その相手は”ユメト”だった。


 あれから かれこれ2週間以上たっていた。


 懐かしいのと、今の心境を考えたら、つい抱きついてしまったのだ。



 「どうしてここがわかったの?」


 「いやぁ~あれから、ベルがならなくて、心配になってつい、一緒にいた圭太くんから

  話をしたら、今はこういう状況だって聞いたから…」


 事実、私とだけでなく、圭太のベルも知っていたというので、圭太に感謝をしないと。



 「ごめん…こんな状況だったから…忘れたわけじゃなくて、そんな気持ちになれなくて。」


 「わかるよ、大丈夫。俺だって同じ状況だったらそうしていたから、大丈夫。」


 彼の優しい声と、どことなく低音で響き渡る声が心を温める。

 


 「ごめん、シャツをこんなにびしょびしょにしちゃって…。」


 「大丈夫だよ、洗濯すれば。それより、君の心の傷は拭えないからね。」

 「ありがとう。」

 


 こういうときに、近くにいてくれる人は今までなかった。


 力になってくれる人はいなかった。


 初めてのことで、淡い気持ちになったのは正直な気持ち。


 包み込まれる安堵感と、相手に寄り添う心地よさを感じる瞬間、

 自分はときめいていた。


 もしかしたら、これが最後の鈴木からのプレゼントだったのかもしれない。



 事実違うにしても、こんなときに引き合わせてくれた、鈴木に大きな感謝と

 鈴木の分まで強く生きなければという思いはふつふつとよみがえって来た。


 鈴木のお骨を乗せた方向、自宅の方をいつまでも私は彼の胸の中から

 見つめていた。

 


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 無事に鈴木は自宅に戻ったとベルが、真由美から届いた。


 真由美は自宅に帰り、私達は明日からの生活に備える事にした。


 49日を迎える前には、まだ秋大会、その前には強豪チームとの練習試合。


 そして、お盆休みがあり、お盆まで1週間をきっていた。


 その中で、この出来事は一生忘れる事はできない。


 またこの事を自分の気持ちに切り刻まなければならない。


 そう固く決心をした。
 
 


 私達は火葬場から歩いて地下鉄に乗り、久々に海を見たくなったので、

 送りがてら鎌倉に向かう事にした。


 こうやってデートらしいデート、ましてや相手を意識してしまうデートは

 初めてだったので、内心どきどきした。



 でも、彼は静かに笑っていてくれた。



 微笑みに近いものだったが、それが自然で、私も自然に笑顔になれた。



 …これがデートというやつかぁ~、でもユメトはどう私のことを思っているんだろう。

 自分の一人勝手な思いだったらどうしよう…



 そんな一抹な不安をよそに、電車は静かに海へ向かうレールをひた走っていた。