それからの1年 父はリハビリを続け
病院にかかりながら一生懸命 健康に気をつけて
暑い夏も乗り切ってくれました
わたしは子供の夏休みに帰省し父に再会
みんなでトランプをしたり
季節外れですが 大好きな百人一首をして
楽しい時間を過ごしました
そして今回どうしてもわたしたちに蛍をみせたいと
父は張り切って
少し遠いところにある天満宮に連れていってくれました
暗くならないと蛍は見えないので
出発したのは夜の9時過ぎ
駐車場に着くとあたりはもう真っ暗
父は車から降りるとき
重い鎖をだして手に巻き付けていました
(。´・ω・) ん? なにしてるのお父さん?
と聞くと
「悪さをする連中がでるかもしれんから
念のためにな」と
そ、そんなことある訳ないでしょ?と驚いたのですが
その頃の父は 以前に比べると体力も落ちて
鎖を巻き付けた手は年をとっていて
それでも父の顔は真剣で
夜の天満宮、何が起こるか分からない
何かあったら娘と孫を守る!という気迫がみなぎっていました
そんな父とはうらはらに 天満宮場内に入ると
家族連れがあちこちで蛍を見物していて
暗くて静かでとても和やかな雰囲気でした
蛍はあちこちに美しく光って
それはそれは素晴らしい光景でした
初めて蛍をみてはしゃぐ娘 その姿を喜んで眺める父
蛍をみせるために
夜の危険からわたしたちを守る覚悟で
あれこれ思案したうえでここまで連れてきてくれたんだ・・・
父の深い想いに胸を打たれました
楽しい夏の帰省が終わり
新幹線のプラットフォームまで父がいつものように見送りにきてくれ
わたしと娘は米国へ戻っていきました
父は新幹線の窓越しに、満面の笑顔で
見えなくなるまで手をふってくれていました
そしてそれが父をみた最後になりました
サンフランシスコの夕暮れ