欧州と日本のライセンス事情で思うこと | 坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

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2008年からバルセロナでサッカー指導者。プレサッカーチーム代表: サッカー指導者の育成アカデミーを運営。
オンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」運営

こんにちは。

 

今日は気になった記事を見つけて、自分なりの考えが湧き出て来たのでここで綴りたいと思います。

 

気になった記事はこちら

日本のS級は欧州では無価値なのか。
藤田俊哉が考えるライセンス問題。

http://number.bunshun.jp/articles/-/828775

 

オランダへ渡って指導者として活動されている藤田俊哉さんが指導者ライセンスについて綴られています。

 

私も土地は異なりますがイチヨーロッパのサッカー大国であるスペインに在住し指導者として、また日本人向けにスペインの指導者ライセンス取得や指導者育成の事業に関わる仕事をしている身としてここで意見を綴ろうと思います。

 

余談ですが、ちょうど昨日手元に指導者ライセンス証が届きました。

 

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◆カリキュラムは同等なのか?

オランダのカリキュラムがどうなっているかどうかはわかりませんが、自分が実際に取得した日本のB級とそれと同等のスペインのライセンスレベル1を比較すると、スペインの方が日本よりも量と質ともにカリキュラムに大きな差があると感じました。5年くらいは日本の方が遅れていると感じます。

 

例えばB級レベルでは授業数はスペインは350時間日本は多く見積もって80時間です。

質に関しては、スペインの方が戦術レベルも非常に進んでいて日本は大きな遅れを取っていると私は感じました。

 

なぜなら、世界最高峰のコンペティションレベルをリアルタイムで分析し、ハイスピードで現場に落とし込まれているヨーロッパの進化のスピードは日本のそれとはレベルが異なるからです。

 

私が日本で受講した時に感じたタイムラグは、おそらくこれが一つの原因なのではないかと思います。

 

私の考えでは、日本のライセンスとヨーロッパのライセンスの質は同等か?と問われたらそうではないと答えます。

 

なぜなら、各国のサッカーの見方や背景が異なるので理論も異なり全く同じものが展開されている訳ではないですし国によってサッカーレベルも異なります。

 

私が日本のライセンスの講座を受講した時には、しきりに「JAPAN'S WAY」というフレーズが出て来たことを覚えていますし、日本人が考察して作られたライセンスなのでそういう色は出てきます。

 

まあ、過度に日本式プレーモデルを強いられている感じはありますが。。。

 

スペインはどちらかというとベーシックなことを学びプレーモデルは各自の指導の現場の状況に寄るから後は自分で作成してね、という感じです。

 

ですから様々な理由で同じということはありません。


 

 

◆無価値かどうかは切り替えをジャッジする国のサッカー協会次第

実はあまり知られていませんが、日本のS級がヨーロッパで使えないの同じで「日本人が」スペインサッカー協会の最高位(日本のS級に当たる)のライセンスを取得して日本でS級に切り替えようとしても無価値と見なされます。これに当たっては2つの疑問点が私にはあります。

 

 

①量、質ともに日本よりもハイレベルな内容を受講してテストにも合格しているのに、なぜ日本側はそれを書き換えさせてくれないのか(それを証明できていないことが問題?)

 

②スペインサッカー協会ライセンスレベル3(ルール上はUEFA PRO)を所有する外国人(例えばスペイン人)はJリーグの監督がすんなりできるように切り替えが認められるのに、海外に出て行って同じものを取得した日本人には切り替えを認めないのはなぜか?

 

 

②に関しては、外国人は優遇して日本人には冷たい対応に感じてしまいます。実際にS級に順ずるスペインサッカー協会のレベル3を取得した日本人の知人は日本のB級から取りに行っています。サッカー協会に問い合わせてもS級には切り替えられないとの返答だったようです。

 

せっかく外に出て良質なものを持って帰ってきた人には、筋の通ったそれなりのジャッジを下し対応をして欲しいところですし、それを証明する成績表はきちんと提出することはできます。

 

もう少し門戸を開き成績表を提示しレベルをクリアしていればS級に切り替えさせてもらって、後は現場で勝負させてもらえるという流れを期待します。

 

 

 

◆フィードバック=書き換えのための材料を受けない日本

もう一つ、不思議な点があります。

 

それは日本のライセンス制度は、科目がそこまで整理されておらず、さらにどのような成績でテストに合格したかがフィードバックされないことです。

 

書き換えに当たって受理する国の側からすると、「このライセンスで何を学んで来たの?うちのカリキュラムにちゃんと相当しているのか?」と思うのは当然です。

 

少ない時間数でライセンスが発給される国だってあるかもしれませんし、そのレベルも気になるでしょうからね。

 

ちなみにスペインではちゃんと各教科を何点取ったかという成績が生徒にフィードバックされますが、日本のB級では指導実践が何点で筆記は何点かというフィードバックは受けませんでした。

 

これでは、受講生からすると「自分はどんな実力で、何を伸ばしていき、何を改善しなければならないのか?」ということはわかりませんから、この仕組みも変えて行きたいところです。

 

それに日本側で成績表をしっかりと作らないからヨーロッパ側も「この人は日本で何を学んで来たのか」がわからなくて書き換えを認めてもらえないのかもしれません。

 

スペインで思うのは、指導理論は学術として非常に整理されているということ。

 

その辺の価値観が日本とは異なるのかな、なんて考えたりもします。

 

 

 

◆ライセンスは運転免許のようなもの

 

「FIFAの傘下にある6大陸、211の国・地域で取得したライセンスは、全てにおいて共通の価値があるのではないか? 指導者はそこから本人が考える方向へ進み、出した結果によって評価されればいい。多くの指導者もそのように感じているのではないかと思う。」

 
私も一部そう思います。

 

ライセンスは取ったからすごいのではなく、資格です。

 

認められただけで大事なのはそれを使って何をするかであるはずです。

 

日本は受講するための門戸が狭く、異常に価値が付きすぎているのです。

 

老若男女構わず誰もが取得する権利を持ち、しっかりと勉強した者が取得し、その後の指導者としての評価は指導の実績で受けてキャリアが広がって行くべきなのです。

 

そうしなければ日本のサッカーのレベルは向上しません。

 

年功序列、学閥、選手のキャリアが過度に影響を与えているところから早期に脱却されることを切実に思います。

 

 

 

◆結果を出さないと認められない

 

まとめとしては、現状の国をまたぐライセンス問題は日本はまだまだヨーロッパからするとサッカー後進国で下に見られてしまっている訳で、結果を出していないアジアのサッカーの指導理論はヨーロッパで認められないというのが現実なのでしょう。

 

現状のサッカー界のパワーバランスはどうしてもヨーロッパが強いことは明白で、サッカーの政治的なパワーバランスも同じということもあって日本のライセンスがヨーロッパで認められないのでしょう。

 

欧米ではその辺はシビアです。

 

「結果」を出したモノが評価される訳でワールドカップで上位に食い込み、国としての力を示していくしかありません。

 

悲しいかな、ヨーロッパからすると日本はまだまだサッカー後進国ですよってことなのでしょうね。

 

なかなか難しい問題で、これは解決されることはまだまだ先のように思います。

 

結果を出して認めてもらうのが一番早いですね。

 

 

今回もお読みいただきありがとうございました。

 

皆さんからのご意見、ご質問もお待ちしていますね。

 

それではまた!