
アイドル時代の幕開けとなった1972年には、「新御三家」というメンズのスーパーアイドルたちも登場した。それは永遠のイケメンアイドル、野口五郎、郷ひろみ、西城秀樹の3人なのだ。けれど、あの頃いちばんフレッシュだったメンズアイドルはと言うと、私は伊丹幸雄の名を挙げる。爆発的にヒットしたデビュー曲「青い麦」は、当時郷ひろみの甘ったるさよりも、もっとミルキーだった。♪キミに会えた日から ボクは恋のトリコ キミの側にいたくて 胸は燃えるばかりなの・・♪という歌詞の「ばかりなの・・」という言葉を男子が使う、その新しい時代の到来を私は伊丹幸雄に感じていた。写真のレコジャケは4曲目、73年の「恋のおもかげ」。この頃までは、新御三家にピタリと迫り「四天王」とも呼ばれていたくらい、人気もあった。いつの間にか、新しい時代のセクシャルさは郷ひろみのお家芸となり、カブる伊丹幸雄の存在はトーンダウンしていったような気がする。76年、ロックバンド ローズマリーのヴォーカルとして加入、「可愛いひとよ」はディスコを中心にヒットした。アイドルロックバンドというジャンルも新しかったけれど、それもまたレイジーの登場によって、カブってしまった。似た感じでもいいじゃないか、と今なら言えるけれど、カブったアイドルは消え去るのみ。昭和には、そんな掟があったのかもしれない。
