よく行く海岸と言えば、観光のメインの海岸かと思っていたのだが、穴場中の穴場で

 さすがど関心してしまった。。丁度バスが着たので、目的地まで向かったのだが、

 その車中もいろいろな話ができて面白かった。



 「戦争中この御用邸に天皇がきて、隠れていたという話だぜ…、ひどいよなぁ~
  みんなが一生懸命戦っているというのに…。」


 葉山の御用邸のところに来て、そんな事を言ってきた。


 門には守衛さんがいて、厳戒なムードがないが、それでも重々しい雰囲気を漂わせていた。

 そんな話は逆に面白かった。

 


 「そうだよねぇ、お国のためといいつつ、天皇という神の化身扱い見たいな感じで
  拝んでいたんだもんねぇ~…」


 「そうだよなぁ~…自分たちは捨て駒でもいいという時代があったんだから
  今とぜんぜん違っておどろきだよなぁ~でも、昔から日本人って無謀扱いか、
  猿真似扱いされていたんだよなぁ~」


 その点なんか今も昔も変わりはなさそうだ。
 


 技術革新だと言っていても、欧米のまねに過ぎない時代がずっと続いているわけだから。

 


 「おっ、次のバス停で降りるぞぉ~。」


 丁度家々の隙間から、海が間近にのぞけられる様になってきたときだった。


 晴れ渡る空は、青々しく眩しくて、海なんて見たら反射して見えない位ではないかと

 思える位だった。


 
 バス停を降りると古くからの家が立ち並ぶわき道を進んだ。


 確かに海の方向だったが、果たしてここが本当に海にたどり着けるのかというくらいの

 道なき道を進んだ。


 「本当にこの道でつくのぉ~。」


 少しぼやき気味に私は言ってみたが、そんな事はお構いなしで進んでいった。

 


 ようやく、木々の隙間から光が見えてきた。


 海だ


 そう叫びたい気持ちを抑えて、広がる海岸線に進んだ。

 


 ゆめとの後を追って、走り抜けた。

 
 少し感動をした。


 防波堤があり、テトラポットが波うち際に備えていた、誰も居ないプライベートビーチに

 なっていた。


 遠くの砂浜で、子供たちが波間で遊んでいる風景が和やかだった。

 
 当分じっと見つめたいたが、なんか感傷にひたってしまいそうだったので、

 砂浜に腰を下ろして、話を始めた。


 「ねぇ~ゆめとって、どんな漢字を書くのぉ~?」


 「えっ、んと、ゆめは夢で、とは何か変わっていて、人ではなくて斗なんだぁ
  だから”夢斗”って書くんだ。意味はわからんけど、あきこちゃんは?」


 「私は亜希子って書いて、自分もわからないんだよぉ ん~適当ぽいんだけどね」

 
 


 何気ない会話から、少し距離が近づいた感じがした。



 「なんて呼んだらいいの?」
 


 「そうだなぁ~みんなから、そのまんま”ゆめと”って呼ばれるけど、なんか
  特別な読み方がいいかもしれないなぁ。」


 「ん~なんだろう、”ゆめっと”とか、”ゆめゆめ”とか…」


 「なんだよーそれぇ~冗談はやめてくれよー。」


 「結構本気なんだけどね…」



 そんな他愛もない話をしつつ、真上に来ている太陽が妙に暑く感じた夏の午後だった。




 外を眺めながらひた走る電車の外を眺めながら、少し暗い気持ちになった。


 それを横目に心配そうに見る彼が心強かった。

 
 すこし、自分にも”あいつ”との一連の関係を照らし合わせてみた。


 まだまだ、心の傷は治らない。


 時々どうしようもないくらいの感情が湧き出てくる。


 早く、どうにかしないとあせりめいたものもあり、何もできていない自分が居た。


 正直、この時点では軽くしか考えず、どっちにしてもリストカットさえすれば

 気持ちは楽になれるのだから、心配はないまで思えた。

 


 でも、自分も傷つければ誰かが悲しむことは知っていた。いや知ることができた。


 それを教えたくれたのは紛れもない”鈴木”だ。


 だから無駄にはしたくなかったのだが、方法がなかった。


 見えない出口で苦しむ自分は本当に哀れだ。


 悲劇ではなく、情けないまで思えた。



 
 電車は鎌倉の駅に着き、目の前の「茶菓子屋」でお茶をする事にした。



 「ん~なんかいい天気やなぁ~…」


 「うん…、本当に気持ちいいなぁ~。」


 へぇ~少々関西交じりなんだと思ったが、聞いていて変ではなかった。

 


