七夕に読む物語です。 | 沖田峯子 人生をクリエイトする。

沖田峯子 人生をクリエイトする。

日々思うこと、創作のこと、大好きな映画鑑賞などなど好きなことだけを自由に書き綴っています。

 

5分で読める短編小説。夏に読む不思議な物語。

 現実逃避したくなる。

 残業を終えた満員電車は週末飲みの酒くさいサラリーマンばかり。降車駅のビアガーデンでは男女が出会いを謳歌していた。

「……ただいま」

 誰も出迎えはしない玄関で汗ばんだパンプスを脱ぐ。
 駅近くの2LDKマンション、ほとんど寝るしかないこの部屋は私一人には広すぎる。二人用のダイニングテーブル、ラブソファー、大きめのダブルベッド。1年前に引っ越して来たっきり、家具は何も変わっていない。

 カットケーキのような間取りをしたリビングは使いづらいと反対したのに、彼はベランダが広いから二人でお月見が出来ると言って譲らなかった。でも、その彼はいない。

 付き合って5年、親に急かされたのあって同い年の彼と28歳で入籍。これから二人の新生活が始まるものと思っていた。その矢先、彼は事故で他界した。私は新婚まもなく未亡人になってしまった。

 月が綺麗。

 こんな夜は孤独が身に染みる。