一億総活躍社会、超高齢社会、少子化対策、待機児童問題といったキーワードが毎日のようにニュースを賑やかしくしていることから連想できるのですが、社会保障の充実が掲げてられている昨今、福祉への期待度は高まるばかりです。
待機児童問題で取りあげられる保育所不足の問題で、保育士の待遇について注目されています。
私自身も福祉の国家資格を有していて、今まで福祉畑にいることが多かったのですが、疑問は深まるばかりです。
その疑問とは「有資格者でも専門家になれない」という福祉職の構造です。
福祉職の人は実際どこに所属して働いているのでしょうか。
医療機関、公的機関、社会福祉法人、NPO法人、一般企業、個人経営・・・こうして考えるといろんなところに就職しているようです。
保育所問題は主に都心部で起きているようですが、私は地方での経験しかないので、地方を基準にして考えたいと思います。
最低賃金法で定める最低賃金は、全国平均で時給800円を超えたと以前ニュースになりました。時給800円として一日8時間、週40時間、月4週で計算すると月給128,000円になります。これから可処分所得を計算しますと、単身世帯の生活保護費と同額くらいになります。(生活保護費も計算の仕方は少し複雑で、地域によってもかなり異なるので単純比較は難しい)
これを踏まえて福祉職を見てみます。普通なら福祉職の人々の年収の中央値を見たいところですが、「福祉職」という分類の仕方が一般的でないので、有用な資料を見つけられませんでした。
しかし、私が問題視するのは年収の面だけではなく、「雇用形態」についてです。
福祉職は女性が中心に担ってきた職であることから終身雇用という形態が少ないのが特徴です。つまり、パート・アルバイトという非正規雇用が担い手となってきました。
それに上書きするように非正規雇用促進政策が施され、福祉職の中核はほぼ非正規雇用によるものへ遷移していきます。
例えば、地方自治体の職員では非正規雇用率は30%ほどでたいだい3人に1人が非正規雇用なのですが、私の経験からすると、福祉部門の職員に限ればさらに非正規雇用率が上がるよう思えます。
その理由は、福祉部門の専門化が進み、有資格者を配置するようになってきたからです。当然ながら正規職員を配置すると人件費がかかりますから、予算上は消耗品費で買える非正規職員を配置することになっています。
もちろん非正規雇用であり、人件費の対象でなければ各種手当が付きません。一年でいくらで買われているのですから、買った後にたくさん働いたからといって値上がりしても応じられないのです。人間ではなく消耗品ですから、買った後に値上がりすることは許されません。
それでも業務量は変わらない、むしろ専門化するならより複雑化していくのですが、公共サービスを維持できているならば非正規雇用でも正規雇用と質・量ともに同等の業務をこなしていることになります。
そして報酬ですが、地方公務員の年収が中堅以上になると600万円を超えてくる程度ですが、非正規雇用の場合はおおむね年収200万円以下です。
公的機関でなくても民間の福祉職はでも年収200万円というのはベースになっています。というのも、有資格者でも年収200万円以下の非正規公務員の職へ応募する人が少なからず存在し続けるからです。
ほかにもっと待遇の良いポストがないので、待遇が悪くても応募せざるを得ないのです。経済的徴兵と同様の構図です。
私は以前、「1円でも給料をもらっていえるなら、プロとしての仕事をするべきだ」と教えられました。
しかし、私はプロフェッショナルを求めるならそれに相応しい報酬を与えるのは当然だと思います。
こうした状況が続く限り、本当の福祉の専門家は現れません。短期契約での使い捨てで質を保てるとしたら、それはその福祉職を担う個人が自己負担で研鑽を積んでいる場合に限られます。
こうなると福祉職を続けるには利権を追求し続けるしかありません。医療職に追随してその利益のおこぼれに与りながらでは医療職に逆らえません。こうして福祉職も医療型ピラミッドの底辺に組み込まれているのです。
その状況を指示している例として、
日本精神保健福祉士協会に入会しているのは、精神保健福祉士有資格者の20%に届きません。職能団体としては異常は低さです。
職能団体とは自分たちへの待遇の改善を要求したり、自分たちの理念を政治へ反映させるように働きかける団体になります。そこへ入会する人がいないということは、その団体への期待度が低いということになります。
もはや福祉有資格者自身が諦めている、と言えるのではないでしょうか。それでいて専門家呼ばわりするのもされるのも虚しさしか伝わってきません。