
食品のおまけには、いつの時代もカードが多い。昭和の人気カードと言えば、野球カードに仮面ライダーカード、ともうひとつ、写真の「東海道五十三次カード」である。永谷園のお茶漬け海苔を買うともれなく1枚付いていたカードだけれど、当時は20枚集めて返信用切手を一緒に送ると1セット(55枚)がもらえたと記憶している。ただ、ひとつ疑問だったのは、集めたカードとセットでもらえたカードはどこが違っていたのかということだ。それは謎のまま、今に至っている。しかしなぜに、そんな渋いカードがウケたのだろう? 高度成長期を経てちょっと余裕のある庶民の間で、浮世絵的な絵画が流行ったからかもしれない。実の所はさておき、 昭和40年頃の市販のマッチにも、確かに歌麿や北斎のシリーズがあった。昭和40年代は、そういう時代だったのだ。あの頃の食卓に、いつもあったお茶漬け海苔。カードが先か、お茶漬けが先か、理由は不確かなままだけれど、ある特定の年代に「歌川広重」が馴染み深いことだけは間違いない。あの絵を見ると、なんだかお茶漬けが恋しくなるのである。
