MEMEMORY PROFILE シリーズ6。
ミナシュマリ。

 

 

 

メモリーの書き起こしは、エイル ⇒ ミナシュマリの順で読む事を推奨。
 

だが、可能であれば、ゲーム内での視聴をオススメしたい。
特にミナシュマリのメモリーは、内容・演技ともに非常に良かった。



専用武器。不倶戴天について。

不倶戴天に関しては、日常的用語なので。解説は省く。

問題は英文章にしたときの表記。

『Sutu of Vengeance』

Vengeance は分かる…。revenge の類語で復讐の意味。
でも、Sutu ってなんだ。何か、記憶の端で聞いた覚えがある。

………これかッ!



ストゥ(制裁棒)だ!

ゴールデンカムイでアシリパ(リは小文字)が、
事あるごとに振り回しているヤツじゃないかッ。

彼女は携行性を重視して、木製で小さいものを使用していたが。

手持ちの資料によると、ミナシュマリが持っているような、
金属性かつ巨大なストゥも存在していた。

用途を考えると、金属製かつ巨大なストゥの方がスタンダードなのかもしれない。





蝦夷島奇観。(上記図)において、以下のような記述がある。

アイヌたちのあいだで、裁判での決着がつかない場合。
次の手段として、ストゥでの打ち合いで決着をつける。
…つまり、決闘である。

ストゥでの打ち合いには、打ち手と受け手が存在し。
野球のように交互に攻守を繰り返す。

(どうみても逃げられないので)図の場合とは異なるが。

受け手側が、防御や回避を許される場合もある。
事前の取り決めによって、ルールは多少変化する。

ストゥの一撃を受けただけで死亡。
という場合も、ザラに有ったようであるからして。
ある程度、臨機応変に対応していたのだろう。

防御方法に関して、マントを使用した場合があるとの記述が存在し、
これがミナシュマリのマントの由来である。
大きさからいって、防寒の役には立たないので、この点は間違いない。

アイヌにとって。自分が悪人でなかったとしても。
ストゥを扱う機会が訪れる可能性は、それなりにあったものと思われる。
よって、特別な理由がなくとも、アイヌはストゥの扱いを練習をする。

つまるところ、ストゥはミナシュマリにとって使い慣れた武器なのである。


スキル名称。親切な狐の子。について。

ミナシュマリの…狐の要素。いったいどこだ?と思った。
外観的には、全くもって狐の要素がないので。
もしかして、母親が狐という事かも…と深読みをしてしまった。

しかし、専用武器の名称から、
彼女がアイヌにルーツを持つことが知る事ができたので。
アイヌ語で調べると理解ができた。

ミナ。が笑いや笑顔を意味し。
シュマリ。が狐を意味している。
笑顔の狐。とても、良い名前だと思う。


ミナシュマリは、英語表記だと。
Minasumari となっており。
ミナシュマリと発音するのは、一見すると不可能に思われる。

軽く調べた程度だが。

アイヌ語は。サ行(サシスセソ)と、
シャ行(シャ、シュ、シェ、ショ)との区別が無く。

ヘボン式表記だと、シュマリは、shumari となるところだが。

アイヌ語の名称をローマ字で表記した場合だと sumari となり。
この場合の読みは、スマリでもシュマリでも。
どちらでも、問題が無い事になっている。
また、スマリでも狐を意味する言葉となっている。

ゴールデンカムイのアシリパの名前もそうだが。
彼女の名前もまた、既存のローマ字表記では対応しきれないのだろう。

東方projectのキャラクター。
因幡てゐ(いなばてい)。を、忠実にローマ字表記にすると。

Inaba Tewi となってしまい。
これをこのまま発音すると、テウィーになってしまうのに少し似ている。


ちなみに、このスキルの英語表記は。Gentle Fox Cub.

Kind Fox Cub.でも、日本語としての訳は一緒だが。
Gentle.の方が、本来の彼女が持つ、強い善性を表現できているように思う。



余談。

アイヌは一定以上の年齢になると、
顔にイレズミを入れる風習が存在している事は有名だが。
彼女の顔にも、イレズミが入っている。
(注視しないと分からない程度だが)

相変わらず。このゲームはやることが細かい。

しかしながら、この点に関しては色々とセンシティブな事情があるので。
ハッキリとソレと分かるものを入れる事ができない。
という制約は存在したものと思われる。



二人。恩讐を越えて。

エイルとミナシュマリ。

二人の詳しいいきさつと、ミナシュマリの復讐の顛末については。
両名のメモリーの書き起こしを読んでいただきたい。
しかし、繰り返しになるが可能であるならゲーム内での閲覧推奨。

彼女たちには、非常に複雑な感情の機微が存在し。
一口に、二人の物語はこういう結末だ。
と、言い切ってしまうのはムリだと思う。

死を望むものに対して、望むものを与えるのは罰と呼べるのか?
いや、決して償いにはならないだろう。

凶行へ至る事になった、エイルの事情を理解したミナシュマリは。
エイルへ言葉によって呪いを与える。

『生きて』

端的な言葉だが。
自分の死をもって、償いとしたい。エイルの意思の真っ向からの否定である。

ただ、取りようによっては、更なる贖罪の機会を与えたとも取れる。

メモリーを見る限り。
ミナシュマリはエイルに自分の姉を重ねている。
エイルはミナシュマリに自分の妹を重ねている。…のかもしれない。

どんな人間も、他人の代わりになることはできない。
しかし、新しい家族になることはできる。

いつかは呪いが、祝いへと変わる事を信じている。



記事の作成に際しまして、以下の資料を参考にさせていただきました。
先達へ深い感謝を捧げます。

北海道大学 北方資料データベースより。
村上島之丞『蝦夷島奇観』(1800年。※寛永12年) 

手塚治虫『シュマリ』(1974年)
中川裕『ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化』(2024年)