夜に空が包まれたころ、そろそろ、その場から後をした。


 しばらく、呆然として、帰りのバス停までは無言で歩いていた。



 なかなか、言葉を発することができなかぅったが、それでも二人は

 寄り添うように歩いていた。

 


 「さて、そろそろ帰ろうかっ、心配するからなっ。」

 「うん…、」



 なんか、恥ずかしそうに言う私を察してくれたのか、笑顔で

 言ってくれた。



 まだまだ、恥ずかしい。



 これが恥ずかしくなるのだろうかはまだわからなかった。

 



 
 鎌倉駅行きのバスが来た。

 運賃を払い、一番後ろの席に座った。



 乗客は少なめだったので、私たちの会話がかなり響いた。



 「少しは気が晴れた。いい気分転換になったかな?」


 「うん、ありがとうねっ、今日は、なんか楽になった気がする。」

 「そっかぁ~そりゃぁ~よかった、来たかいがあったか。」




 豪快に笑う、彼を見て、くすくすと思わず笑ってしまった


 やっぱり、笑顔はなにものにも変えられないなぁ~と改めて思った。



 そして、自然に居られる自分が妙に不自然なきもしていた。



 バスは海岸通りを日ひた走る。



 黒い海は眺めることはできなかったが、それでもにおいがとても

 心地よかった。




 ときどき、自分での葛藤に襲われた。



 ”あいつ”の事をしっかり話したほうがいいのだろうか?


 
 そんな事を考えるようになってしまっていた。


 


 正直にいつかは話さないと。

 嫌われるのが怖い。



 でも、本当のことを言うと、やっぱり嫌われてしまうのだろうか。



 ん~悩みに悩んでいた。



 前向きには考えられない、私をさらに悩ませていた。



 どうしてもといえないということが先に来てしまう。



 そんなことを思いながら、バスは駅についた。




 
 「ねぇ~手紙書くから、住所教えてねっ!」


 「えっ、手紙かぁ~なんか恥ずかしいなぁ~、俺字下手だよ?
  それでもいいんだったら、かまわないけどねっ。」



 「一方的に送りつけるから大丈夫だよ。」



 「そう、じゃあ、何か書くのあるかな?」



 と住所と宛名を書いてもらった。



 今度は会話は案外と言うか、かなり苦手なだから、ちゃんと手紙で自分の事を伝えよう。



 正直に話せば、ちゃんとわかってくれるはずと信じられる相手で居てほしい。



 そう願いのほうが強かった。


 
 駅構内まで付き合ってくれた。



 夕方のラッシュでさすがに下り電車には沢山の人が降りてきたが、

 それでも、のぼりはたいしたことがなかった。



 「きをつけてなっ。」



 「ありがとう、3つ先で降りるから大丈夫だよ!」




 最後の最後までやさしさをくれる彼に、感謝をしていた。



 駅の中は、ごった返していたが、今は彼しか見えない自分が居た。


 少し前までは、矛先を自分、なんでもかんでも自分のせいにしていた。



 それでも、やり場のない苛立ちを覚えていた。



 まだまだ、これからこれから、自覚しているだけまだましかと言い聞かした。


 


 ゆっくりと電車は駅から離れた。

 何分もしないうちにベルが鳴った。






 「キョウハアリガト。マタアッテネ。」


 



 一言の言葉を胸に刻んで、帰りを目指した。




 自分の心と気持ちが体と同時に、自然に動けるように祈りながら…




 夕暮れも地平線に着きそうなとき、埠頭の先に二人は方を並べていた。


 キレイな夕日も、そろそろ終わりかけのときだった。


 「本当にきれいな夕日、落ちちゃうねぇ~…」



 「いやぁ~落ちるんじゃなくて、そう見えるだけだよ
  だって太陽から見れば、一日中いや宇宙中照らし続けているわけだから、
  人間から見ただけだから、落ちるとはいうけどねっ。」



 なんか、この人…観点が違う。


 そういうところにも少し惹かれる部分もあった。


 見方が違うと、考え方も違う。考え方も違うと、見方も違うと感じた。



 「でも、人間からみたら、そう移写るでしょ?みたまんまがいいよぉ~。」
 
 「そうだねっ、それも大事。でも、太陽・相手から見ることも時には必要かもよ。」

 
 確かに…見方には裏表だけでなく、縦、横、上、下なんど一杯あるからねっ

 じわりじわり、感じる夢斗との距離、これも夢斗は感じてくれているのだろうか?


