
写真のレコジャケは1972年のヒット曲、GAROの「学生街の喫茶店」。♪君とよくこの店にきたものさワケもなくお茶を飲み話したよ♪ というシンプルな歌詞だけれど、当時はそのフンイキが大人っぽかった。そもそも喫茶店に入るということが、大人な時代だった。ジャズ喫茶や音楽喫茶なんていう店もあったのだから、くゆらすタバコの紫煙とコーヒーと音楽は、それで大人の1セットという時代だったのかもしれない。この年、浅間山荘事件を観ながら周囲が呟く「学生運動も終わったな・・」のセリフに耳を傾け、コーヒーをすすりながらフォークソングを聴くのが大人への入り口だった。人生がどうとか、哲学的な歌詞の多いフォークソングの中で、「学生街の喫茶店」はわかりやすかったから、多くの人に支持されたのだろう。なんとなく崇高な音楽のように感じられた理由は、続きの歌詞にある。♪学生でにぎやかなこの店の 片隅で聴いていたボブ・ディラン・・・♪ ボブ・ディランて、誰? どんな音楽? 何それ? という謎こそが、この曲の神秘性であり、そしてGAROの人気の秘密だったのだ。「君の誕生日」「ロマンス」とヒットは続き、73年にはNHK紅白歌合戦にも出場したけれど、だんだん神秘性は消えていき、単なるアイドルと化したGAROの人気の秘密も消えていった。
