俺の名はリオレウス。
空の王の異名で知られる、火竜の血統だ。今日は最近新しく巣を作ったこの
孤島で彼女とデート。
緑色のきめ細かい肌が自慢の俺の恋人、リオレイアちゃんと楽しい孤島ライフを
満喫しちゃうぜ。
今俺は巣の近くの美しい滝が流れる渓谷にいる。ここは、アプケロスや
ケルビみたいな美味い獲物がたくさんいる、俺たちの食事場だ。
彼女と一緒に来ても良かったんだが、最近このへんにはハンターとかいう
人間共がうろついているらしいので、俺だけで様子を見に来ているのさ。
このハンターとかいう奴らは、どうも俺たちの同胞を殺して回っているらしい。
人間の分際で、ふざけていやがるぜ。
渓谷に降り立つと、ケルビたちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく
今は特に空腹でもないし、俺だって余計な殺しはしない。
あたりを見回しても、特に危険はないようだし、彼女を呼んで・・・ん?遠くから、
人間らしきヤツが走ってくる。ちっぽけな体にその辺の石やら動物の皮やらで
つくった鎧を身につけ、その体よりも大きいようなランスをしょっている。
間違いない、ハンターだ。どうやら、生意気にも俺と彼女を殺そうってハラらしい。
たった一人でこの空の王者に挑もうとは良い度胸だ。軽く蹴散らしてやる!
・・・と思ったら、ヤリハンターは俺の横を走り抜けて洞窟の中へ入って
いきやがった。
ふん、怖じ気づいたか、それともまだ仲間がいてそいつと合流する気か・・・
ん、そう言えば、俺は普段空を飛ぶからあまり入らないが、この洞窟は俺の巣に
つながっていたな・・・。まさか、ヤツの目的は・・・!
俺は慌てて翼で空を叩き、巣に向かって飛び立った。
俺の恋人とて陸の女王と謳われるリオレイア、まさか人間のハンター如きに
簡単に殺されることはないだろうが、それでも不安は残る。
案の定、巣に戻ると彼女の姿はなかった。
たまに俺の巣に紛れ込んではちょっかいをかけてくるジャギィの死体が
転がっている所を見ると、やはりここで彼女はハンターを迎え撃ったようだ。
恐らく、この狭い場所では戦いづらいと思った彼女が、広い場所へ奴らを
誘い出しているのだろう。
この付近で遮蔽物がなく戦いやすい場所・・・といえば、海に続く岩場だ。
微かに水の流れるあそこなら、俺たちの得意技である火球も吐き放題だ。
急いで岩場へ向かって飛んでいくと、彼女と二人のハンターが
対峙しているのが見えた。
やはり、先ほど見たヤリハンターの他に、でかいオノらしき武器を振り回している
やつもいる。
彼女も必殺のサマーソルトを出して応戦しているが、このハンター共は
ちょこまかと鬱陶しく動き回り、攻撃をかわしては彼女を斬りつけている。
それを見て、俺の頭にも一気に血が上った。
体の中の業炎袋から、灼熱の火炎が口元まで吹き出してくる。
俺は、俺の大事な恋人に好き勝手斬りかかっているちっぽけな人間どもに、
咆哮した。口からは炎が漏れる。
俺の剣幕に、さしものハンター共もおびえの色を・・・って臭っ!なんか投げつけて
来やがった!
俺はこれでも恋人に嫌われないよう、お洒落には気をつけている。
この間は通販で特注のオー・デ・コロンを買ってデートに備えていたし、
紅い自慢のぼでぃはいつも清潔でいられるように滝で水浴びをしている。
そんな俺に、オノハンターがすげぇ臭い匂いを発する玉を投げて来やがった。
目にしみる臭さに、俺は思わず彼女が目の前で襲われていることも忘れ、
逃げ去ってしまった。
巣に帰ってしばらくたつと、匂いも取れてきた。と同時に、俺は我が身かわいさに
彼女を置いて逃げてきてしまったことを激しく後悔した。
そうだ、俺はハンター共から彼女を守らなくてはいけない。
少しくらい体が臭くなったくらいで彼女を置いて逃げさるようで、何が空の王者だ。
俺は意を決し、再び岩場に飛び立った。
先ほどの岩場に、彼女とハンター共はいなかった。
だが、水辺に落ちている可愛らしい毒の棘がびっしりと生えた彼女の尻尾が、
ここで起こった惨劇を物語っていた。
すぐ近くから彼女の咆哮が聞こえた。彼女とハンター共が移動した先は、
この近くにある人間共のキャンプの脇らしい。
急ぎ移動しそこに降り立った俺が見たものは、美しい体をボロボロにされた
彼女と、相も変わらず執拗に彼女に斬りかかるハンター達だった。
傷ついた彼女の眼が、俺に助けてくれと訴えているように見えた。
今度こそ、俺は彼女を守りハンター共を抹殺しなくてはならない。
再び口元までせり上がってきた紅蓮の怒りとともに、俺は咆哮した。
それを見たオノハンター(どうでもいいが、なんでこいつは俺の咆哮を聞いても
身じろぎ一つしないんだ?)が、また臭い玉を俺に投げつけてきた。
が、俺はこの悪臭に耐えた。というより、俺は怒りのあまりもはや臭気など
感じなくなっていたのだ。
こうなってしまえばたかだか2匹程度の人間などこの空の王者の敵ではない。
怒りで威力30%増し(当社比)の火球ブレスや体当たりで、すでに彼女を
相手にひいこら言っていたハンター共は青色吐息だ。
よし、このまま一気に・・・と思った瞬間、俺の眼前でハンターが投げた何かが
破裂した。直後、すさまじい光が俺の目を焼いた。
何だこれは!眩しさに目が眩み、俺は何も見えなくなってしまった。
しかし、近くにハンター共がいるのはわかる。
見えずとも、俺の尻尾で吹っ飛ばしてくれるわ!
