前回のブログ「ウクライナ問題から始まる金融懸念」で、クレディ・スイス 短期金利戦略グローバルヘッド ゾルタン・ポズサール氏が言う、「ブレトン・ウッズⅢ」が始まるのではないか、と言うことを書きました。

 

現在もロシアと西側諸国の間では、経済制裁とガスの支払いについて、応酬が行われています。

 

ロシアがウクライナへ侵攻した後、西側諸国からの経済制裁の影響で、一時は下落したルーブルですが、現在は持ち直して来ています。

 

出典:XE Currency チャート: RUB から USD

 

これは、ロシアが天然ガスの代金を今後はルーブルで支払うようにしたこと。国債の返済をルーブルで行うと発表したことによると思われます。

 

 

*ルーブルは、ロシアが新しい経済の道を切り開くために、筋肉を柔軟にします。

ロシア通貨は、制裁措置に対応するために中央銀行が採用した金融政策の効率性を反映して、過去3週間で劇的に上昇した。また、先週政府が「非友好的」な国に対して、天然ガスの代金を今後はドルやユーロではなくルーブルで支払うよう要求したことも大きな追い風となった。
 

これに対し西側諸国は当然ですが反発しています。

 

*EU、モスクワのガス代ルーブル払いの要求を拒否

G7諸国が同様の発表をしたのに続き、欧州連合が拒否した。

EU加盟国はロシアのガス代金をルーブルで支払わない、と欧州委員会が火曜日に発表し、モスクワの支払いメカニズムの切り替え期限である3月31日を拒否した。この発表は、G7諸国が同様の対応をした翌日に行われた。

先週、ロシアのプーチン大統領は、モスクワに経済制裁を課している敵対国に対し、ロシアのガス代金をルーブルで支払うよう要求した。月曜日には、この課題を達成するために必要なツールを開発するよう政府に命じ、木曜日に期限を設定した。

 

しかし、EU諸国はロシアからのエネルギーに頼っています。

 

*「脱ロシア依存」どこに? 欧州の露産ガス輸入過去最大に

欧州がロシアから輸入する天然ガス量が昨年、最大を記録した。欧州連合(EU)はウクライナ危機を機に、エネルギー分野でのロシア依存の低下と供給源の多様化を目指すが、これに逆行するような傾向だ。加盟国の対応にも温度差が目立ち、米国も懸念。「脱ロシア」はかけ声倒れに終わるのか-。

 

この様な状況で、EU諸国がルーブルでの支払いを拒否した場合、ロシアはガスを止めると思われます。そして、もしロシアがガスを止めたとしても、それを非難することは筋違いだと思います。

 

西側から経済制裁された時点で、ロシアはガスを止めることが出来たはずです。しかし、ガスは止まっていません。プーチン大統領が本当に悪魔なら、とっくにガスは止められ、EU諸国で数百万の人達が凍死したと思われます。そんな事をプーチン氏は考えていません。ウクライナの軍事作戦がゆっくり進められている背景は、過去記事で書いた通りだと思います。


ルーブルでの支払いを拒否されたドイツは、ガスの配給に奔走。

モスクワは、ヨーロッパの「パートナー」に対して、石油とガスの代金をユーロではなくルーブルで支払うよう要求する姿勢を強めている(このルーブルは、「制裁」の名の下に簡単に没収できることが、すでにヨーロッパ諸国が証明している)ため、ドイツ政府は、この支払い問題によってヨーロッパ最大の経済地域におけるエネルギー不足が問題になる恐れがあるとして、踵を返している。

 

バイデン大統領と米国は、約束したLNG輸出のルートを変更するのに何年もかかるのは残念だ(それでも、ロシアの供給を完全に補填することはできないだろう)。

ハベックは、モスクワがルーブルでの支払いを拒否したことで、欧州の最大顧客であるロシアへのエネルギー輸出を速やかに停止することを恐れて、この警告を発したのである。

この動きは、ガス輸入の支払いをルーブル建てで強要するモスクワの努力に反発しているため、ロシアが自国とその近隣諸国への供給を削減するかもしれないというドイツの懸念が引き金となったものだ。

