
1958年生まれということは、今年57歳。全く想像もつかないけれど、どんな中高年の美女になっているのだろう? と思わせる昭和のヒロインの名は、水原勇気。1972年から少年マガジンに連載された水島新司のマンガ、「野球狂の詩」のヒロインのことである。生年月日まで細かく設定してあったなんて、あの頃からすでにマンガを超えたヒロインだった。172cmのスレンダーなユニホーム姿とあどけない素顔が、人気のヒミツ。女性初のプロ野球選手としてドラフト1位で入団させるあたりも、さすがは水島マンガと唸ったファンも当時はたくさんいた。「野球マンガ」と呼ばれる作品は、それまでにも「巨人の星」を筆頭に数多くあったけれど、野球のルールやポジション、監督の悩みの細部にまで深く入り込む水島野球マンガは、やはり別格だっただろう。そんなプロ野球界の中でもがき、耐え、ひたすら純粋に投げ込む水原勇気の姿に、ファンはいつしか現実のヒロインを求め、重ねていくことになる。77年、ついに映画化。主役を演じたのは、アイドル絶頂期の木之内みどりだった。確かに可愛くてスレンダーだったけれど、世の中に大きく開放してしまった水島イズムに、華はなかった。野球を知り、好きでなければ入り込めない少し排他的なところが、実は水島野球マンガの何より大きな魅力だったのかもしれない。

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