 「なぁ~…」



 いきなり方を並べていた、夢とがこっちを見てきた。


 「キスしていいか?」




 不意に、いとも簡単に言ってきたのでびっくりした。


 「えっ…。」

 即答できない。キスなんて、”あいつ”以来の人間とはしていない。


 ましてや互いの同意じゃないのはキスと呼べるのだろうか位に思っていた。


 キスは正直この17年間一度もないと思うようにしてきた。


 それも自分との葛藤。


 
 あの、タバコくさいにおいしか自分は感じられなかった。


 あいつの吸うタバコたしあ、CHERRYのタバコのパッケージを見ると


 思い出していたくらいだから。だから、タバコの自販機は見れなかった。


 
 
 夢斗はこっちを見ているが、凝視できない。


 下をうつむいたまま、何分、いや何十分過ぎた。


 日ももう完全に落ちきる瞬間に。



 おでこにキスをされた。

 
 「じゃあ今日はこれまでねっ。」


 照れくさそうにいう彼は、はにかみながらいった。


 心臓の鼓動が早くなり、そのまま鼓動を感じながら、下をうつむいたましか

 できなかった。


 なぜか涙が出た。



 それを見た夢斗は



 「あっごめん、いやな気持つにさせたかな…。」



 必死に、両手を合わせて、拝むような姿勢で彼は謝り続けたが、自分は違った。


 「ううん。多分、嬉し涙だと思う。」



 精一杯の声を張り上げたつもりだったが、相手には多分小声しか聞こえなかったと思う。



 それでも、彼は優しい笑みで。


 「そっかぁ~、」


 と少し安心したような表情で、手を頭にやり、なでてくれた。

 
 正直、嬉しかった。
 
 男の人に頭をなでられるなんて、親以外なかったし、とても居心地のよさを感じた。

 そばに居たい。そう心底思えた、瞬間だった。


 人を好きになるのに、理由は要らない。


 好きだから好きといえる自分でありたいし、今は少しそうかもしれないと

 思った。


 外に出ると、少し挙動不審が続いたこの2,3ヶ月。


 嫌なことしか思い出されなかった、この2,3ヶ月。


 自分ではどうしようもできなかったこの2,3ヶ月。


 いろいろな人に本当に助けてくれたこの2,3ヶ月。



 一杯の記憶が、頭のなかでぐるぐる回っていた。

 


 
 夕暮れはやがて、闇となりかけたが、まだまだ地平線の下からは

 うっすら、太陽のこぼれ日が指していた。


 


 
 
 
 

 

 波うち際ではしゃぎ回る二人ってなんか、映画みたい…というか…そんな

 ロマンティックなもんじゃないけど



 でも、こうやって男女二人が交じ会うのは、そう経験がない。


 何で好きになるんだろう、好きになるのは錯覚なんだろう。


 その基準で好きになるんだろう。その基準が今ひとつわからない。

 


 本当は理由なんてないのかもしれない。

 少し感傷的になっているから、誰かに支えになってもらいたいだけなんだろうか、

 それだったら、本当の恋愛とは呼べないかも。



 心に傷を大きく受けた私はなんともいえない複雑な心境で居た。

 


 
 「なぁ~あの先まで行ってみない?」


 「えっ、いいよぉ~なんか、岬に先端みたいだね」



 「あはははは、そうかもしれないよぉ~、じゃっ先に行くからっ」

 と勝手に一人で行く夢斗を追いかけた。


 楽しいときはいい、でもこれが悲しいことになるかもしれない恋愛はいやだ。



 そう感じている暇もないくらい、今だけは楽しいひと時だった。


 
 
 ミニ埠頭になっている先端は本当に広がる海だけを捉えている。



 本当に面白い風景。



 どこまでも海でさえぎるものは何もない。

 


 地平線をはるかに見据えて、どこまでも広がっている。

 


 かなり神秘的といえば神秘的な風景が広がっている。

 


 このまま、海の中にだいぶをしたら、どれだけ面白いか…

 という妄想さえ掻き立てられる暗いだった。



 「いやぁ~絶景だ、絶景だぁ~」


 「本当、海ってきれいだねぇ~」

 ひたりして二人して感動をしている。



 見慣れた景色も二人では違うのかなと、夢斗の心境も気になった。

 


 時はすでに17時をまわり、徐々に日も傾き始めている。



 そろそろ、夕焼けは色鮮やかに見える。



 それを期待して、二人は時をまった。



 今日のことを思い返すといろいろあった。



 本当に。




 生と死…生きるとはどういう意味なんだろう。



 そんなことも考えさせてくれた。



 人の生きるという意味は、果てしない。多分科学とかそういう理論的なものでは

 解明されてほしくないというのが、本音。




 いつかは、不老不死がでてくるんだろう。



 だれでも、年老いた人は健康がほしい、若い体がほしいというのだろう。




 人の寿命はなんできまっているのかさえもしらいないが、それでも決まっているのが

 人生である。人の歩く道は100%違うのは当たり前、その中で出会える人、好きになる人

 なんらか影響を与えてくれる人様々だが出会いは本当に力と勇気と知恵を与えてくれる。



 
 鈴木、夢斗、そして家族、友人すべての人へのつながりが私をつくる。



 そんなことを思いながら、きれいな夕日、本当に綺麗な夕日を眺めていた。