西加奈子 『炎上する君』 (角川文庫) 562円
[作品紹介]
散歩中に拾った、自分と同じ機種の携帯電話。 その携帯
に届いたメールに何の気なしに返信した私は、返ってきた
温かいメールに励まされ、やがて毎日やりとりを始める―
(「空を待つ」)。我々、冴えない女2人は最近、足が炎上し
ている男の噂話ばかりしていた。 ある日、銭湯にその男が
現れて―(「炎上する君」)。何かにとらわれ動けなくなって
しまった私たちに訪れる…小さいけれど大きな変化。 奔放
な想像力がつむぎだす愛らしい物語8編。
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「炎上する君」と聞いて、ブログかツイッターでも、荒らされ
ているのかと思いきや…。 実際に、足が燃えているのであ
る。しかし、炎上することによって、より“人間らしい”生活、
恋愛を謳歌するようになる 「私のお尻」は、尻モデルの
お話し。自慢のお尻が、いつしか疎ましい存在に…そこで
貸し金庫に入れるようになり…「舟の街」は、傷ついて、
疲れ果て、どうしようもなくなった時に、彷徨い、入る、“夢
の街”。そこは、とても快適で…。
「太陽の上」は、『太陽』という名の中華料理屋の上のアパ
ート301号室に住んでいる“私”が主人公。私は、三年前
から外に一歩も出ない生活をおくっていたが、“あること”
がきっかけでその呪縛から解かれる…。「甘い果実」は実
在の作家・山崎ナオコーラに憧れる女性の話。実は、私も
常々、山崎ナオコーラ、大宮エリーなど、“ふざけた名前”
で、なんとなく活躍している輩が 気に喰わないと思ってた
んだよね…
こんな感じで、“あー、アルアル”って話も、“絶対、思い
つかない”って話も。そして、巻末の又吉直樹大先生の
解説文がまた名文。 “絶望するな。僕達には西加奈子が
いる。” そろそろ…『火花』、読んでもいい頃合いかなぁ