香取神宮の 『御神井道』 を歩きました。

今回は、狐坐山神社と御手洗池をご紹介します。

 

下総國・一之宮

 『香取神宮の歩き方』 

 

Vol.1 御神井道を行く》

①香取神宮にもあった『御手洗池』

②静寂な美しさ=『狐坐山神社』

※①は境内図に載っておりません。

 

 

【総門】

 赤鳥居をくぐり、蛇のようにうねる砂利の坂道を登っていくと、《三之鳥居&総門》に出ます。

 

 

 ※当宮は、亀甲山(かめがせ山)という、文字通りの形状をした丘に鎮座しています。

 

『御神井道』は、荒々しい山林。

整然とした境内と対照的な趣(おもむき)を感じます。

 

 

◆境内案内図

下図は、 神宮『案内図』を2つ折りした右半分(=東側)です。

 

※一般的な参拝は、上半分の神域(=楼門の先)です。本記事は、図の下半分を歩きます。

※奥宮や要石などは、2つ折りの左半分(=西側)にあたる神域に点在します。

 

 

◆神門越しの手水舎

 総門をくぐった正面に手水舎。左に進むと、要石や奥宮。右に進むと楼門です。

 

 

手水を使ったら右へ。楼門の前を横切ると、右手に諏訪社が見えてきます。その隣に『御神井道』と刻まれた石標が建っています。

 

 

◆石標『御神井道』

 古色蒼然とした石標。御手洗井&狐坐山神社への参道起点を示します。

石標の隣に石段があるので、下ります。その先は、下りの坂道や石段が続きます。

 

 

◆十字路

 ここを直進すると御神井や狐坐山神社。左手は弓道場。右手は、璽社と大山祇神社です。

 

 

◆璽社と大山祇神社に立ち寄る

 十字路を右に入って、寄り道です。右手に璽社が見えます。斜面を登っていくのですが、台風で折れた枝などが散乱していました。

 

 

◆璽社(おして社)

御祭神:古い印鑑

 「璽」という文字は、『即位礼正殿の儀』における国璽や御璽を連想させます。

「おして」は「押手」とも書き、その意味は①印判、②判を押すこと。

 

 

◆大山祇神社

御祭神:大山祇命

 璽社への登り道を降り、隣に設置された参道(=登り斜面)をよじ登ります。

 

 

さて、「御神井道」に戻ります。

今回の核心的神域です。

 

 

◆再び「御神井道」

 ここから急な下り。道は険しくなります。

 足場として並べられた角石はあちこちで傾いたり、ひっくり返ったりしていました。足元はきわめて悪いです。

台風被害が癒えていない参道をひたすら下っていきます。

 

 

◆分岐点

 枝がうねった倒木の場所が分岐点です。倒木を潜ったり、跨いだりしつつ直進すると狐坐山神社。左折し、降りていくと「御神井」です。

 

まずは、分岐点を左折。山麓へと下って行きます。

降りきった突き当りを右に進むと、御手洗井が見えてきます。

 

 

 ①御手洗井 (みたらしのい)

 亀甲山麓には、「十井(とおのい)」 と称せられる神井が10か所あります。今でも、その大部分から水が湧き出ています。by菱沼 勇『房総の古社』 →昭和49年(1974年)の記述です。

表参道の神池は、曲線的な庭園池です。一方、こちらは、「十井」を代表する御手洗池。鹿島神宮の御手洗池と同じく、長方形です。

湧き出た清水は、付近の田んぼに流しています。この場所、雰囲気は悪くありません。しかし、ご神気はとくに感じませんでした。鳥居を建てると、気が変わるかもしれません。

 

さて、「狐坐山神社」に向かうべく、倒木が目印の分岐点へと引き返します。

 

 

 

 ②狐坐山神社

御祭神:命婦神(みょうぶの神)

 分岐点の先もまた倒木でした。こちらは、鳥居を直撃し、笠木を破壊していました。

社名の読みは、「きつねにます~」でなく、「こざやま神社」です。

 

 

◆命婦神とは

 『祐徳稲荷神社』に「命婦社」なる境内社があります。こちらでは、命婦神=《稲荷大神の神令使である白狐の霊》を祭神として祀っています。(by 祐徳稲荷神社HP)

つまり、眷属としての狐でなく、神そのものである狐。ということでしょうか。

鳥居をくぐったら、角石を並べた「上り」の道です。この辺りは、竹の倒木だらけ。悲惨な状態ですが、取り巻く空気は良好です!

