
1972年の暮れ、そのバンドは登場した。リーゼントに黒い革ジャンという、とりわけ新しいスタイルではなかったけれど、そのストレートさが「キャロル」の全てだった。ロックとか、ロックンロールとか言われても、ビートルズとエルビスプレスリーしか知らなかった頃、グラサンにツイスト、ブーツでロックンロールは、ステキな不良だった。それまで流行っていたフォークソングがどうも湿っぽくて、白いギターも似合わないなあ・・と常々思っていた私は、グイグイ引きこまれていったのだ。ディスコと言っても、まだ喫茶店をちょっとうるさくした程度の、コークを頼めば入れたお店があった時代。そんなディスコには、デビュー曲の「ルイジアンナ」がガンガンかかっていた。なのに、たった3年で、わずか10曲で、キャロルは解散してしまう。写真のレコジャケは、74年の「涙のテディ・ボーイ」。8曲目のシングルになる。♪流れる涙を春の日に、かわかすファニー、テディ・ボーイ・・♪ このレコードが出た当時、すでに永ちゃんとジョニー大倉の仲が良くなかったと知ったのは、解散してから後のことだった。珍しくもこの曲は、永ちゃんの作詞。涙をバネにして生きる、永遠の不良少年 矢沢永吉の、どこか叫びに聴こえた。
