蒼いマンゴーが堕ちたら -7ページ目

蒼いマンゴーが堕ちたら

フィリピンを舞台にした単なるフィクションストーリーです。多分フィクション・・・・

日本に帰ってきたオレはフィリピンボケの為に生活リズムを取り戻すのに苦労していた。


近所のデパートでフィリピン人親子を見るとアシュリーの記憶がフラッシュバックで甦ってきたりしていた。


何をしていても刺激がなく、許されるなら今すぐにでもフィリピンに行きたい気分だった。


帰国後にリリィと電話で何度か話をしたが来日間近のリリィの話題は日本の話ばかりでオレ的に満足出来る話題はなかった。



たまにリリィの不在にも係わらずリリィのいた店に顔を出していた。店のババエやスタッフにもリリィとの関係は知れてしまっている。ここで何をする訳でも無いのだが来てしまう。



その日も仕事が終わって予定も無く帰る途中だった。夕食の買い出しにスーパーに行くとフィリピン産バナナが売られていた。一房200円のバナナは日本人の感覚ならば安いのだろう。


結局、バナナと牛乳だけを買って家に帰った。バナナを一本、房から千切って皮を剥く。



無性に侘しくなった。バナナの皮をゴミ袋に投げ込み部屋を出て、オレはリリィの店に向かっていた。オレの車のルームミラーにもロザリオが揺れている。



ほぼ満員の店の中に進むと、ババエが声を掛けてくれる。店長に案内されたのは縦長の店の奥に位置した場所。ここからはステージが見えないがステージ側からも見えない場所で、別名プライベートルームと呼ばれていて深夜になるとババエの誰かがヘルプと称して眠りにくる場所だ。


プライベートルームのテーブルは三つ有り、今日は全て埋まっている。よく店で見掛ける顔ばかりで、皆軽い会釈をしてくれた。



隣の常連から声を掛けられフィリピン料理のおすそわけを貰った。食べた事のないその料理はカレカレと言うそうだ。カレーの一種かなと思ったがそうではないらしい。何とも不思議な味だ。その常連に話を聞くと、彼は年間5回以上はフィリピンに行っているらしい。ベテランと呼ばれる人種だ。


初めてフィリピンに行った話をすると色々な情報を教えてくれたが大体がババエ関係の話でオレには必要ない物だった。お互いに隣に座っているババエを放っての会話をしていると彼がフィリピン語でババエに何か言った。オレは話の内容より目の前の男が何故フィリピンの言葉を喋れるのかが気になった。



オレはストレートにそれを聞いた。



高い授業料払ってきたからね。



意味深な台詞を彼は吐いた。


外見は大して格好良くないが不思議と格好良く見えたのはやはりフィリピン語を喋ったからだろう。


オレは彼を羨ましく思った。少なくとも言葉が喋れるならオレの知らないフィリピンの景色も知っているのだろう。



フィリピン語を勉強したい。



漠然とオレは思った。
アシュリーとの二日間はオレにとってとても新鮮だった。多分アシュリーがいなかったらリリィと喧嘩をして険悪なまま日本に帰った事だろう。


一緒に食べたハロハロの味や、オレがビールを飲み過ぎるとクローゼットにビールを隠していた事や、日本食レストランに行き箸の使い方を教えた事などアシュリーがいなければ経験しえなかったものだ。


最後の夜早い時間から三人で川の字になって寝た。


オレはリリィを介してアシュリーに聞いた。



アシュリー、何かしてほしい事ある?



アシュリーはリリィに耳打ちした。



アシュリー言ったよ。また逢いに来てって。



オレは小さなフィリピーナと約束をした。決して破る事の出来ない約束を。



アシュリーはオレの腕を枕に、リリィの手を取り小さな手を添えオレとリリィにおやすみのキスをした。


すぐに寝入ってしまったアシュリーの顔を見ながら何時しかオレも眠りに堕ちた。



朝はやはりアシュリーに起こされた。最後の朝食を取りチェックアウトする。アシュリーは空港までリリィと見送りに来てくれるらしい。そのあとでリリィが母親の元に送り届ける。



タクシーの中でアシュリーはリリィに聞いた。それを聞いたリリィはアシュリーを抱きしめた。


アシュリーは何を言ったのかとリリィに聞いた。



リリィは涙ぐみ



ハポンのタタイは何時逢いに来てくれるって・・・・



オレまで泣きそうになった。アシュリーの頭に手を添えてオレは何も言えなかった。



空港に着くとアシュリーが泣き出した。それにつられてリリィまで泣き出した。時間が迫り、オレはゲートに向かった。アシュリーはオレにキスをして下を向いて目を伏せていた。最後にアシュリーが拙い日本語で



