蒼いマンゴーが堕ちたら -12ページ目

蒼いマンゴーが堕ちたら

フィリピンを舞台にした単なるフィクションストーリーです。多分フィクション・・・・

猛烈な寒さで目が覚めた。遠慮のないホテルのエアコンのせいだ。リリィはブランケットを全て自分の身体に巻き付けてまだ寝ている。煙草に火を点けてTVのスイッチを押す。外は既に暑そうな陽射しが照りつけ、けたたましいクラクションが下の道路から聞こえる。



このホテルは朝食付きだったのを思い出し、リリィを起こした。眠そうな顔でオレに抱きつき・・・・噛みつく。


コーヒーが無性に飲みたい気分だった。シャワーを浴びて完全に目を覚ませたリリィは腹が空いたと言い早く食事に行こうとオレを急かす。

部屋を出てエレベーターで2階にあるビュッフェに向かう。オレ以外に日本人はいない。朝食にしてはかなりヘビィな物が大きなテーブルに並んでいる。リリィは大きなテーブルから二皿のヘビィな朝食をチョイスして運んできた。
オレは本来の目的であるコーヒーを探した。テーブルの上に其らしき物を発見したのでコーヒーカップを受け、レバーをスライドした。ところが出て来た物はコーヒーではなく白湯だった。ふと下を見るとコーヒーメーカーの名が入ったパックが見えた。



インスタント・・・・



瞬時に食欲が失せた。席に戻りホテル自慢のインスタントコーヒーを飲みながらロンガニーサを食べる。皿の上でティラピアが恨めしそうにオレを見ている。



リリィの食べろ食べろ口撃に閉口しながら食事を済ませた頃には時間は10時を過ぎていた。


昼過ぎにリリィのプロモーターがこのホテルに迎えに来るらしい。オレも一緒に出掛けるのだと言う。本人に聞いても笑っているだけで肝心な所は言わない。そんな事よりも普通のコーヒーが飲めるなら何処でもついていく。そんな気分だった。
TVの画面に日本のアニメが映っている。吹替られた言葉は解らないが昔に見た事のあるアニメだから内容は容易に理解出来た。


シャワーを済ませたリリィは濡れた髪をタオルで拭きながら携帯のメールを打っている。

朝からの疲れから眠気に誘われベッドに潜り込む。リリィが下着姿のまま隣に入ってきた。


眠いか?


そう言うと足を絡ませてくる。そんな気になれないのだが・・・・
一部を除いては。


オレの意識に反する部分にリリィが手を添えて


やるか?


思わず吹き出してしまった。確かに教えたのはオレだがこの場面で何とも色気のない話だ。


黙ってTシャツを脱ぐとリリィも下着を脱ぎ始めた。考えれば久しぶりの事で、リリィが帰る前にした後から数えて約一ヶ月振りの話だ。


リリィはスレンダーな身体をオレの上に預け、やたらにキスを首筋にして


パルパロしてないか?


そう言うと首筋に噛み付いた。リリィの行為で唯一嫌な行為がこれだ。何度言っても直らない。本人は愛の強さだと開き直り、止める気はないようだ。


今日の主導権はリリィにあった。リリィは上になったままオレを導き、フィリピーナの我が儘同様に好き勝手にグラインドして果ててしまった。リリィは腕枕を強要して満足そうにオレの耳たぶを噛んでいる。


ライトを落として寝ようとすると、リリィの手がオレの股間に伸びて来て



バケッ?(何で)




そしてオレの顔を上から覗き込んで



やるか?



オレは思わず



またか?



半ばやけくそで2ラウンド目を闘う羽目になった。


友達のホセが訪ねて来たのは約束の時間丁度くらいだった。


彼はリリィの店の元スタッフで今はフィリピンのディスコでDJをやっている。




彼が日本にいた頃、店の営業が終わるとリリィとホセの三人でよく食事に行った。店の近くにあるラーメン屋が定番で、リリィは餃子がホセはチャーシューメンがお気に入りだった。




ホセの後ろに子供が二人引っ付いて立っていた。子供達に何が食べたいと聞くと恥ずかしがり何も言わない。ジョリビーは?と聞くとコクリと頷いた。オレもジョリビーに興味があった。毎度毎度リリィから聞かされていたジョリビーがどれ程のものか試してみたかった。ホセが電話でジョリビーに注文をした。デリバリーが可能らしい。メニューが判らないからリリィとホセに全部を任せた。


懐かしい話で盛り上がっていると部屋がノックされた。

注文したジョリビーは袋が3つあった。

とても食べきれる量ではなかった。どうもスタッフの聞き間違いの様だった。

残った分はホセに持って帰らせよう。



オレはスパゲッティとハンバーガーを取り、子供達はフライドチキンのセットを取った。


初めてのジョリビーにリリィがどうだと言う顔をしていたが正直言って甘いスパゲッティは好みじゃない。ついでに言うならハンバーガーのマヨネーズすら甘い。


食べ慣れている日本のハンバーガーの方が遥かに旨いと思ったが、リリィの顔を見るとそれも言えず『日本人だなオレって』と思ってしまった。



アサワが待っているから帰るとホセが言う。
ジョリビーをお土産に持たせ、タクシー代を渡そうとすると要らないと言う。変なところが律儀な男だ。見かねたリリィが子供達に無理矢理持たせていた。


ホセが帰った後、リリィが自分の家族に電話をしている間、オレはホテルの窓から見える景色をカメラに収めていた。クラクションが絶え間なく聞こえ、日本で見る照明とは別物の光に少なからず心引かれてしまった。何となく消えかけた線香花火の光にも見えた。




さっきのテイクアウトあるけど食べる?



リリィの声に呆れた顔で横に首を振った。