先週、「敵対国」に対して
ガスや石油の代金をルーブルで支払うよう要求した後(や暗号通貨も考慮される可能性を示唆したが)、G7がロシアの要求を積極的に拒否したため、モスクワは「ただ」では資源を共有しない、と述べた。

 

 

エネルギーだけでも大変な問題ですが、食糧についても下記のニュースがありました。

*ロシア穀物組合は輸出代金のルーブルへの切り替えを希望

欧米の制裁措置により、農産物輸出業者はリスクを最小限に抑える解決策を模索中

ロシア穀物輸出組合(Rusgrain)は、国内の農産物をルーブルで販売するために必要なツールを得るためにロシア銀行を頼った。経済紙コメルサントが入手した取り組みリストによると、この措置は規制当局と同連合の会合で話し合われたという。

ロシアの穀物輸出の70%以上を占めるルスグレインは、同国の穀物の買い手にサービスを提供する外国の銀行にルーブルの流動性を提供するよう規制当局に要請している。

 

イタリアでは、種・肥料・農薬・等々の高騰で、農家の11%が廃業寸前で、30%が利益が出ていないというニュースもありました。

*閉鎖の危機に瀕しているEU諸国の農場の数が判明

 

これは、イタリアだけの問題ではなく、他の国々、日本でも同じ様な状況だと思われます。

*ウクライナ戦争は第二次世界大戦以来最大の食糧危機を引き起こしていると国連は発表した

国連-国連の食糧部長は火曜日、ウクライナでの戦争が「大惨事の上に大惨事」を生み出し、世界の小麦の相当量を生産するウクライナの農民の多くがロシア人と戦っているため、「第二次世界大戦以降に見たこともない」影響を世界に与えるだろうと警告した。

国連世界食糧計画のデビッド・ビーズリー事務局長は、国連安全保障理事会で、すでに高い食料価格が急騰していることを明らかにした。

 

 

他国への軍事侵攻には賛同きませんが、プーチン氏の真の対戦相手は国際金融資本であることを認識しなければ、ウクライナ問題は分からなくなると思います。これは、国民国家(プーチン氏の考えるロシア)と新世界秩序との戦いであると言えます。新世界秩序の新世界とは、極限られた者=グローバル・スーパーエリートが、地球全てを支配し、国や民族は全て消し去られ、地球市民は支配者に隷属する世界の事です。

プーチン氏は彼らの牙城である、世界経済フォーラムのダボス会議で、ハッキリとそれを否定しています。その後(正確な日付は不明だが2月下旬ころ)、世界経済フォーラムはロシアをフォーラムから排除しました。

 

 

基軸通貨をドルと決めたのは西側(国際金融資本)の都合であり、ドルは兌換貨幣でもありません。そして、外貨準備として蓄えていても、今回のように国際金融資本が気に入らなければ簡単に凍結されてしまいます。これは、ロシア以外の国にとっても非常に重要な事だと思います。アメリカ(グローバル・スーパー・エリート=国際金融資本)の作ったルールの中では、他国は言いなりに成るしか無いということが、証明されたわけです。そして、ドル自体の真価も再考せざるを得ないと思われます。

*ウクライナ問題から始まる金融懸念

 

貨幣発行と同様、現在の金融システムは、国際金融資本の自分都合で作られています。そしてこの仕組みこそが、無から永久に富と権力を生む仕組みです。しかし、その仕組も完璧では無かったようで、グレートリセットの中で、それもリセットしようとしています。

 

このような世界情勢の中で、ウクライナ問題は生じています。コロナ禍がスタート合図だったように、ウクライナ問題も様々な「リセット」の契機と思います。ただ、どこまでそれが進むのか、完了するのかは分かりません。ウクライナ問題がいつ思わるのか、もちろん分かりません。しかし、コロナ禍以降、確実に進んでいる事は間違いないと思います。

 

ロシアは国際金融資本が作り出した仕組みから、脱却することが出来るのか?ロシアの考えるシステムに賛同し、追随する国は出てくるのか? 中共はどう動くのか? 習近平氏の進退含め、今年は激動の年になりそうです。

 

過去記事もご覧ください