
1975年、その少年は彗星の如く現れた。フォーリーブスや郷ひろみの人気で勢いが増した頃のジャニーズ事務所、イチオシのアイドルが、豊川誕だった。デビュー曲「汚れなき悪戯(いたずら)」に続く第2弾が、写真のレコジャケ「星めぐり」なのである。当時、私が凄いと思ったのは、その底知れぬ暗さ。こんなに暗い少年にアイドルの称号を与えていいのかということだった。♪あなた信じてただけに 突き放された感じ あとはもうヤケになる どうにでも・・おまけに雨も降り出した♪ という、才媛 安井かずみの歌詞さえも、真っ暗だ。児童養護施設出身という過去をさらけ出し、同じ孤児院育ちのヒーロー「あしたのジョー」から、命名したという。豊川誕の名を、その後時々「芸能ニュース」なんかで聞いた気がするけれど、ほとんどがいいニュースではなかった。♪かわいそうな星めぐり 人に言われて気がついた・・・♪ ジャニーズ事務所から巣立つアイドルに時折のぞく陰の部分。豊川誕を思うと、少年はいつも希望と絶望を併せ持っているのだということに気づく。人は、星めぐりなのだ。
