二年前からワンを飼っております。
雑種犬、雄、二歳。
どうやら、ゴールデンレトリーバーと、パセンジーと、ピットブルのミックスらしく
どの子の特徴も持っているような(いないような)
元々ワンは大好きではあったけれど、飼うことにはためらいがありました。
子供の頃、どうしてもワンが欲しかったけど親の承諾を貰えなくて…たまたま近所で可愛い子犬が5匹生まれて、貰い手をさがしていると聞いてしまったものだから、どうしてもどうしても飼いたくて。
苦肉の策、お客様と一緒に晩酌をしていた父が泥酔する頃を見計らい、突然拝み倒す!という技をかけたのでした。
結果、願いは叶ってしまいました。
白くてフワフワの可愛い子。スピッツのミックスと聞きました。
ただ、そんな飼い方だったものだから、親がワンを愛することは無かった…。
あの子は、雨の日も雪の日も外にいた…。
当時10歳の私には、犬を食べさせていけるだけの経済力はなく、親が仕方なしに購入してきたビタワンを
時には牛乳をかけ、ときにはこっそりチーズをかけて、朝晩与えていたのみ。
寒い夜、牛乳をかけてあげたら喜ぶだろうという単純発想でごはんをあげに行き、がたがた震えながら牛乳を飲んでいたワンを思い出し心が締め付けられる…せめて温めてあげたかったと未だに心が痛むのです…。
お散歩はかなりたくさん行きましたけど、父や継母が散歩に連れて行ってくれることは無かったです。
私が風疹で寝込んだ時、あの子は1週間もお散歩に行かれなかった。
今振り返っても、当時の自分なりに一生懸命大切にしていたように思います。
お小遣いでワン用の缶詰を買ったり、赤い首輪を買ったり。
でも、一つの命を預かるには、やはり大人の助けは必須でしたね。
私の気持ち程度のお世話では全然足りなかった。
あの日のワンは幸せだったのだろうか。
台風の日に鎖が切れて、逃げてしまったようです。
いつもはすぐに帰宅するのに、その日は戻ってこなかった。
何日も泣いて、張り紙して、探したけど
見つかりませんでした。
あの日、私にはワンを飼う資格はないのだと思い、もう飼うまいと決めたような気がします。
父や継母を恨めなかったのは、私が強引に連れて来てしまったからです。
私なんかが飼い主ではなかったら、もっと幸せで温かな犬生を送れたのかもしれない。
それが長い事トラウマでした。自分はあの子にとっての最低最悪な飼い主だったのだと。
もう不幸にするワンを作ってはいけない。
それなのに!!!
今のワンが突然来てしまった。
いつも通り、普通にショッピングに出かけ、シャツを選んでいた時に電話がかかってきて
犬がいるよ、欲しい?って。
色んな家を転々とした子で、貰い手がなかったみたい。
大きくなる可能性も含め、躊躇われたようでした。
それなのに何でしょう…その時の気持ちは、ワンを見る前に決まっていたような気がします。
うちに来るべき子。今度は親になった私が、昔のワンにしてあげたくても出来なかったことを思い切りしてあげられるんだ。
最初は本当に嚙みつきまくり、この子とやっていけるかな…と不安にもなりましたが
なぜか私にだけは従順。頭の良い子で、教えてもいないのに、家で粗相を一切しなくなり、家族の物を噛んで壊すこともせず…。
時が経つ毎に家族間での信頼関係が構築され、一人子供が増えたみたいです。
公園で思い切り走り、息子とフリスビーで遊ぶ。近所にはワン友もいて、眠るのは私の足元。
散歩は何が何でも家族の誰かが行く。早朝でも夜でも。これは犬を飼う者の義務。
前置きが非常に長くなったけれど
今日、その子が入院したのです…
尿道結石!!!まだ2歳の若い犬が!!!
調べてもらったら、DNAではないかって。今までのごはんなどを振り返っても、原因が分からないとか。
薬で溶かす挑戦から始めましたが、昨日全くしーしが出なくなり、様子も変でしたので夜中に救急で診てもらいました。
管を通し、何とかしーし道は通り、今夜手術です…。
日本の獣医さんの相場は分かりませんが、
こっちって、目玉が飛び出るほど高い!
ちなみに、救急病棟は6時間の処置で1500ドル。
そのうえ、手術は7000ドルかかります。
実際、凄く大変です!!
ため息しか出ませんでした(最初は)。
でもね。
放置したら死んでしまうんです。
しーしが出なくて痛みがあったらしく、震えながら寄り添ってくる。助けてって言ってるみたいで。
この子を救わなかったら、私は大好きなワンを2匹も不幸にしたことになる。
せっかく神様が「もう一度チャンスをあげるよ」って寄こしてくれた子。
よっしゃあ!まかしとき!
ママが守ってあげるよ!
さあ、休日出勤、深夜バイト、どんと来い!
ガンガン働くぞー
夕べは、獣医さんに行く前に、しーしが少しでも出れば…と歩かせました。
その時、必死に「出る場所」を巡り、焦りながら歩く背中を見ながら泣けて来た。
苦しいだろう。すぐに病院だ!
そして暴言です。
なぜか死んだ父に。
「死んでから10年以上経ってるくせに(父は死んじまいました)、まだ魔法も使えないのか!あんたが死んだあと、私がどれだけ大変な思いをしたか分かってるのか!分かっているのならお詫びの印にこの子を治せ!分かったか!ばか親父!」
ね、凄い暴言。横暴。
死んだ人は魔法使いになどなれないことは分かってるのに。
私は子供心で、父を怒っていたんです。
今のワンを見る度に思い出すんです。
なぜ、酔っていたとはいえ承諾し、一つの命を預かった身でありながら
私任せにしたのか。協力すらしてくれなかったのは余りにもひどいよ。
私が具合の悪い時、少しでも歩かせてあげていたら…雪の日に、玄関にだけでも入れていいよって言って欲しかった。
お風呂に入れる時も、なぜこっそり誰もいない時間にしなくてはならなかったのか
継母も…少しチーズが減ったのを見て、「あら、チーズがない!」と聞こえよがしに言う。
分かっていたくせに!少しくらい良いじゃない!
あんたたち、酷いよ!って。
それと同時に、あの時のワンにも、今のワンみたいに、温かいご飯を食べさせてあげたかったな、
こんな風に一緒に眠りたかったな、って。
でも、休日でありながら、急遽手術をしてくれる獣医さんを探せたこと。
救急病院でそのまま手術したら、10000ドルを超えるから、頭を抱えたけど
他の病院を探せた。
これがお父さんの起こした奇跡なのかもしれない。
そう思ってやるよ。仕方ない、だってあなたは私のお父さんだもの。
…そして、自分の記憶も同時に癒しましょうかね。
天使の羽根みたいな雲。
dogは逆から読むとGOD
私はあの日のワンに謝れる人間でいたい。
いつか私が死んだとき、必ず会いに来てね。
たくさん謝らせて。