下総國・一之宮
『香取神宮の歩き方』
Vol.2 《旧参道を行く》
今回は、 『式年神幸祭 御駐輦所』 や 『大坂井』 などのレア物件をはじめとした、旧参道を歩きます。起点は、利根川の河川敷に建てられた 『津宮鳥居』 です。
【ルート】
今回は、昔の参拝者が味わった気分の欠片を追体験したく、旧参道を選びました。
START=①JR成田線・香取駅~160m~②龍田神社~750m~旧参道・起点=③津宮鳥居~300m~④沖宮神社~20m~⑤忍男神社~160m~⑥膽男神社~350m~⑦董橋~150m~⑧『式年神幸祭』御駐輦所~1.5km~⑨又見神社 & ⑩三島神社~600m~⑪道祖神~100m~⑫大坂井~300m程度~⑬鹿苑&桜馬場~100m程度~⑭北参道=GOAL
◆津宮鳥居
河川敷から土手方向を撮影。この日は、日が差したり陰ったりの1日で、このときは不穏な感じの雲でした。
【旧参道を歩く】
香取駅を降り、「津宮鳥居」に向かう途中に境外末社があります。
◆末社:龍田神社
通称「風神(かざがみ)様」。天候の神、お百姓の神、と尊ばれた風の神々。風神三社=うかのみ玉命、しなつ彦命、しなつ媛命を祀っています。 by「津宮まちつくり協議会 案内板」を要約
◆津宮鳥居
龍田神社から700mほど西北に行くと、津宮鳥居です。古くは、この津宮河岸(つのみやがし)付近に船宿が並んでいました。
◆土手を下る
さあ!津宮鳥居を出発して、香取神宮に向かいます!
土手を下り、真っ直ぐな道を300mほど進むと、沖宮神社です。
◆末社:沖宮神社
御祭神:綿津見命
小さな石祠です。かつて、津宮鳥居の向こう側は、香取海と呼ばれた海でした。よって、この地に海の神が祀られていても違和感ありません。
沖宮神社の道路を隔てた向こう側に、忍男神社が鎮座します。
◆摂社:忍男神社
おしお神社
御祭神:伊邪那岐命
「忍」という文字は、「持ちこたえる」という意味がありました。(角川新字源)。浜手守護にふさわしい意味だと思います。
忍男神社から西へ150mほど行くと、似たような造りの神社があります。膽男神社です。
◆摂社:膽男神社
まもりお神社
御祭神:大名持命
「膽」を調べたところ、「胆」という字の旧体でした。意味は、内臓の「きも」のほか、気力、勇気、心、などの精神的な意味もありました。ただ、「まもり」という読み方はありませんでした。
となると、「まもり」=守や護とせず、膽を充てた理由が気になります。膽には、「気力・心」などの人間の内面に関わる意味があることから、外面的な守護のみならず、内面的守護もまた・・・。という願いをこめたのかもしれません。
浜手守護
忍男神社と膽男神社は、東宮・西宮とも呼ばれ、浜手の守護神です。社号の意味は「持ちこたえる」と「心を守る」。ともに北面して、利根川(=香取海)方面を睨みます。
邪気侵入に対する第1防御線が津宮鳥居なら、この両社は第2防御線かもしれません。両社とも規模は小さいのですが、社格は摂社です。
◆董橋(ただす橋)
橋の傍らに衛兵見張所があって、通行者を糺(ただ)した、検分したことから、この名がついたとのこと。別称=草履抜(じょん抜き)橋。参拝者は、この川で身を清め、衣と草履を履き替えて香取神宮に向かいました。by「津宮まちつくり協議会 案内板」を要約
◆田園
董橋から先、道中左手は、このような風景が続き、気持ち良く歩けます。
◆『式年神幸祭』御駐輦所
ごちゅうれんじょ
式年神幸祭において、香取神宮を出発した行列は津宮河岸に向かいます。神道山の麓にある御駐輦所に寄って御駐輦祭を斎行します。河岸で神輿を御座船に移し、利根川を佐原方面へ遡上。鹿島神宮の船と待ち合わせます。
◆又見神社へ
こちらを右に入って、道なりに400m行けば「又見神社」です。4連の切り株が目印です。
【摂社 又見神社】
◆参道石段
御祭神:天苗加命(あめのなえます命)、武沼井命(たけぬい命)、天押雲命(あめのおしくも命)
順に、フツヌシ、タケミカヅチ、アマコヤネ、三神の息子神。
◆手水舎
残念ながら浄水は、ありません。一方、落葉・枯れ枝などは掃き集めて焚火していました。
◆「又見古墳」から俯瞰
社伝では、祭神=経津主命の御子=朝彦命。1845年に書かれた『下総国旧事考』では、朝彦命の別名として苗加(ナヘマス)命とも云う、と書かれています。 by菱沼 勇『房総の古社』(有峰書店)
◆本殿
祭神の1柱である朝彦or苗加は、いずれも物部小事の別名であると思われます。また、朝彦とは、大麻比古神社の麻比古命とも空想できます。だとすれば、忌部氏も絡んできます。
