蒼いマンゴーが堕ちたら -3ページ目

蒼いマンゴーが堕ちたら

フィリピンを舞台にした単なるフィクションストーリーです。多分フィクション・・・・

ライカのイメージチェンジも今日のオレには興味がなかった。


コーラを飲み干し、ポケットからアシュリーの手紙を取り出してライカに渡した。


ライカはそれをライターの灯りで照しながら読んでいた。


一通り読み終えるとアシュリーが書いた絵をじっと見つめていた。



何と書いてあるかが気になったオレはライカに聞いた。



ano daw?



ライカは黙っていた。


その時、アシュリーの絵にライカの大粒の涙が落ちた。

赤いペンで書かれた女の子の腕がライカの涙の粒で滲んでいる。

状況を全く理解出来ないオレはライカの言葉を待った。


ライカは手紙の内容を話してくれた。



パパへ

パパは元気ですか。私は元気です。

フィリピンにパパが来て私は楽しかったです。
買い物に行って買ってもらった服は私の大事な物です。

パパに会いたいけど田舎に帰るからもう会えません。

バスで2日かかる遠い所です。

パパありがとう。


私の事を忘れないでね。
パパの事は忘れないよ。

パパ大好き。

アシュリー



オレはライカを見つめながら涙を流していた。


ライカは涙声でオレを慰めてくれたがその声は遠くに聞こえていた。


再びアシュリーに会えると楽しみにしていた。

サプライズの手紙が別れの手紙だった。



オレはライカに今日はもう帰ると謝り店を出た。


帰り道が遠い。



家に到着してソファーに寝転び、天井を眺めていた。

そしてある事に気が付いた。


アシュリーの手紙の差出人・・・・



アシュリーの行き先を知っているかもしれない。


オレは晴れない気持ちのままフィリピンに行く事を決めた。

何がなんでもアシュリーに会う事にした。
計画どうりにチケットが取れたと旅行会社から連絡が入ったのは夕方だった。

旅行当日までは変化のない仕事を遣らなければならない億劫な部分を何とか我慢出来そうなのは学生時代の夏休み前に似ている。



仕事が終わり、家に帰ると郵便受けに見慣れないスタンプが捺された手紙が入っていた。

アルファベットでオレの名前が書かれていたが、
差出人の名前を見ても心当りのない知らない名前だった。

差出人の住所にも心当りはない。


封を切ると中には安物の紙に書かれた手紙らしきものが入っていた。



赤色のペンと青色のペンで女の子の絵が書いてある。

それを見た瞬間にオレは無意識に感嘆の声をあげた。



アシュリー!



絵の他に手紙が入ってあった。

拙い文字はアシュリーが書いたものだろう。



mahal kong papa・・・の書き出しで始まっていたその手紙は鉛筆で書かれていて、何度も書き直した跡があった。最初の2行はオレでも読める簡単な挨拶だったが、その後は理解が出来なかった。



何というタイミングだろう。


予期せぬ便りに嬉しくなったオレは誰かに話したい衝動に駆られた。



オレはライカに後で店に行くとメールを送った。


1分もしないうちにライカからミスコールがあり、かけ直すとライカが嬉しそうに電話に出た。


アシュリーから手紙が来た事と内容が理解出来ない事を言うとライカは読んであげるから手紙を持ってきてとオレに言った。


ライカは自分の事の様に手紙が来た事を喜んでくれた。


電話を切るとすぐさまシャワーを浴びて準備をした。長い道のりも今夜はやけに短く感じた。


店に入ると客は誰も居なかった。

ライカは赤いドレスで現れた。
髪の毛が明るい色に変わっていてカットもされていた。


恥ずかしそうにライカはオレの横に座った。

ライカの性格はリリィとは正反対の様に思えた。店に行くのも10日に一度程度で、ライカはそれ以上の要求はしなかった。ライカは仕事が終わると必ず電話をしてきては今日あった事を話してくれた。

オレはライカとの会話で出てくるフィリピン語を注意深く聞き取り、その都度意味を教えてもらった。





たまに他の店に行き初対面のババエにフィリピン語を使うと、決まってベテランと言われる。

オレはベテランと言われる事に軽い快感を覚えた。








相変わらずの変化のない日常に嫌気がさしていたオレは漠然と考えていたフィリピン行きを実行する事に決めた。








差し迫った2週間後の3連休に合わせて前後2日を有休にしてフィリピンに行く計画を立てた。




連休前の航空チケットの値段は結構高い値段だったがオレの思い付きを制止できるほどではなかった。




ただ、今回はエスコート役は誰もいない。ライカが帰るまで待っている気もないので実質一人で行動するしかない。





今回はお土産も少なくて済む。アシュリーのお土産を何にすれば良いのかと考えたがフィリピンの子供が喜ぶものが思い付かない。



オレは近所にある文房具屋に行き、ノートや鉛筆、その他に学校で必要そうな物をピックアップして買い揃えた。

当然、チョコレートも忘れてはいない。




アシュリーが見せたオレへの笑顔は再度フィリピン行きを決意する理由としては申し分ない。






クローゼットからトランクケースを引き出しながら気持ちは既にマカティの街に飛んでいた。






ライカには仕事でフィリピンに行くとだけ伝えると予想に反して素直に納得してくれた。リリィなら喧嘩の火種に充分な出来事だろう。






ライカとの約束事は、毎日1回は必ず電話をする事とフィリピン土産にグリーンマンゴーを買ってくる事だけだった。