蒼いマンゴーが堕ちたら -4ページ目

蒼いマンゴーが堕ちたら

フィリピンを舞台にした単なるフィクションストーリーです。多分フィクション・・・・

リリィの声を聞くのは久しぶりな気がした。
実際、2週間は話をしていない。



イカウ まだ怒ってる?



と、リリィが切り出した。



いや、別に怒ってないよ



正確には呆れただけだから怒ってるというのは間違いだろう。



アコ心配したよ、多分二人セパレート。



オレはリリィの言葉が呑み込めなかった。オレの中では既に終わっている話だ。今更何をどうすればそんな話になるのか。



オレは別れたつもりだけどね



その言葉を聞いたリリィは自分の正当性を語り、フィリピンスタイルとはのレクチャーを始めた。


そんな話に付き合うつもりもないオレは、正直にライカの話をした。
激昂したリリィはオレが騙されているだとかライカには他の男がいるだとかを口走った。

これ以上は話をしても無駄の様な気がしたオレは一方的に電話を切り、再度リリィの電話を着信拒否にした。


あれだけ客がいるリリィの事だからすぐにオレの代わりは見つかるだろう。案外、オレは冷めた人間なのだろう。この場合、冷めるのが早いと言うのが的確かもしれない。

アシュリーとリリィとの三人で家族ゲームをした事は良い想い出だと思うが本当の家族になれるかと言えば答えは変わって来るだろう。


オレはライカに電話をした。

ライカに全てを話した。

リリィと言う元恋人の事。初めてのフィリピンで出逢ったアシュリーの事。リリィとの別れ話。


言葉が不自由な説明にライカがどれだけ理解したかは判らないがライカに話した事でいくらかすっきり出来るならと思ったのも事実だった。


全てを伝え、オレはライカに言った。



ライカが決めればいいよ



ライカは一言



モンダイナイ ソレノコト


オレは思わず嬉しくなり一緒にフィリピンに帰ったらアシュリーに逢いに行こうと言った。


ライカは一つだけ付け加えた。



アコノファミリー アウスル ディバ



オレは快く了承した。
翌日からライカの電話攻撃が始まった。ただ、ライカの電話はリリィに比べて然して嫌なものではなかった。


リリィの場合は店への誘いがメインで、来店を拒むと常套句の『恋人だったら当たり前』とか『逢いたくないは愛無いから』が必ず入る。

ライカが仕事に馴れてないからかもしれないが、他愛もない話をするだけで店への誘いはなかった。

仕事終わりのAM3と仕事始まり前のPM6に必ず電話が入った。
電話を持っていないライカが定期的に電話を掛けてこれるのは先輩タレントの電話を借りているからだとライカから聞いた。当然ワンコールだけだがオレは何時しかその電話を心待ちにしていた。


知り合って10日が過ぎた時、何時もの様にライカからワンコールが入った。
かけ直してみるとライカは泣いていた。

事態が呑み込めずにオレはライカに理由を聞いた。どうやらライカはホームシックになった様で、フィリピンに帰りたいを繰り返していた。

タレントとして仕事に来た以上は仕方がない。慰める言葉もオレには判らない。


オレはライカに逢いに行く事を決めた。


仕事が終わってプリペイド携帯を買いに走った。3000円分をチャージしてもらい、車の助手席に無造作に投げて車を走らせる。


ライカには今日行く事は言っていない。


店の駐車場に着いたのは8時を回った頃でショータイムが始まってすぐの時間だった。


螺旋階段を昇るとショータイムの音楽が聞こえてきた。手に持ったライカへの携帯を後ろ手に持ちドアを開けた。

シンガーのタレントが歌っている前を横切り中に進むと、店長はすぐにオレに気付き空いている席に案内をした。


ライカのリクエストを頼むと店長はショータイムが終わるまで待って下さいと言った。


曲が変わりダンスナンバーが始まる。ステージに出てきた4人のダンサーの中にライカが見えた。


照明が一瞬明るくなった時、ライカと目が合った。ライカはオレの方を意識的に見ない様にしている様だった。


ショータイムが終わって5分程でライカがやってきた。オレの顔を見てはにかみながら横に座った。

持ってきた携帯を渡すとライカはオレの手に自分の手を置き、何度も礼を言った。


ホームシックの話には触れず、二時間を過ごしてオレは店を出た。ライカは見送り際にオレにキスをして



ワタシ インラブ ナッタヨ イカウ ヤサシイ ダカラ



そう言われて嫌な気はしない。オレは軽い気持ちで



じゃあ恋人するかい?



ライカは頷き、おやすみのキスだと言ってもう一度オレにキスをした。



帰りの車を走らせていると電話が鳴った。オレはライカの電話だと思いリコールをした。


しかし、電話の声はリリィだった。


ほんの少し前の愉しかったライカとの時間が一瞬で凍った。