『新月の夜、南の海で彼らは生まれた。幼い彼らは北赤道海流の西端から黒潮に乗り継ぎ、数ヶ月をかけて日本や東アジアの国々にたどり着く』—。
そんなプロローグに、ピンときた人はいるだろうか?
いないって?
文芸社から発行されている『新月の夜、南の海で』は、ある水産会社社長の謎の死から始まり、鰻を絡めながら描かれる冒険ミステリー。
物語の随所には
“蒲蒸し鰻のリパック。聞いた事があるだろう”
“本名は『K○特うなぎ』言うてな、日本初のブランド鰻や”、
“愛知県一色町には百軒を越える養鰻業者がおりまして、もう17年も連続で鰻生産日本一ですわ”
など業界人なら思わず、にやりとする会話シーンが多くちりばめられている。
ちなみに、著者の鹿野苑俊(ろくやおんすぐる)氏は無類の鰻好きらしい☆
“鰻”が大きく関わる本書はとくに業界関係者は是非、一読してみてはどうだろうか?
鰻だけに、“つかみどころのない”展開が終盤まで続くが、読み終えた後には業界が忘れかけている“何か”をきっと呼び覚ましてくれる事だろう。