アリガト ダディ



リリィに教えてもらったのだろう。アシュリーを抱き上げてオレはキスをした。

リリィとアシュリーはオレの姿が見えなくなるまで手を振っていた。



空港の中で遠くに見える青い空に白い雲が見えた。オレはこの青い空の空気にすっかりやられてしまったのかも知れない。


初めてのフィリピンがオレに与えたインパクトはかなり大きなものだった。


それにあの小さなフィリピーナのアシュリーは今までのババエの誰よりもオレを夢中にさせた。



飛行機の中でも余韻が後を引いてしまった。定刻通り飛行機が到着した。ここはもう日本だ。



到着の連絡をリリィにする為、電話をした。


5回の呼出音の後、甲高い声で



ダディ!



アシュリーだ。でも何故アシュリーがリリィの電話に。



電話はリリィに替わり謎は解けた。



オレが帰って寂しいのにアシュリーまで帰ったら寂しくて眠れなくなるから母親に頼んでもう1日お願いしたらしい。



オレはリリィに言った。



リリィ、アシュリーの指名と延長ね。全部で3万円です。
小さなフィリピーナにオレは起こされた。アシュリーは充分にリラックスした顔だった。アシュリーと二人で、まだ寝ているリリィに悪戯をしていたらリリィが目を覚ましオレに噛みついた。アシュリーはそれを見て声を出して笑った。


朝食はビュッフェには行かずに三人で部屋で食べる事にした。昨日のテイクアウトが山ほど残っている。フォークとスプーンをフロントに頼み、オレはセブンイレブンに水とコーラを買いに行った。フロントでフォークとスプーンを受け取り部屋に戻った。テーブルには載りきらない料理が床に並べられていた。



アシュリーとリリィが上手に手を使い食べているのを見てオレも真似してみたがアシュリーの笑いのネタになっただけだった。何時もより朝食にしては多い量を食べたが大して減っていない。


朝食を終えアシュリーを送って行く時、リリィがアシュリーの髪の毛のサイドを三つ編みにして自分と同じヘアスタイルにセットしていた。


身支度を済ませてホテルを出た。アシュリーの母親の屋台まではオレ一人でも行けそうだ。リリィは残ったテイクアウトをアシュリーの母親に持っていくと言ってオレに持たせた。


遠くにアシュリーの母親が見えた。


近くまで来るとアシュリーは母親に駆け寄りキスをした。母親にテイクアウトの包みを渡して帰ろうとした時、アシュリーが寂しい顔でオレを見た。大きな瞳に涙を浮かべている様に見えた。リリィを見ると同じように泣きそうな顔をしていた。



帰国までの二日、オレはアシュリーを預かる決意をした。


リリィに母親にそれを伝えさせた。アシュリーの顔が笑顔になり、リリィはオレにキスをした。アシュリーがオレの手を引っ張るので何事かと腰を落としアシュリーの目線になった。アシュリーはリリィの真似をしてオレのほっぺたにキスをした。


オレはアシュリーを抱き上げてアシュリーのほっぺたにキスのお返しをした。



小さなフィリピーナにオレもリリィもKOされたみたいだ。


アシュリーを抱き上げたままオレとリリィは大通りまで歩きタクシーを拾った。



行き先は近くのSM。

アシュリーはリリィから行き先を聞くととても喜び、タクシーの中でもオレとリリィの手を握っていた。


SMは人が溢れ、沢山の家族連れがいた。他人から見るとオレ達もファミリーに見えるのだろうかと考えていた。


さしずめ即席家族と言うところだ。

オレはリリィにアシュリーに必要な物を買いに行こうと言った。


二日間アシュリーはオレのファミリーになったのだから。リリィはアシュリーの下着を買いに、オレはアシュリーを抱いて少し離れた場所でリリィの様子を眺めていた。



少しして帰って来たリリィの手には下着や服や靴までもあり、にわかナナイは親バカになってしまった様だ。


エスカレーターを上に行くとゲームセンターがあった。アシュリーは興味津々な顔をしていたので迷わず入る。ゲーム用のコインに両替してリリィに渡すと、アシュリーの手を引いてカラオケに行き歌を歌い始めた。


生意気にもアシュリーもオレの判らない歌をリリィと歌っている。


オレはカメラを取り出しアシュリーとリリィの写真を撮った。


アシュリーはリリィに促されピースをしたりポーズをきめていた。