近畿・四国・九州・山陰 編 ~西へ~(1)1日目①は、→こちら
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高さ10mを超える幹が直立状態で残存しており、世界的にも例がない規模の
埋没林である三瓶小豆原埋没林(国の天然記念物)を見学しています。


小豆原の谷は合流部が埋め尽くされたことでせき止められ、ダム状態になりました。
この状態は二つの現象をもたらしました。
土石流の直後に流れ込んだ火砕流は温度が300度前後ありましたが、木々は樹皮表面が炭化しただけでした。ダムに水が溜まったことで火砕流の堆積物が急冷されたことが推定できます。
また、ダムに流れる水は周辺に堆積していた火山灰を運び込み、木々を急速に埋積させていきました。おそらく、最初の土石流の発生から、木々が10m以上の深さまで埋もれるまでに要した時間は、数ヶ月程度と思われます。
地形的な偶然は、ダムの形成だけではありませんでした。
このような形で堆積した土砂は、普通は浸食されるのも早く、数千年の時間が経過すると谷は元の深さまに戻ってしまっても不思議ではありません。
ところが、谷を流れる河道の位置が、岩盤の上で固定されたために浸食が進まなかったのです。岩盤で固定された部分は、埋没林から約800m下流にある「稚児滝」です。
土石流などで谷がせき止められ、そこにあった森林が埋没することは、火山地帯ではそれほど珍しい現象ではないでしょう。にも関わらず三瓶小豆原埋没林が希有な存在であることは、埋没後の浸食を免れたことが大きな要素だと考えられます。
-おおだWebミュージアムより

巨木の流木群
立木の根元に横たわる流木は、岩屑なだれが流下する途中でなぎ倒してここまで運んだものです。出土状態では、立木の下流側に流木がからみつくように折り重なって、岩屑なだれが谷の下流側から玉龍してきたことを示しています。
年輪パターンの比較によると、流木の大部分は立木と同時期に枯れています。岩屑なだれで埋もれた立木は、その後間もなく枯死したのです。 -案内板より


木々が朽ちなかった理由
地中に埋もれた木々は地下水に浸されていました。地下水には酸素がほとんど含まれていないので、材を食べる小動物や菌類などが繁殖できません。そのため、劣化の進行がごく穏やかだったのです。食品の缶詰と似た状態です。埋没林の材は、強度は若干低下していますが、保存状態は極めて良好で木の香りが残っています。





三瓶小豆原埋没林の形成
長大な幹は、火山活動にともなう多量の土砂供給と地形的な偶然によって直立状態で埋もれました。約4000年前、三瓶火山の活動にともなって発生した岩屑なだれの土砂がこの地へ流れ込み、立木の根元を埋めました。この土砂は、隣の谷との合流部から逆流したもので、立木を倒すほどの勢いは失われていました。また、土砂で谷の下流がせき止められて水が溜まり、水流に運ばれた火山灰が木々を深く埋めました。




地層が示す情報
この標本は、火砕流堆積層と水流で運ばれた火山灰層の境界部分です。両層の境界は連続的に変化していて、火砕流が堆積した直後に水が流れ込みはじめたと考えられます。火砕流堆積物の温度は水によって急速に下がったため、埋没林は樹皮しか炭化しなかったのかもしれません。
-案内板より


貴重な埋没林の発見は、理科の教師だった故松井整司氏の功績によるところが大きい。1983年の水田工事中に出現した巨木の写真を目にした松井氏は、地底の森の存在を直感して調査を行った。埋没林につながるいくつかの証拠が見いだされたことを受けて、島根県が発掘調査を実施し、1998年の晩秋、地中に直立する巨木が幾本も発見された。自然科学的に高い価値を有することに加え、見た目にも圧倒的な迫力を有することから、一部を掘り出して県立三瓶自然館に展示するとともに、現地の展示施設として三瓶小豆原埋没林公園が整備された。 -おおだWebミュージアムより

埋没林の発見は出雲の古代史にも一石を投じた。古代に巨大な神殿を有していたと伝わる出雲大社について、建材として必要な巨木を調達できた可能性が浮上した。出雲国風土記には、出雲市佐田町の吉栗を神殿の木を採った山と記されている。三瓶小豆原埋没林の発見から、歴史学者は吉栗のあたりにも古代以前にスギの巨木林が存在していた可能性を連想した。
埋没林の発見から1年半後、出雲大社境内の発掘調査によって、直径1mを超えるスギの巨木を3本束ねた柱が発見された。柱の配置が記されているが、真実性が疑問視されていた「金輪御造営差図」のとおりに、宇豆柱と心御柱が出土した。発見された柱の時代は鎌倉時代初頭で、埋没林とは時代が大きく異なるものの、柱材の調達先を研究する上で、縄文時代にスギの巨木林が存在したという事実は大きな意味を持っている。 -おおだWebミュージアムより
つづく
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