
こんなにも清楚でキュートな女の子がいたのかと思うほど、1973年の桜田淳子は正統的に可愛かった。デビュー曲の「天使も夢見る」や、続くセカンドシングル「天使の初恋」で見せたエンジェルハット(と、呼んでいた)のイメージも手伝って、それは絵に描いたような清純さだった。ただ私は、そのせいなのか、当時の桜田淳子があまり好きではなかった。と言うよりも、どこか嘘っぽいような、何か照れくさいような、そんな感情だったのだろう。中学の頃、学年の美化委員長が朝早く登校しては花壇の花に水をあげていた光景を見て、褒めるでもなく、笑うでもなく、ただぼんやり眺めていただけの後ろめたさに少し似ている。そう、あの頃の桜田淳子を見ていると、その純真に対してどこか後ろめたい自分がいたのである。それが、3曲目「わたしの青い鳥」、4曲目「三色すみれ」、そして写真のレコジャケ6曲目の「黄色いリボン」と続くうちに少し、歌詞が変わってゆく。どの曲も歌詞の中に「くちづけ」という言葉が入ってくるのだ。「黄色いリボン」なら、3番の歌詞 ♪大きな木の下で あなたに不意にくちづけされたの このリボン忘れないで・・♪と。天使にくちづけをする、小さな悪意。もしかすると、同じような感情を作詞家 阿久悠も抱いていたのかもしれない。実に身勝手な話だけれど、その頃からだんだんと桜田淳子を直視できるようになっていったのだ。

にほんブログ村
