静かに私達は閉じた。


 ここまで辛い状況だったとは思わず、そこまで追い詰められていた

 彼女を救えなかった自分に対して、情けなくなった。


 大事な後輩、仲間を失う事はここまで辛く、悲しい事だとは思わなかった。


 自分も死ぬということを止めにしようと思う。でも、いつ発作が起きるか

 分からない恐怖もあった。

 


 私達は家に鍵をかけて集会場に向かった。


 日記を抱えたまま。


 お母さんにこの日記に関しての話をして、預けた。


 多分、その中身を警察に押収されることも伝えた。

 


 告別式が始まり、お経を読み上げ、それから私達は火葬場に向かう

 マイクロバスに乗り込んだ。


 かなりの時間だったが、市内では一つしかないところだったので、

 以前に来たことがあるのを思い出した。


 それでも、誰のお葬式だったのかは忘れてしまったが、見覚えのある庭園だった。


 池には恋が放たれており、鮮やかにジャンプをしている。


 ついた早々、焼き場の入り口で再度お経を読み上げた。

 


 出棺の時が迫り、母親が大きな声でこういった。


 「今度生まれ変わる事があれば、ちゃんと親より生きるのよぉ~。」



 胸に響いた内容だった。


 辛い状況から脱したとき、人は生まれ変わる。


 自分達でもそうであってほしいと願いたい。


 これから残された人たちがこの機会にしっかり生と死を考えられるようになりたいと…



 鈴木は焼き場の中へお棺毎旅立った。


 思い出の品は、付けていたリストバンドと、制服、そして最後に撮ったプリクラだ。

 


 火葬場では2時間ほど時間を要した。


 長い間じっくりじっくりと、灰になり、空へと散っていくあの子の事を考えながら。

 


 休憩室では終始無言で過ごしていた。


 それでも、父親は皆に愛想をふりまき、毅然と振舞う姿に痛々しかった。

 
 この間に私達は、一緒についてきた、警察の方に色々話をした。
 


 この間の件、日記の件、どういう感じだったのかと犯人像を追いかけるのに

 必死になってくれた事が救いだった。



 現時点では、おなかの中の子のDNA判定は容易ではなく、事故直後の

 死亡解剖で明らかになるのはあと1週間を要すると話をされて、詳しくは

 そこかららしい。


 でも、事件性を感じてくれた警察には少し感謝をしたいと思った。

 捕まった所で被害者は死んでいる。罪をつぐえないし、責任も取れない。

 


 
 ようやく火葬も終わり、私達は呼ばれた。


 いよいよ変わり果てた姿で出てくる。


 2回目のショックを受けるのだ。


 出てきた鈴木は、綺麗な骨の姿で、どこと泣く横に向いて寝ている形だった。

 もう、行ったんだね…



 大きな空へ、違う世界へ旅立ったと思うと、なんかすこしほっとしたような感じがした。


 


 これで苦しむ事はなくなった。ようやく安堵の荷がおりたのだろうか。


 でも、あの日記ではもっと行きたかったという文面が殴り書きで書かれており、

 そのときの心境などものすごく読み取れた。


 ついさっきまでいたのに、なんでどうしてと思う気持ちと、あの子の事を

 思うと、これでよかったのかなと思うのと2面性があり、なんか訳の分からなく

 なってしまっている。


 
 私達は骨を拾いに鈴木の近くまで寄っていった。


 丁寧に係りの人が骨の説明をしてくださっている。


 どこの骨なんぞは関係ない。ここにはもういないのだらから。




 私も橋で拾いあげて、そっと骨壷に入れた。陶器でできた容器には名前が入っており、

 「清海へ永遠に…」


 色々な意味が詰まっていると感じたが、お父さんのお考えあっての事だと思う。


 永遠なんて、本当にあるのだろうか?つい考えてみたが、すぐには分からない。


 多分、もう少し大人になれば、分かるのかもしれない…

 


 最後の「のどの骨」を拾い上げたお父さんが静かにふたをした。


 大事そうに桐の箱に移して、閉じた手をじっと見つめている。

 
 
 これから、私達は鈴木の家に帰る予定だったが思わぬ来店がいたのだ。

 真由美は先に行くといい、みんなと一緒に向かった。

 
 


 少し私はこのとき、張り詰めた気持ちが一気に破裂し、その人に

 抱きついた…


 果てしなく泣いた、泣いて泣いて、泣きまくった。



 誰もいないフロアーに私と相手の影が静かに夕焼けで伸びていた。






 6月12日


 今日はとてもつらい出来事があった。


 人生最初で最後かもしれないが…


 学校の帰り道に、少し部活も遅くなり、かなりタイトな練習だったが、

 自分ではなんとか乗り切った内容だった。


 あまり怒られないが、それでも自分に課す様にしないともっとはうまくはならない気がする。


 帰りは比較的電車の中は空いていた。


 1両に乗っている人は12.3名といったところか。


 私は恥から2つ目のシートに座っていたが、進行方向の先の方に2,3名で今風の

 男性達が私を見て、何度か相談をしている。


 今思えば、そのグループの中で何度か見かけた人もいたが、グループで見るのは初めてだったと思う。


 そこで気づけば良かったのだが…


 いつもの駅で、いつもの帰り道を行くと、目の前にはさっきの男達がいた。


 公園のわき道でなかなか、目に付かないところだ。近道でいつも利用をしていた。



 「何ですか!」



 私は目の前に立ちはだかった男達に向かって言ったが、不適な笑みを浮かべていた。

 


