10年後の日本サッカーが見える、現在の風潮 | 坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

2008年からバルセロナでサッカー指導者。プレサッカーチーム代表: サッカー指導者の育成アカデミーを運営。
オンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」運営


冬休みでオフに突入した日本のサッカーシーズン。

例年にも増し、日本からスペインにやって来る日本人指導者は増えてきている。

そんな中、昨日シーズン真っ只中のヨーロッパで活動する日本人の若い指導者たちがバルセロナに訪れてきてくれて食事しながらサッカー談義をした。

彼らは20代前半。

自分は36歳。

かなりのジェネレーションギャップを一人で感じながらも楽しいサッカーの話は展開されていった。

その中でも面白かったのは、今の日本サッカーの流行りは10年前のスペインと似ているんじゃないか、という話である。

10年前と言えば、2008年にバルセロナに渡ってきた僕は、その年に就任したジョセップ・グァルディオラのFCバルセロナとスペイン代表の最高の時代の幕開けの真っ只中を、世界最高のサッカー環境の中で過ごしていた。

世間の注目はペップバルサとラ・ロハ。

ペップは就任初年度からリーグ優勝、国王杯優勝、CL優勝と3冠。

その2年後にもCLを取るなど結果もついてきながらも、サッカーの歴史に新たな内容を記述出来るようなイノベーションを起こすサッカーを披露して世界中の注目を浴びた。

それと同時進行で、ペップバルサのメンバーを中心にしたラ・ロハ(スペイン代表)も隆盛を極め、2008年と2012年のユーロ優勝、2010年にワールドカップ優勝を果たし、スペインサッカーは世界から尊敬の眼差しを受ける対象となった。

それとセットでどこもかしこも「プレーモデル」という言葉が巷では流行っていた。

本屋でもこんな本が出て

「バルサのプレイモデルは…」

「Rマドリーのプレイモデルは…」

と、そのチームの戦い方をプレイモデルと呼ぶのが当たり前になった時代だ。

僕も当時はこの言葉を日本に向けて発信していたけど、想像するに真意は伝わらずに、時代が変わった今になってやっとプレーモデルの概念は「ゲームモデル」という言葉にすり替わって日本で浸透してき始めていると認識している。

この差、約10年

さらに遡ろう。

「戦術ピリオダイゼーション」

記憶を辿ると、日本へ発信した第一人者は村松尚登さんで、僕もまだ日本にいた頃だから2006か2007年位。

たぶんこの時も真意は伝わり切らずに一部のアーリーアダプターが食いついていたころ。

僕も『モウリーニョ どうしてそんなに勝てるのか?』という本を読んで、戦術ピリオダイゼーションは一部触れられていたけど、ほとんど意味は分かっていなかった(笑)

今では多少は「戦ピリ」はコモディティ化したのだろうか?

どちらにしろ、ヨーロッパ発祥で日々研究されているサッカーという競技の最新の情報は10年近くのタイムラグを持って日本に浸透するという事実。

という視点から見て、今、僕の現場で起こっていること、見ている事は未来の日本で起こるだろうので先に予言(?)しておきたいと思うことが一つある。

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プレーモデルが招く負の遺産
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この10年、スペインでは「プレイモデル」という概念が浸透し小学生年代でも美しい戦術を完成度高く披露するチームも現れた。

監督が準備した戦術を見事に遂行し、予め立てられたゲームプランをこなすことができる選手の数は増えてきた印象だ。

その様なサッカー指導を10年受けてきた世代の選手が今、僕のチームの中心である。

実は、そんな流行りの「プレイモデル」のもとで育ってきた選手たちは僕の目からすると、引き出しが少ない選手が多く見える。

決められたことは状況に合わせてできるけど、そうでない時の対応力がイマイチなのである。

これは、

特殊性という「チームAでは機能するけどチームBでは機能しない要素」がたっぷりと含まれた『プレイモデル』の元でプレイし

一般性という「チームAで機能しチームBでも機能する要素」である原理原則を十分に学んできていない

から起こる現象なのである。

原理原則を利用して、状況に合わせて柔軟にプレイを適応させることができない。

結果、18歳の選手で適切な距離感でサポートのポジショニングを取り続けられなかったり、システムが変わると対応ができない、細かいことを言えば体の向きがおかしかったりという選手が育ってしまう。

それをもう一度修正するのは時間がかかるし、大人になれば直すのも難しい(習慣を塗り替えるには膨大な時間が必要)。

修正というよりも、今のスペインのユース1部の戦いでは試合中にゲームプランが頻繁に変わる多様性のある展開なので、一つの予め決められたプレイをこなすだけの選手では通用しないのだ。

結局、この問題は「プレイモデル」の誇大評価である。

この10年で「プレイモデル」が作った負の遺産は今、スペインの現場に出てき始めていると私は感じている。

おそらく、日本にもタイムラグを経て「ゲームモデル」の負の遺産は現れるに違いないと思う。

将来活躍できる選手を育てるなら小学生年代でしっかりと「一般戦術」を教えてあげてください。

それが、日本を世界レベルに引き上げるための、僕からの提案です。

サッカーの本質を忘れずに。

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