*社殿右サイドに石室がありました。古墳に造営された社殿なので、不思議はありません。
◆香取神宮末社:三島神社
御祭神は、香取連三島命
又見神社の境内社のような格好で鎮座しています。
※又見神社の詳細を解説した、筆者記事リンク
先に、右折した切株の地点まで引き返します。そこから253号線は使わず、山道に入ります。
◆大坂井への道
比較的緩やかな登り道です。道幅は1メートルあるかないかの狭さですが、障害物などもなく、歩きやすい山道でした。
◆道祖神
この山道を登って下ると、道幅が狭い車道に突き当たります。その正面には、道祖神。
◆大坂井
道祖神を左に下ると「大坂井」。水は透明です。その昔は、こちらで禊して神宮に向かったのかもしれません。亀甲山には、こうした湧き水の井が10か所前後点在するそうです。
◆案内板
「大坂井」付近には、香取神宮の裏手にある「桜馬場」への案内板があります。ここから、急な上りの山道に入ります。
◆往古の参道
道幅1mにも満たないような、「山に入れる”参道”がいくつかある。」と、地元農家の方から教えてもらいました。先ほどとは違って、やや厳しい道のりでした。
◆ほとんど「けもの道」
香取神宮の神域は、3万5000㎡です。「香取の森」と呼ばれる12万3000㎡に及ぶ広大な山林の中に造営されています。それを証明するかのような参道は、ほとんど「けもの道」です。
◆桜馬場を遠望
あたりが開けてきて、明るくなります。右手にこの巨木が見えたら、「桜馬場」は、間近です。
◆鹿苑
今回は、食事タイムに出くわしたので、鹿が寄ってきました。
◆桜馬場
かつては、流鏑馬式が行われた場所ですが、今は、桜と紅葉が美しく、参拝者の憩いの場となっています。
◆北参道への分岐点
朱色玉垣沿いを右に折れれば、北参道。直進は、境内を迂回できる、森の小径です。
◆右折=北参道
この参道は、本殿の裏手に出ます。参道の社叢は、良い雰囲気を醸し出しています。
◆直進=迂回路
この道に入ると、左に「六所神社」が見えてきます。道なりに進めば、社務所や神楽殿の裏を抜けて、総門に出ることができます。
◇境内図
上記の迂回路は、図の右隅に点線で示された道です。手書きの朱線は、玉垣です。
◆六社神社・花薗神社
前者の祭神は、須佐男命、大國主命、岐神、綿津見命、雷神二座、以上、6坐。
また、『香取神宮小史』に「六所神社に合併せり」と書かれた「花薗神社」の祭神は龗神です。
*香取神宮小史・・・昭和8年社務所発行 by国会図書館デジタルコレクションを閲覧。
【御朱印】
12月 1日が日曜日に当たっていたので、「奥宮」の御朱印も拝受できました。
【参拝ルート】2019年12月 1日
香取神宮《旧参道を歩く》
ルートは冒頭に挙げましたが、再掲します。
START=①JR成田線「香取駅」~160m~②龍田神社~750m~③旧参道起点:津宮鳥居~300m~④沖宮神社~20m~⑤忍男神社~160m~⑥膽男神社~350m~⑦董橋~150m~⑧式年神幸祭 御駐輦所~1.5km~⑨又見神社&⑩三島神社~600m~⑪道祖神~100m~⑫大坂井~300m程度~⑬鹿苑&桜馬場~100m程度~⑭香取神宮・北参道~⑮香取神宮~香取神宮バス停→「佐原駅行き」バス→JR成田線「佐原駅」=GOAL
【ひとこと】
◆旧参道を歩く
津宮鳥居から旧参道を行く場合、253号線を進みます。董橋~香取交差点を経て、途中で支線に入り、第1駐車場&土産物店が並ぶ表参道に出る。これが一般的なルートです。しかし、筆者は少し回り道して又見神社を参拝。その後は、253号線を使わず、山に入りました。又見神社~道祖神~大坂井~桜馬場~北参道出入口、という道順を辿りました。
◆駅からのルート
→電車の場合、佐原駅と香取駅から行くことができます。
①佐原駅から表参道・朱鳥居
距離=3.7km
~佐原駅からバスが出ていますが、土日しか使えません。佐原観光協会のレンタ・サイクルが良いと思います。(利用可能時間=09:00~16:30)
*自転車を使えば、八坂神社や諏訪神社にも行けますし、”歴史的町並み”も回れます。
②香取駅から表参道・朱鳥居
距離=2.1km
香取駅前にレンタ・サイクル店はありません。キホン、徒歩となります。
③香取駅から北参道
(今回筆者が歩いた道)
距離=1.7km
徒歩。又見神社に寄り道しなければ、当宮には最短距離で到着できます。
【注意】
ルート③は、いきなり本殿裏手に出ます。初参拝の方にはオススメできません。
◆《香取神宮の歩き方》
第3回まであります。
よろしければ、こちらもご覧いただければ嬉しいです。(了)