 「なぁっ そういえば彼氏とはいるの?」


 「えっ、なに急に??居るわけないでしょ!!なんでそんなん急に聞くわけなのぉ~??」


 「えっ、だってきになるでしょ、こうやって二人で一緒に居るわけだし…」

 


 ん~このときはその質問の意図がまったくわからずで、やっぱり鈍感の域を超えていた。


 ん~なんのアプローチなのかは少々わからず、まだまだ恋愛の疎い感じだった。


 でも、こういう会話って本当に楽しめるもんなんだと実感したのもこのときだった。

 


 「さてと、どこいこうかなぁ~鎌倉案内は隅の隅まで知っているから任せといてねぇ~」


 「う~んそうだなぁ~…、やっぱりこの時期は海と、おいしいものかな?」


 そういえば、朝から何も食べてない。


 お腹がすいたことも忘れていたのだった。


 好き嫌いの多い私、好きなものしか目一杯食べられのもこの時期くらいからだった。


 気づく間もないくらいに、偏食気味になっていたのだった。


 
 私たちは自然に店を出て、海に向かっていた。


 啓太の家と違う方向に歩いていた。なんか、少し穴場があるらしい…



 少し楽しみにしていた。



 さすがに日中の太陽は容赦なく照り付けるが、それでもなんか二人だと

 歩いておしゃべりするだけでも、楽しかった。


 これがデートというやつかと改めて実感した。



 気持ちのいい風が、二人の間をすり抜けて、今後どうなることになるか



 わからないが、私の病の感知は当面先になりそうだった。




 その相手は”ユメト”だった。


 あれから かれこれ2週間以上たっていた。


 懐かしいのと、今の心境を考えたら、つい抱きついてしまったのだ。



 「どうしてここがわかったの?」


 「いやぁ~あれから、ベルがならなくて、心配になってつい、一緒にいた圭太くんから

  話をしたら、今はこういう状況だって聞いたから…」


 事実、私とだけでなく、圭太のベルも知っていたというので、圭太に感謝をしないと。



 「ごめん…こんな状況だったから…忘れたわけじゃなくて、そんな気持ちになれなくて。」


 「わかるよ、大丈夫。俺だって同じ状況だったらそうしていたから、大丈夫。」


 彼の優しい声と、どことなく低音で響き渡る声が心を温める。

 


 「ごめん、シャツをこんなにびしょびしょにしちゃって…。」


 「大丈夫だよ、洗濯すれば。それより、君の心の傷は拭えないからね。」

 「ありがとう。」

 


 こういうときに、近くにいてくれる人は今までなかった。


 力になってくれる人はいなかった。


 初めてのことで、淡い気持ちになったのは正直な気持ち。


 包み込まれる安堵感と、相手に寄り添う心地よさを感じる瞬間、

 自分はときめいていた。


 もしかしたら、これが最後の鈴木からのプレゼントだったのかもしれない。



 事実違うにしても、こんなときに引き合わせてくれた、鈴木に大きな感謝と

 鈴木の分まで強く生きなければという思いはふつふつとよみがえって来た。


 鈴木のお骨を乗せた方向、自宅の方をいつまでも私は彼の胸の中から

 見つめていた。

 


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 無事に鈴木は自宅に戻ったとベルが、真由美から届いた。


 真由美は自宅に帰り、私達は明日からの生活に備える事にした。


 49日を迎える前には、まだ秋大会、その前には強豪チームとの練習試合。


 そして、お盆休みがあり、お盆まで1週間をきっていた。


 その中で、この出来事は一生忘れる事はできない。


 またこの事を自分の気持ちに切り刻まなければならない。


 そう固く決心をした。
 
 


 私達は火葬場から歩いて地下鉄に乗り、久々に海を見たくなったので、

 送りがてら鎌倉に向かう事にした。


 こうやってデートらしいデート、ましてや相手を意識してしまうデートは

 初めてだったので、内心どきどきした。



 でも、彼は静かに笑っていてくれた。



 微笑みに近いものだったが、それが自然で、私も自然に笑顔になれた。



 …これがデートというやつかぁ~、でもユメトはどう私のことを思っているんだろう。

 自分の一人勝手な思いだったらどうしよう…



 そんな一抹な不安をよそに、電車は静かに海へ向かうレールをひた走っていた。