体を勢いよく揺すり、凶器と化した我が尻尾をハンター共がいると思われる
場所にぶつける。確かな手応え、と同時に聞こえる聞き慣れたうめき声。
・・・あれ、もしかして今尻尾が当たったのはリオレイアちゃん?
なんと言うことだ!俺は、目が見えないばっかりに愛しい彼女に尻尾をあげて
しまったというのか!
ようやく眼が見えてきた俺の視界に真っ先に飛び込んできたのは、彼女の顔。
傷ついたその痛々しい顔が・・・って、何故後ずさる、リオレイアちゃん。
そして何故俺にサマーソルトキックをかます!
どうやら、彼女もまた忌々しい閃光の餌食になってしまい、視界を奪われて
しまっているようだ。
もはや、こいつらを生かしておくことは絶対にできない。八つ裂きにしてくれる!
その後も、激闘は続いた。
さしものハンター共も、我々二人を同時に相手にして生き残る術はない。
しかし、既にハンター共にいじめぬかれていた彼女が、ついに苦しげに
呻きながら足を引きずりだした。
その痛々しい姿は、直視することを憚られるほどだ。
ここは俺が食い止める。君は一旦巣に戻り、体力を回復させるんだ!
俺は彼女に眼で訴えた。
それを見た彼女は、傷ついた体を必至で支えながら飛び立ち、あとには
俺とハンターだけが残った。
さあ、雌雄を決しようではないかって眩しっ!やつらはしつこく閃光で俺の
視界を奪って来やがった。
しかし、たとえ見えずともここにいるのは俺とハンター共だけ。
間違ってリオレイアちゃんを攻撃することもない。
俺は目の見えないのも構わず、尻尾を振り回し応戦した。
だが・・・不思議と、あたりは静寂に包まれている。
おかしい、俺の視界を奪った今こそ、ハンター共にとっては絶好の
チャンスのはず・・・。
ようやく目が見えるようになった俺の周りには、誰もいなかった。
もはや何が起こっているのかは考えるまでもない。急いで、俺は巣に向かった。
孤島の山頂付近につくった俺たちの巣。
そこは、俺とリオレイアちゃんの愛の巣になるはずだった。
だが、その巣に今横たわる彼女は、既に息をしていない。
全身を駆けめぐる絶望感。そして、燃えたぎるような怒り。
だが、この場所でハンター共を殺すのはいやだ。
ここは、永遠に俺と彼女の愛の巣なのだ。
俺は、この場所で俺を迎え撃とうとするハンター共を誘うようにして、
岩場へと飛び立った。そこが、最終決戦の地だ。
どうやら俺は、人間というやつらを見くびっていたようだ。
傷ついた体をかばうように足を引きずりながら、朦朧とした意識の中で俺は
考えた。
ハンター共はいくら炎を浴びようと、いくら尻尾に吹っ飛ばされようと、何度でも
立ち上がり向かってくる。
すでに空の王者の威厳たる翼も、強大な武器である尻尾も見る影もなくなって
しまっている。俺はこいつらに殺されるかもしれない。
せめて、最後は彼女の元で・・・。俺は必至で羽ばたき、巣へと向かった。
巣には、まだ温かい彼女の亡骸が残っていた。
俺はその傍らに横たわると、深い眠りに入った。
まだ、まだ終わってはいない。ここで体力を回復できれば、まだ勝ち目はある。
見ていてくれリオレイアちゃん。
俺は、絶対に君のカタキを・・・っていてえ!斬られた!
ハンター共だ。俺にはもはや抵抗するだけの体力は残されていなかった。
意識が遠のき、そして、俺は醒めることのない眠りへと落ちていった。
最後に眼に入ってきた光。
その中で、俺はリオレイアちゃんの笑顔を見たような気がした。

