
1978年から5年間続いた「木曜座」という名のドラマシリーズがあった。TBS系の木曜夜10時。そのドラマ枠は、多感な季節を迎えていた私にとって、大人の愛というものを知る絶好の時間帯だった。78年「愛がわたしを」、79年「水中花」、そして80年放送の根津甚八主演「恋人たち」で、私の疑似恋愛はMAXを迎えたのだ。準相手役の田中裕子がTVに出始めた頃。どこか、けだるい雰囲気はその後の人気をしっかりと予感させた。原作である立原正秋の同名小説を読んでいた私は、あのナルシズムをどう魅せるのかと半信半疑だったけれど、主役の根津甚八は見事なまでに成りきっていて、あんな大人になりたいと思ったほど・・。写真のレコジャケは、そのドラマの挿入歌として発表された「ボヘミア・ロマン」。ドラマの熱を浴び過ぎたせいか、まともに聴いたこともない根津ソングを気がつけば買っていた。TV局とレコード会社のタイアップというのは、怖い。それにしても、赤テント劇団「状況劇場」を経て、売れに売れていた33歳の根津甚八は、渋かった。周りの女性たちが、あの寡黙さがいいとウットリするような口調で語っていたので、当時からおしゃべりだった私もなぜか小声でボソボソとしゃべるようになっていた。大人になりかけの頃。憧れの大人がいた、昭和である。
