恋して、破れたあの日、研ナオコの歌だけが、救ってくれた。 | 宮脇 流の「昭和を話そう」 ( BOSSのブログ)

宮脇 流の「昭和を話そう」 ( BOSSのブログ)

70年代や、あの時代に輝いていたアレやコレや。
クリエイティブディレクターが語る、「思い出のエッセイ」です。

あばよ

1973年の「ミノルタ一眼レフ」のCMを憶えているだろうか。愛川欽也が「美人しか撮らない」と軽妙に語る隣りで、女性が大笑いをしている。するとすかさず、「だから、シャッターを押さない」。当時、大好きなCMだった。美人とは言いがたいこの時の女性こそ、研ナオコ。痛快なキャラクターですでに人気者だったけれど、それから3年後に、こんなシリアスな曲をヒットさせるとは思ってもいなかった。写真のレコジャケは、76年にリリースされた「あばよ」。中島みゆきらしい詞と曲が、なんとも切なく、そして可憐な女心を表現していた。♪泣かないで 泣かないで 私の恋心 あの人は あの人は おまえに似合わない♪と、うつむき加減に歌うスタイルは、「カックラキン大放送!」でナオコ婆ちゃんの縁側日記を演じている彼女とは全く別人だ。女性というのは、一体 幾つの顔と心を持っているのかと、あの頃「あばよ」を歌う研ナオコを見て、そう感じた。いや、縁側日記を演じるからこそ、歌う姿にピエロを重ねて、より深く心の奥に届いたような気もする。B面の「強がりはよせよ」も好きだったが、ヒットはそのあとも「かもめはかもめ」「窓ガラス」と、悲恋ソングが続く。当時、失恋をした友人が「かもめはかもめ」を繰り返し聴いては涙していたのを思い出す。勿論、男だ。情けないとは思ったけれど、彼女の歌にはきっと、悲恋をはね返す勇気のようなものがあるのだろう。それが、ピエロを演じられる人の凄みなのかもしれない。

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