ヨセフ・レヴィーンのドナウ | たかがピアノされどピアノの日常

たかがピアノされどピアノの日常

埼玉県戸田市のピアニスト伊集院紀子の毎日

私はこの方からテクニックの基礎を学んだと言ってもいい恩人の一人です、、といってももちろん会った事も見たこともないけど・・・なにせ1800年代生まれのピアニスト兼名教師という方ですから。

この方の名著「ピアノ奏法の基礎原理」はとても薄くて小さい小冊子みたいな本なんですが、そのページ数の何万倍も価値ある本です。

近年テクニックや勉強法に関していい本は沢山出ていますが、私が経験から思うに、テクニックに関しては、多すぎず、足りなすぎず書かれたものの方が読者が自分で模索する余地があり、ただでさえ描写しがたい楽器奏法を文章で表現する上で、ちょうどいい按配になっている本だと思います。

私は音大卒業後、何年かしてこの本をもういちどじっくり読んで、テクニックを考え直すこととなりました。これがなかったら、今の自分はないなと思うくらいです。

とはいえ、この方のCDは探したこともなく、もちろん演奏は聴いたことがありませんでした。今日偶然見つけ、「このCDに収録されている「美しき青きドナウ」の絢爛たる演奏は、伝説とも目されています。」というレビューを見てドナウを聴いてみました。

冒頭で、「あれ?奥さんとのデュオか、でも確かにすごいな、、」と思いつつ、変だな、ソロだと思ったけど・・・?ともう一度タイトルをチェック。。。


なんと、、これ一人で弾いてるの?ムンクの叫び

信じがたい・・・これが一人の人間の手とは・・・どう聴いてもデュオ(2人て弾くこと)です。はっきりいって楽譜が想像つきません。あまりに各旋律が自在に表現しつくされていて、とても10本の指で足りる技とは思えません。。。

伝説と言われている意味がよーくわかりました。

このエレガンスと驚異的な技術の共存は他の追随を許さない気がします。似たような人でシフラが思い出されますが、あちらは悪魔的、こちらはとても人間的で、両極に存在するような印象を持ちました。PCの稚拙なスピーカーですらこの驚きですから、ちゃんとしたスピーカーにつなげて聴いたら眠れなくなるかも・・・。

すごいもの聴いちゃった、、、というか、この演奏を今まで知らなかった私って?というカンジですが苦笑・・・だって録音があまり残っていない印象の方だったもんで、、、汗