蒼いマンゴーが堕ちたら -2ページ目

蒼いマンゴーが堕ちたら

フィリピンを舞台にした単なるフィクションストーリーです。多分フィクション・・・・

ひきつった愛想笑いのオレの横に来て、突然現れた助け船のフィリピーナは店員と一言二言会話をするとオレを見て笑い出した。



オニーサン ナニ ノム ダッテ



オレは間抜けにもドリンクを聞かれていたのに全身全霊でスパイスの効いたチャーハンを頼んでいたらしい。


とんだ赤っ恥だ。


一人だけの食事も侘しいので、お礼に奢らせて欲しいと申し出ると快く受けてくれた。



テーブルに就き、料理を口に運んでいる彼女に聞いてみた。



日本語が判るのはタレントだから?



彼女が言うには、2回の来日経験があり西日本の地方都市で仕事をしたそうだ。3回目の来日目前でプロモーター会社が潰れたので今はマラテの日本人相手にKTVに勤めているらしい。



店は近いの?



オオ 3ミニッツ ダケ



出勤時間だからと彼女が言うのでオレも一緒に出る事にした。


幾分闇が迫り、雰囲気が変わった通りを歩いていると彼女が



アレ アコ ノ シゴト



彼女の目線の先にはネオン菅が派手な色で光っているKTVが見えた。



このままホテルへ帰っても寝るだけだろうから彼女の店に付いて行く事にした。


店は既にオープンしている。

彼女は店の前まで来ると



バイバイ キオツケテナ



そう言うと小走りに店の中に消えて行った。


店の前には呼び込みのスタッフが笑いながらオレに声を掛けた。



クヤ ドコイク?



オレは黙って店の中を指差し



ここだけど、ダメか?



途端にスタッフは大きな声で



イラッシャイマセ~



中に入ると日本のパブとは比べ様がない位に広い。席に通されて気が付いたが入口の横の壁を隔ててウエイティングになっており、総勢40人程のフィリピーナがいた。外側からは入口横の壁が遮蔽物になり見えなかった。


チーママらしい年配のフィリピーナが来てシステムを説明する。

説明が終わると誰か指名するかと聞く。
初めて来た店だから判らないと言うとチーママはウエイティングエリアの40人に声を掛けた。


わらわらとやって来て目の前に40人からのフィリピーナが並んだ。


流石に締まりの無い顔をしているのが自分でも判る。


それぞれがアピールをしてくれているが指名は先ほどのフィリピーナと決めていた。


だが、目の前に並んだ中には彼女の姿はなかった。

チーママがメイクルームに向かい早く来なさいと声を掛けた。


薄汚れたカーテンが開き、彼女が現れた。



すかさずオレは彼女を指差した。



ワアッと40人から声が挙がった。
本人は何が起こっているかは判っていないがオレの顔を見ると小走りに走り寄ってきた。


腰に手を当てて仁王立ちで



バケッ?



顔は笑っている。


オレは立ち上がり彼女の仁王立ちを真似ながら



サービス!



彼女はオレの腕をつねった。オレだけに聞こえる様に言った。



イカウ タラガ~



迎えの車に乗り込むとスタッフは携帯電話で早口のやりとりをしている。

生温い風がエアコンから吹き出す。

バックシートに座りアシュリーの手紙の住所を確認する。


車は見覚えのあるストリートに入ってマラテに向かう。前回の宿泊ホテルは空きがなかった為にマラテのホテルに決定した。

サポートがいない為、総て一人でこなさなければならない。


ロハスを右に曲がり人通りの多い場所に入るとスタッフがホテルを指した。

ホテルの前に到着するとスタッフはホテルの中へ入って行った。

暫くするとホテルのスタッフと一緒に現れた。


ホテルのスタッフが笑顔で手招きをしている。

荷物を持ってフロントに行くとルームキーを渡された。


出迎えのスタッフは忙しそうな動きで帰って行った。

ポーターが荷物を持って案内してくれた。
ホテルの前の通りの反対側がオレの部屋だった。

静かで良いのだが薄暗い。
ポーターにチップを渡し荷物の中から煙草を取り出し火を点けた。


一息ついてシャワーを浴びた。緊張の単独外出に出掛ける為にパスポートと日本円で1万円と3000ペソをポケットに入れる。


フィリピン語の会話集を片手にホテルを後にした。


ホテル前の通りをまっすぐに進む。まだ明るい為か車も人も多い。


道行くフィリピン人がオレを見ている気がする。


『超群』


何度も見た事のある漢字を見つけホッとした。


それほど空腹ではないが早めに食事を摂る事にした。

ガードマンがショットガンを持って立っている横を通り、カウンターの前に立つ。


前回はリリィがオーダーする人でオレは食べる人だった。

今回はオレがオーダーして食べる人だ。


適当に選んでオーダーをするとカウンターの中の店員が何かを言っているが全く判らない。


瞬時に汗が吹き出してきた。


何とかゼスチャーでオーダーを試みるが全く伝わっていない。



ドシタ?


突然、後ろから声がかかる。振り返るとジーンズに赤いTシャツのノリが良さそうなフィリピーナが立っていた。
予定時間を少しオーバーして飛行機は離陸した。雨の降る中を飛行機が灰色の雲に向かって上昇する。翼に当たる雨が煙の様に見えた。


一瞬、雲の中で視界が無くなったがすぐに柔らかい陽射しが窓から入ってきた。


何かのドキュメンタリーで見た様な雲海がずっと先まで続いている。



機内食を食べ、眠りにつくと次に目が覚めたのは飛行機が下降体制に入っていた時だった。


無軌道に走る道の傍らに並ぶチープな屋根を真上から眺め、原寸大の箱庭に飛行機が降下していく。


雨が降っているせいか滑走路脇の芝生が綺麗に見える。


周囲の乗客は席を立ち、降りる準備を始めていた。機内アナウンスが完全に停止するまで席を立たないでと告げる。

CAに送り出されて湿気を含んだ緩い空気の中を進み、再びフィリピンの地を踏んだ。


今回の渡比はサポート役はいない。ライカが友達をサポート役に呼ぶと言ってくれたが断った。


雨のおかげで幾分は過しやすい気温の様だ。空港出口のゲートには出迎えの人が大勢いた。
左端にオレの名前が書かれたカードを手に、迎えが立っている。目線が合うとオレは右手を挙げ、名前の主だとアピールをした。スタッフは大して歓迎の雰囲気も見せずにオレを手招きした。