先月 住職は雲龍院勉強会の先生、皆さまと共に インドにあるチベット学僧院に行っておりました。朝のお勤めに参加したり お薬師様の灌頂を授けて貰ったりと とても充実した研修をして来たようです。
インド行きは ここの所、毎年の恒例行事となっており「留守にして すみませんねぇ…」と恐縮の住職ですが、「その分 お寺の為に存分な働きを期待致しております!」と…。
取り急ぎ 還元を形にしようと 毎回 知恵を絞り、ご同行の方々のアドバイスを拝借しながら お寺で使う品を購入してきます。
今回は大黒様の前机に掛ける打敷を。ざくろの模様が織り込まれた金襴で 京都のお寺にもしっくりと馴染む風合い、それでいて薄暗い台所がパッと明るく華やかになりました。
そして もう一つ、ジャータカ物語をモチーフにした絵画を一枚。メルヘンチックながらも深い教えが秘められているのだそうです。
ジャータカ物語 〜シャコ(小さな鳥)の智慧
むかし ヒマヤラの山中にニグローダの大木があったそうな。
その木の下には小さな鳥と猿と象が住んでおった。
初めは仲が良かったのだが、そのうち猿と象が不平不満を持つようになり、ある日とうとう言い争いが始まった。
その内容は、やれどっちが働きものか、どっちが身が軽いか、どっちが力があるか… そして 智慧のある年長者、つまり長老を決めようということになった。だが 一緒に暮らしていても お互いの年令は知らなかった。
象が言った。「だいたいな、俺が小さい時 あのニグローダの大木は へその位置にあったよ。お前なんて、あの大木の小さなころなんて知らないだろ。だから、俺のほうが年長さ。」
猿が言った。「何言ってるんだ。俺なんて子ザルの時、木のてっぺんの芽を食べていたんだ。そんな小さなニグローダの木を見たことないだろ」
小さな鳥は この二匹の不毛な言い争いを木の枝から眺めていたが、怒りの矛先が向けられた時 穏やかに話し始めた。
「私がヒナだった頃、ここには大きなニグローダが立っていた」
「でね、私が飛び発てるようになった頃、その木は枯れてしまった。私は落ちていたニグローダの実を食べて糞をしたら、その糞に種が混じっていたんだろうね。いつの間にか芽が出て こんなにも大きな木になったんだよ。このニグローダは2代目なんだ」
その話を聞いた象と猿は、驚いて顔を合わせた。
自分たちの愚かさに気がついた動物たちは、その後は 言い争うことなく小さな鳥に従ったとさ。
ジャータカ物語は、お釈迦様が輪廻転生をされていたとき、つまり前世で 生きとし生けるものを教え導いたエピソードを集めたものです。
象と猿と兎の上にお釈迦様の前世とされた 小さな鳥が敬われて乗った絵…。 住職が一目惚れして即決で購入したらしいのですが 一同、「この大きな物をどうやって日本に持ち帰るつもりかしら?」と心配して下さっていたとか…。恭しく頭に乗せて来たのかどうか? 知りませんが、現在 [大輪の間] に飾ってありますのでどうぞご覧くださいませ。
子龍は たぶん、一番の年少者…。