今週号の日経ビジネス86ページには、『グローバル競争に勝つ経営』
という表題で、TWカン氏(Mr. T.W. Kang)の論説が掲載されています。MITを出てインテルへ入社した経歴があり、ハーバード大学でMBAホルダーとなり、2007年から2009年に日本のNECエレクトロニクス社の社外取締役をされていたそうです。今、2010年はフリーのようですね。
T.W. Kang |
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2006 – present |
Member, Board of Directors, SiPort, Inc. |
1999 – 2001 |
Member, Board of Directors, Synaptics Incorporated |
1990 – present |
Managing Director, Global Synergy Associates Inc. |
1987 |
General Manager, System Group, Intel K.K. |
1985 |
Director, Office of Development, Intel K.K. |
1983 |
M.B.A., Harvard Business School |
1979 |
Joined Intel Corporation |
1979 |
B.S.E.E., Massachusetts Institute of Technology |
一番面白かった点は、韓国企業に負けている日本企業が、実は携帯電話でも要素技術を全部まかなえるのに、韓国サムソンの後塵を拝しているのは、なんとしてでも一位になる、勝つ、という強い意思だという点です。そのとおりですね。「2位じゃいけないんじゃないでしょうか」とか、「ナンバーワンでなくても、オンリーワンならいい」とかいう日本の風潮(組織風土も)では、今後も決してサムソンには勝てない、と言っています。![]()
同感ですね。技術力の優位性ではないのです
。いまや競争は。![]()
そして、戦略優位の発想が日本企業にはない、という点。つまり現場の人間は職人としては卓越しているが、管理職になる過程でビジネス競争に勝つだけの能力(つまり経営リテラシー)と信念(マインドセット)を身につけていないこと、そして、部長や常務も担当部門の利害を経営会議で主張するだけで、他部門への言及がない、という点。そして、社長が調整型人材だと非常時(つまりリストラ、ドメイン変革、提携など)では全く機能しないどころか害を与えること、をコメントしています。
同感ですね。実際、そうでしたから。
私も同じ経験をしました。そして、その取締役会の一員だったので、えらそうなことは言えません。個人の資質によらない経営をすべきだとKang氏がいうのは、この点です。個人の資質がたいへん重要だといっているのであって、個人の資質が不要で、委員会経営すればいい、といっているのではないので要注意。
そして、最後に非常に興味深い実例を言ってくれました。Kan氏は自分が社外取締役でありながら、NECエレクトロニクスがある海外企業との提携話で相手に支払う金額を会議で議論したとき、それでギリギリなのか?と聞いたそうです。そしたら、精一杯だというので、Kan氏自身が週末に交渉してみる、と申し出たそうです。結果的に数億円単位の譲歩を引き出したそうです。
これに対して、日本では感謝された半面、「複雑な気持ち」を抱かれたようだというのです。
何が「複雑な気持ち」なのか・・・というと、勝手に推測するに、「なに出しゃばって部外者がやるのか」「顔に泥塗って」あたりでしょうか![]()
米国では社外取締役がこういうことをして支援するのが普通だということでした。社外取締役はコンプライアンスだとか「守りの責務」にすぎず、「攻めの責務」もあるのだと主張されています。しかし、この点は、ちょっと異論があるかもしれません。それなら、会社の顧問でよいわけで、社外取締役である必要はありません。
それにしても、日本のNECエレクトロニクスの組織風土は、おそらく、全ての日本の会社に共通しているのではないかと思います。「重い」組織と和を尊ぶ風土そのものですね。
そして、これを脱却しない限り、日本企業のグローバル化は達成できないことでしょう。Kang氏は取締役2年の任期終了で文字どおり社外にでてしまったのでしょうが、もったいない。こういう人を日本企業は社外取締役に採用していくべきだと私は思います。
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