採用における「後出しじゃんけん」
採用面接は契約交渉の場でもあります。
その場でお互いに条件を提示しあい、
折り合うかどうかを確認する場です。
ですが、面接の場で大事なことを言わず
あとになってから言ってくる候補者が
少なからずいます。
(ケース1)
提示した条件で入社を承諾して
おきながら、入社直前になって
「提示された条件では給与が前職に
比べて下がる。月1万円だけ上げて
もらえれば前職の水準に届き、
気持ちよく働くことができる
ので、ぜひともお願いしたい」
と申し入れてくる。
(ケース2)
不採用通知をした後に、面接の
やり取りの中で気に入らない質問や、
やりとりがあったと、あとになって
抗議をしてくる。
「面接官の態度がでかかった」
「質問が詰問調で不快な思いをした」
間違ってはいけないのは、面接での
やりとりはじゃんけんのようなもので、
後出しは認められないということ。
お互いの条件をぶつけ合うことが
大事であり、受け入れられないことが
あるなら面接の場で主張するか、
さもなくば黙って交渉決裂という
判断をすればいいだけのことです。
入社直前になって給料を上げてくれと
言ってきた人を、同じ会社の一員と
して快く迎えられると思いますか?
不快な思いをしたならその場で言えば
いいのに、あとになって抗議をするのは
卑怯なマネだと思いませんか?
なぜ、自分で自分の値打ちを下げる
ようなことをするのか、
理解に苦しみます。
採用はダンス
人材採用はダンスパートナー探しです。
その候補者があなたと、もしくはチーム
メンバーと息の合うパートナーと
なれるかどうかを見極めること。
これがなによりも重要であり、このことを
確認しないのであれば面接をする必要も
ない、といってもいいくらいです。
息が合わないと感じる候補者である場合、
レジュメに書いてある経歴やスキルが
いくら素晴らしくても採用しない
ほうがいい。
レジュメに書いてあることは、あくまでも
過去の実績。これからあなたの会社でも
同じパフォーマンスを発揮できるか
どうか、わからない。
仕事の能力は環境に大きく左右される
もので、どんな環境でも実力を発揮できる
人は少ない。
一流のテニスプレイヤーでも、人工芝の
コートが得意な人もいれば、赤土のクレー
コートが得意な人もいる。
グランドスラム達成には両方のコートで
勝つことが必要なので、難しいわけです。
野球で言えば、左投手と右投手で成績が
全然違ってくるし相性もあるので、
先発投手が誰かによって出場する
選手が変わります。
ビジネスにおける環境とは、
職場の人間関係のこと
といっても過言ではありません。
あなたの、もしくはチームメンバーの
ダンスパートナーとして、
その候補者は適切だと
思いますか?
うまく人間関係を築けそうですか?
その関係はずっと続きそうですか?
もしこれらの問いに疑問があるなら、
採用してはいけません。
一人の採用によって、チームが、会社が
大きく揺るがされることもあります。
人材採用はビジネスにとって、
最も重要な決断です。
想いの貯金
人材採用の過程では99%の人が
不採用になる。
書類選考での不採用が約80%、
面接での不採用が約20%と
いったところだろうか。
採用されるのはほんの一握り。
そうならなかった方は、
「縁がなかった」という一言で片づけ、
不採用連絡をすればまだいいほうで、
その連絡すらしない企業もよくある。
「今回は」――つまり、人材採用という
プロセスでは縁がなかったというだけ。
金輪際、ずっとなんの縁もないという
ことはないはずなのである。今後のことを
考えない企業があまりに多い。
企業と個人とが結ぶ関係はたくさんある。
消費者として、株主として、取引先の
担当者として・・・
そうなったとき、応募者を大切に扱って
いなかった会社は後悔することになる。
不採用になった方々の「想い」を
大切にし、「不採用になったけど、
応募してよかった」と思ってもらえれば、
その想いは「いい評判」として貯金
されていく。
採用活動は、あなたの会社のファンを
作る絶好の機会です。
なにも難しいことはないはずです。
普段、あなたのお客様に対するのと
同じ扱いをすればいいのですから。
採用現場に必要な「きびだんご」
最近読んだ本
「運命をひらく
生き方上手 松下幸之助の教え」
本田健 著
のなかで、松下幸之助が一代で
世界のパナソニックを築きあげる
ことができた理由の一つに
「人間関係の達人」
であったことが挙げられています。
そして、人間関係の達人である
ことの一つの条件として
「微妙に動く
人情の機微を知り、
これに即した行動を
心がけること」
という教えがあります。
この「人情の機微」、採用の現場で
無視されることの多いのは、
採用する側でもされる側でも
多く経験してきました。
採用される側では・・・
「面接後の採否連絡が一切ない」
「ろくに応募書類も読んでいないので
読めばわかる質問をしてくる」
「名前を間違える」
採用する側では・・・
「急に音信不通になる」
「事業内容も知らずに面接に来る」
「やたら待遇のことばかり気にする」
採用現場では99%は縁がないまま
終わり不採用になるため、多くの人
とは、接触はほんの一時のこと終わる
ことが多いです。
しかし「ほんの一時」のことであっても
人間と人間の関係として大事にする
という発想ができず、心のこもった
対応ができない人があまりに多い
ように感じます。
こういうことをする人に、人情の機微
と言ってもなかなか理解はされない
のはわかっていますが、それでも私は
「きび(機微)だんご」
を渡そうと努力します。
それが、採用現場のプロとして
当然のことだからです。
桃太郎が腰に付けていた
きびだんごは
「機微だんご」だった。
イヌともサルともキジとも、人情の
機微の微妙な動きを理解しあえる
関係だったからこそ、そんな仲間
だったからこそ、鬼退治が可能に
なったのではないでしょうか。
たとえ、きびだんごを渡した相手が、
熾烈な経済競争という鬼退治には
協力してくれなかったとしても、
私はこれからも出会う人には
きびだんごを渡していけたらと
思います。
