
♪こんな日はあの人の真似をして、けむたそうな顔をして煙草を吸うわ♪ という歌詞で始まるところが、実に昭和っぽい。小坂恭子のこの曲がヒットした1975年頃は、煙草が大人の小道具でもあり、なんだかちょっといい感じだった。レコジャケに写っているのも、eve(イヴ)という名の煙草で、当時は女性にかなり人気があった。LARKやKENT、COOLなど、洋モクと呼ばれた煙草が比較的安価になって日本に定着しはじめたからかもしれない。ダウンタウンブギウギバンドが歌った「スモーキン・ブギ」も、確か同じ頃だったので、煙草の人気は絶好調だったのだろう。今そんな歌を歌ったら、嫌煙家と言わずブーイングの嵐で、曲なんて売れない。煙草という小道具が使いづらくなって、映画監督も頭を抱えていると聞いたことがある。大人の情感を描くのに、紫の煙は必要な演出だったに違いない。音楽も、映画もこうして変化を遂げてゆく。禁煙、分煙は健康にはいいことだと思うけれど、その半面寂しい気もする。ちなみに、この75年はトレンチコートが大流行した年でもある。トレンチコートの襟を立て、冬の街角で煙草に火を付ける男たちが、少し懐かしい。「想い出まくら」を抱いて、私もひとり、今夜は眠ることにしよう。

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