
読書の秋なので、これより数回「昭和のマンガ」のお話なのである。1969年に少年サンデーに連載されたのが、この「ウメ星デンカ」。TBS系列でテレビアニメ化もされている。藤子・F不二雄の作品にしては珍しく、再放送されることもなければ、リメイクされた事実もあまり知らない。「オバQ」や「パーマン」に続く傑作だと個人的には思っているけれど、世間はそうでもないのかもしれない。中でも、ウメ星国の重臣ベニショーガやロボットのゴンスケなどは、他の藤子・F作品には出てこない異質なキャラクターであるところがニクい。ちょっと物事を斜めに見ているような存在感は、スネ夫やキザオとも似ているようで、しかしもう少しシニカルで奥が深いのだ。写真の「ウメ星デンカ」は、虫コミックス。あの手塚治虫が68年から関わった出版事業だったけれど、倒産によって刊行中止。たったの5年間で、人気の虫コミックスは無くなってしまった。♪スッパンパラパン、スッパンパン、ウメ星デンカがやって来た♪ 石川進の名調子で、アニメの主題歌が聴こえてくる。確実に異星人なのに、最も日本人的なシャイな気質を備えた国王と王子に、もう一度会いたい。
