生活保護世帯の大学入学貯蓄容認
厚労省「貧困の連鎖」断つ
厚生労働省は13日、生活保護を受けている世帯が子どもの大学の入学金に充てるため、保護費を預貯金することを認める方針を固めた。近く都道府県などに通知する。将来の就労に役立つ進学を後押しすることで、自立できる環境を整え、親から子へとつながる「貧困の連鎖」を断ちたい考えだ。
新潟日報 2013年5月14日
これに取材を受けたので、コメントしました。
次のように掲載されています:
「(8月からの)基準額の引き下げで食費を確保するのもいっそう困難になるのに、貯金という発想は現実的でない。引き下げへの批判をかわすための『ガス抜き』的な方針ではないかと疑う」
これに、もう少し補足したいと思います。
生活保護バッシングに始まった自民党は生活保護基準の引き下げを公約。前回総選挙で公約したものの、現実に生活保護基準額は、子育て世代ほど重い引き下げが予定されています。これに対して、「貧困を次世代へ連鎖させる」と世論が強まっていました。
そこに、今回の厚労省方針です。
一見すると、よさそうな方針に見えます。しかし、まさに「ガス抜き」の政策的な発想であり、もっといえば、これはものすごい「騙し」です。
まず、大学進学に一体いくらかかるでしょうか。
国立大学の初年度納入金は約80万円です。月に1万円貯金ができたとしましょう。80ヶ月、つまり7年弱です。つまり、一人っ子だとしても、中学校に入学するときには、貯金を始めていることが必要だということです。まず、1万円も貯金できませんから、もっと前倒しが必要です。現実的ではありません。
政府は今回の方針を出したことによって、次にこう言うのです。
「貯金ができたのに、貯金しなかったのは、あなたたちが悪いのです。」
そうです!
責任を、親になすりつけるのです。
詐欺師まがいのテクニックです。
もっと言ってくるようになります。
「貯金できたけれど、大学に進学しなかったのは、あなたの子どもの頭が悪いからです。」
そうです!
子どもに責任を押しつけるのです。
悪代官なみの悪逆非道な言い分です。
現実に何が起きるでしょうか。
親は、子どものためにと思って、はやくから自分の食費を削るようになります。食べるものも食べない親の姿を見て、自分のためにお金を貯めてくれていると気づくと、自分がいるから親が苦しんでいるんだと自分の存在そのものを否定する子どもが育っていくのです。地元の国公立大学に進学しようと思っても、全員が希望通りにはいきません。自分の能力が足りないばかりに、親に苦労を掛けることになると二重に自己否定感に苦しむ子どもが育つことになります。
そうです!
最も感性の鋭い子どもを傷つける政策です!
「どうせ子どもにはそんなことはわかるまい」とバカにする政府は、貧困な人間観しか持っていません!
記事のコメントでは、抑えた表現にしましたが、ここでははっきり言いましょう。
厚顔無恥な政府は、国民の代表たる資格はありません。
次回の選挙では、全員のクビを交換です。