ボーン・アイデンティティー (2002年) | 大手町映画館

大手町映画館

どんなにつまらぬ映画にも 必ず光る何かがある
その光こそが 日本の映画界には無い
ハリウッドの映画づくりに対する情熱
ハリウッドの情熱に触れるコトができれば 心が自然と豊かになる

マット・デイモン主演
ダグ・リーマン監督

自分の名前さえもわからない記憶喪失の男が、無意識に多数の言語を操り、身体が勝手に動いてしまうという絶大な格闘能力を持ち、勘が鋭く危険察知に長け、見るもの全てを記憶してしまう。
そんな彼の、自分探しの旅。


非常にスタイリッシュでソリッドなアクションムービー。
スイス・フランスを舞台としてるので、街並みとかの映像もスタイリッシュ。
雰囲気がとてもいい。

CGをふんだんに使ったド派手なドンパチの映画とは違い、素手による格闘、銃器はせいぜいハンドガンとショットガン、ミニクーパーでのカーチェイスと、地味ではあるが、それを気にさせない映像手法は見事。
格闘シーンはカット割りに凝っていて余分が一切ない。包丁で戦うと思いきやボールペンで戦う、銃で撃たれて脳みそバーン!血がプシュー!ではなく、パスッと一撃、コテンと倒れる。スピード感満載。
フランスの街をミニクーパーが疾走、スポーツカーや高級車でなくともカーチェイスは迫力ある映像にできるもんだと感心。
CIA内の捜査シーンも緊迫感とスピード感があり、電話してるだけなのに手に汗握る展開。

マット・デイモンはゴリゴリのアクション俳優ではないのだが(顔は別)、映像手法の手助けによって新境地の演技を手に入れた。
通常時は、表情の変化に乏しい記憶喪失のスーパーマンっぷりを巧く演じている。
指紋を拭き終わって、ちょこんと座ってる姿がいい。

共演のフランカ・ポテンテは、設定の、「放浪癖のある風来坊」な感じが巧く出されている。
多くの人が疑問に思う、「なぜついて行くのか」は、その設定が答えなんじゃないかなと思う。
車の中で待ってろと言われたけど、外に出て戻ってこないつもりが、うつむき加減でツカツカ歩いてくるシーンが可愛らしい。

先人のジャックとアニーも言ってたが、
「危機的状況を経験した男女は、多くの確立で恋人になる。」
というハリウッドの哲学も、存分に納得できた。
男目線だが、誰かもわからない組織に襲われ逃げのび、何週間かぶりに喋った女性とホテルに入って落ち着き、毛染め・洗髪なんてしてあげてると、こう…、込み上げてくるもんがある…。ハリウッドのアクション映画の女性の正装タンクトップなら尚更。
女性はどうなんだろうか。DNA的には生死を彷徨うと母性が働いて身体が守りに入るというが、そんなときに強さの象徴が目の前にあると、やっぱり子猫ちゃんになっちゃうのだろうか。
マリーも、若干いい加減な性格の設定だからねぇ…。

それでもスタイリッシュな演出だから、そこは必要最低限のロマンスで留めている。
情熱的で濃厚な関係にするには、出会ってからの時間が圧倒的に足りない。

やっぱり、演出が光る作品。


ラストシーン、マリーが営むレンタルバイクショップのレジの傍らに、アサガオの花が咲いている。
そのアサガオが植えてあるのは、ジェイソンがスイスから持っていた赤いバッグであった。
アサガオの花言葉は、
「愛情の絆」
「はかない恋」
である。