男の切なさを肴に今宵、鶴田浩二の世界。 | 宮脇 流の「昭和を話そう」 ( BOSSのブログ)

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70年代や、あの時代に輝いていたアレやコレや。
クリエイティブディレクターが語る、「思い出のエッセイ」です。

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写真のレコジャケは、名優鶴田浩二の「傷だらけの人生」。「古い奴だとお思いでしょうが、古い奴ほど新しいものを欲しがるもんでございます・・」と、しびれる台詞で始まる、いなせな着ながしが似合う男の歌なのだ。リリースされたのは、1970年の12月。EXPO70、大阪万博が開催され“人類の進歩と調和"が叫ばれたその年の終わりにこんな歌が流行ったのだから、世の中はわからない。翌71年にかけて大ヒット、耳に手を当てマイクにハンカチを添えて歌う姿が渋かった。鶴田浩二と言うと、もちろん任侠映画ブームの立役者であり、東映のトップスターだったけれど、76年に始まったNHKドラマ「男たちの旅路」ではちょっと頼りない、ちょっと不器用な中年男を演じた。当時若者だった水谷豊や桃井かおりの上司役として、頑固なまでに筋を通す姿は画面を超えてサラリーマンに大きなエールを贈った作品だった。警備会社の、独身中年のしがない上司という設定が、これまでの鶴田浩二のイメージとは違い、それだけにそのギャップが面白かったと私は思っていた。けれど、今この歌詞を読むと、♪右を向いても左を見てもばかと阿呆のからみ合い、どこに男の夢がある♪ と続く。頑固な男の切なさは、ずっと鶴田浩二の世界だったのだ。秋の宵、そんなことを想いながらチビリ、チビリと盃を傾けるのも、またいいかなあ。

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