頂上には、二之鳥居と社殿。静寂が支配し、清澄で清浄な空気が心身を癒してくれます。

 

 

【続・命婦について】

 かつて、京都伏見の稲荷山で祀られた稲荷は2種類。まず、秦氏の氏神である伊奈利。もう1つは、幕末の国学者・荷田春満の氏神である稲荷。山頂・奥社への参道も2本でした。

 両者には祭神像もありました。秦氏:稲を荷なう翁像。荷田氏:命婦像(巫女のようなもの)。このため、命婦には巫女神説もあるようです。 by 柏書房『日本の神様読み解き事典』から抄録。

 

 

◆帰路

 こちらを書いていて、思い出したこと。上総國・一之宮『玉前神社』の例大祭で、白馬に騎乗して、行進する幼児(女の子)が「命婦」でした。さて、香取神宮の境内に戻ります。

 

『御神井道』石標脇の石段の地点に戻ってきました。石段手前を左折して、切通の道を総門方面に向かいます。

 

 

◆切通道の出入口付近

 ここを抜けると、右手に総門石段。左手に勅使門です。

※こちらの写真は12月参拝時のものを追加しました。

 

 

◆勅使門

 勅使門は、「神徳館表門」とも呼ばれていて、茅葺屋根の重厚な門です。元は、大宮司家私邸・表玄関の門でした。現在は「神徳館(=参集殿)」の正門です。

 

 

◇姥山神社と佐山神社へ

 勅使門に向かって右手の坂道を下りると、Y字路に出ます。右に進めば姥山神社、左が佐山神社です。まずは、姥山神社へ。

 

 

◆姥山神社

御祭神:一言主神

 一言主神は、記紀に登場する神です。賀茂氏が奉斎していましたが、賀茂氏の没落とともに、同神の地位も低下していきました。

石段を上ってきて、この景色!あまりの美しさに思わずシャッターを切りました。

 

 

 

◆佐山神社へ

 先のY字路まで引き返し、左手の道に入ります。少し進み、民家の先を左折します。

 

 

◆佐山神社

御祭神:田心姫神(たごり姫神)

 田心姫神は、宗像三女神のうちのひと柱です。

斜面に角石を並べて、足場を確保しています。

こちらも、しんとした空気が心地よかったです。

 

 

以上、『御神井道』と周辺神社の紹介でした。

 

 

 

【御朱印】

◆右:「奥宮」授与所の掲示物

 筆者は、少しの時間でしたが、神職とお話ができました。奥宮御朱印について聞かせてもらいました。

 

 奥宮御朱印は、奥宮を参拝された方だけに出したい。そのため、「奥宮御朱印所」を設けたこと。よって、本社拝殿隣の授与所では、奥宮御朱印を取り扱わない。奥宮御朱印所に神職2名を毎日貼りつけるのは、人的な余裕が厳しいため、土日限定にせざるをえない。などをお伺いできました。もっともなお話です。異議ありません。

 

【追記】2020年に「奥宮授与所」が設けられ、御朱印はいつでももらえるようになりました。

 

 

 

【参拝ルート】

2019年10月17日

START=JR成田線「佐原駅」~徒歩70m~①自転車調達「佐原観光協会」~自転車1.2km~②『佐原八坂神社』~自転車2.2km ③『香取神宮』 ~自転車3.5km~④『佐原諏訪神社』~自転車350m~⑤「佐原観光協会」自転車返却~徒歩~⑧JR成田線「佐原駅」=GOAL

 

 

 

【ひとこと】

◆神徳館

 古い神徳館を取り壊し、新築工事中でした。エントランスは、まるでホテルのようです。

神徳館の正面から振り返ると、勅使門を内側から見ることができます。大扉の両袖に、小さな扉がついています。新・旧、どちらも美しい建物です。

 

 

◆駐車場

 商店が並ぶ参道入口に第1駐車場。旧参道を上った先の第2駐車場。そして、「姥山神社」近くに第3駐車場があります。主に使われるのは、第1と第2でしょうか。

 

 中には、旧参道から上がってきて、「第2」に入庫せず、右折するクルマがあります。そして、あろうことか、三之鳥居と総門石段の間を走り抜け(=「正中」をクルマで横切り)、勅使門の前に駐車。悲しいかな、こうした輩が散見されます。 (了)

 

◆香取神宮の歩き方

第1回から第3回まであります。よろしければ、ご覧ください。

 

Vol.2 旧参道を歩く

 

Vol.3 要石道を歩く