことの無い激しい光だ。
それは、現在のおのれの在り方のみならず、「女の子とスキーとセックス」について考えていればよかったあの頃までをも、強く照射している。
あの頃の自分と今の自分と、繋がる自分とちぎれてゆく自分と・・・。
気になって、調べてみると、タイトルにもなっている「オリビアを聴きながら」がリリースされたのが1978年。
さて、その時、いくつだったでしょうか?(笑)
音楽には、その時の情景や匂いや気分などを鮮やかに、時に生々しく、甦らせる力がありますね。
気付かされた匂いは、気付かない振りしていた匂い、気付くべき匂いでもあって・・・。
なんだか、私がこうして書くと、とても辛気臭い舞台のようですが、そんなことはありません(笑)
むしろ、笑っている方が多いくらい。また、円形劇場ならではの一体感があって、目の前で歌われる尾崎亜美の歌の数々もダンスも迫力があって、魅力的。
そんな中にも、なんとなく感じている時代の気分と言うか、時を経て、風が変わったと感じる部分、そんなものを再認識させられたり、少し考えさせられたりする、そんな舞台、時間でした。
「こんな時代に軽く絶望し、溜息をついている、同志諸君に届けたいメロディと言葉たちです。」(横内謙介)
そう、音楽を鳴らし続けよう・・・なんて台詞もあったかな。
作家の横内謙介さんは、猿之助の「スーパー歌舞伎」まで手掛ける懐の広さもありながら、お書きになる脚本には、その出自であるアマチュア演劇の良質な部分を残している作家だと思います。
8月31日までです。当日券もあるようですので、機会があればぜひ。おススメです^^
扉座公式サイト → こちら
「 ボーイの季節 」 松田聖子 ※ 劇中曲
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いつも ご覧いただきありがとうございます
しばらく 間が空いてしまいました (ペタもお返しせず すみません)
当面 こんな状況かと思います
たまにでも のぞいていただければ幸いです
まだまだ 暑い日が続きます みなさま ご自愛下さい