 一人が私の背後に回り、ハンカチか何かで口を押さえた。


 両脇には二人がつき、腕をつかまれた。


 公園に連れ込まされて、端の方にある、草木の中で横に倒され、次々と手が伸びてきた。

 恐怖だった。


 制服をうまい具合に、はがし、体のみさせられて私はあちらこちらと触られ、気持ちが悪くなった。


 その次は、おっぱいをもまれて、口を付けられて、かまれて吸われて、その時点でも

 なきじゃっくていた。


 次々と男達は下半身を露出し、私の中に入ってきた。


 そのころにはすでに私は抜け殻となり、何にも感じなくなっていた。


 気持ちいはおろか、痛い、つらい、悲しいの感情も湧き出てこない。


 人間落ちるとこうなるのかとまざまざと自分の体で体験をした。



 
 すべて私の中で発射して、その時は妊娠時期などあるのも知識として

 なかったので、まさか妊娠しているなどは分からなかった。


 男達は行為が終わるとそそくさとその場をあとにして、投げかけるようにこういった。


 「またなぁ~あはあはははは…。」


 ふざけるなと、吐き出したくなったが、逆上されたら又起きると思ったのでやめにした。

 


 男達はなんで、こうもいとも簡単にするのだろう。


 男は全員こうなのか、自分の性欲を満たすだけの動物なのかと感じた。


 人生いやになった。今でもいやになる。毎日、以前の私を演じる事がつらい。


 以前は自然にある意味、自分のままだ、

 自分らしさというやつなのかな?


 今は違う、今の自分は落ちこぼれだ。


 こんな汚い人間、いる価値があるのだろうか?


 いやいなくなったほうがいいに決まっている。


 これ以上みんなに迷惑をかけるわけには行かない。


 もうすこし、自分がおちついてからにしようと思った。


 みなさん、ありがとう…


 こんな自分に付き合ってくれて。

 こう思えるのは、その事件がなかったら思わなかっただろう。

 正直にくいが、このままでは終わらせない。

 死んで呪ってやるぅ~としか思えない自分がにくい。

 
 本当に今までありがとう!

 いつ死ぬか分かりませんが、死ぬのは確実です。

 急に死んだ皆さんへすいませんでした…

 送辞がおわり、お通夜では異例の拍手が起こった。


 最初は何の出来事かと分からなかったが、自分の席に戻り冷静さを取り戻した。


 うれしくもあり、それでも何かやり遂げた感はあったが、誰もが次の瞬間下を向いていた。


 現実問題は何も解決していないことを改めて感じる。

 犯人もつかまっていなければ、無論鈴木ももう戻ってはこない。

 その中での拍手は感慨深い。

 


 終盤に向かい、お父さんの挨拶も終わり、解散の方向に向かっていった。


 私たちは、食事を通す事はできずにお茶だけを頂き、明日の告別式の為、

 早々お邪魔をした。

 


 帰りの駅に向かう道で真由美と話をした。

 


 「なんかあっけないお通夜だったね…。」
 と真由美がつぶやいた。


 「そうだね、涙は最初だけで、後は淡々と進んで、もう少し名残惜しくてもよかったよね…。」

 


 月は三日月で、かけた暗闇の暗影を見つめていた。

 


 明日は本当に最後だから、しっかり骨を拾わないと…

 駅でそれぞれに電車に乗り、別れた。



 次の日は雨だった。


 8月にしてみれば珍しいが、しとしと延々と振る雨模様だった。


 「今日は昨日と打って変わってすごい雨ねぇ~。」
 と駅で合流した真由美がぼそりと言った。


 
 朝は10時からだったが、最後のお別れと”日記”の真相を見る為に

 8時にここで待ち合わせた。


 「さて、あいつをしっかり送らないと!」
 と勢いをつけて、集会場へ向かった。


 集会場につくなり、お母さんが警察の方をつれてきた。


 「少々お話させてもらってもいいかな?こんなときで申し訳ないが…。
  昨日は興味深い話をしていたのでね…」


 事件性を疑った警察が動いたのだった。


 自殺は自殺で執り行われるが、もし背景にいじめや暴行があれば、
 犯人への手がかりになるといわれた。


 「でも、あの子はそれを望んではいないはずではないですか?」
 と、私は食らいついた。


 「しかし、このまま自殺で片付けられるのも故人は浮かばれない。
  もしかしたら、第二の鈴木さんが出たほうが辛いのではないかと
  私たちは判断をしているが、どうだろう。」


 確かに警察の言うとおりかもしれない…


 少し心が動いたが、それでは今手元にある”日記”を出さなければならない。

 それを渡す前に私たちでも把握をしておかなければならない。


 私は決心した。



 「それでは、告別式が終わってからにしていただけませんか?
  あの子の肉体があるときは、しっかり見送りたいんです。」


 「分かりました。じゃあ、後ほどでいいかな?」


 「はいっ。」


 私たちは急いで、お母さんの許可をもらい、家に向かった。

 
 日記には壮絶を際廻る内容が書いていて、一部始終事件の事が綴られていた。


 絶句をした。あまりにも内容がリアルすぎて、隣に居た真由美もずつとはもう日記を

 見てられない感じで、目線を下に移した。泣いていた。
 


 あの子がこんなにも辛い思いをしていたなんてとまた悲しい思いになった。


日記の内容はいかに続く…………