完全に集会所の建物が闇に包まれた中で、執り行われた。


 そのときになれば、もう学校関係者各位、先生、生徒も集まり、

 大規模なお通夜となった。その席上では、前には”鈴木”のお父さん、お母さん、

 

 小さな弟が席に着き、お父さんは鋭く前を向いて、

 お母さんは終始下を向いたまま、弟はキョトンした


 表情で、いい子にして、席に付いていた。


 
 お経が流れる中、参列者のお焼香が始まり、それぞれの表情を垣間見た。


 先生たちは全員参列で、中学時代だったと思われる先生まで来ていた。


 生徒たちは総勢300名まで膨れ、”鈴木”の人柄を感じた。


 私たちの部員も集まって、私になんで、どうしてという質問が集中した。


 次期エース、キャプテンになる人材が居なくなるわけだから、それは大きな出来事だ。

 
 式は進み、挨拶に移っていた。


 それぞれの挨拶は決まりきった話で、少し飽き飽きになるころに、私の順番が来た。


 結局文章が考えられず、いきなり本番となったわけだが、妙に落ち着いていた自分が

 不思議だった。


 話すにあたって、本当の事を話そうか、どうか迷ったがこれはやはり事実を伝えるべきと

 思い、みんなを驚かせることになるのは分かりきっていたが、それでも事実を
 
 闇に葬られるのはやはり違うと感じていた。

 事前に話をし、親御さんの了承を得られたのが、私にとって救いだった。

 
 静かに前に進み、一礼をし、話をし始めた。


 みんなが注目している事に気が付いたが、お構いしだった。


 「この度は、鈴木という大事な後輩を亡くし、非常につらい心境でいます。
  みんなもそうだと思います。人が亡くなることはこれほどまでに悲しくて、
  どうしようもない気持ちになっている事は同じだと思います。


  でも、今回の事は自分で死を選び、自分で決断をし彼女は旅たちました。

  非情なものです。


  実は昨日私たちは仲のいい友人真由美と鈴木で久々にはじけました。

  学校帰り、みんなでお茶して色々な話をしました。


  その前からなんですけど、実は彼女は、ずっと本人は黙っていたんですけど、
   ”レイプ”をされ、お腹には誰とも知らない子供を宿してしまいました。」



 全員が固唾を呑んだ。一瞬凍りついた空気になったが、やはり人の話し、
 興味を持つ者が居て、それもそれで腹正しかった。



 私は続けた。



 「その話の最後に、おろす事を決めて、私たちだけでの秘密にしようとしていました。
  誰でも話せる内容ではありません。同情はいりません。ただし、そういう被害にあい
  今でも苦しむ人が居るのかもしれません。そういう人に対して、責任感の強い”鈴木”は
  苦渋の決断をして、旅立ったと思います。誰にでも明かせなかった悩みを打ち明けた
  後の表情は実にすがすがしいものに感じられました。


  しかし、彼女はまだ悩んでいました。


  大事に大事に育てられてきた、お父さん、お母さんを裏切ってしまったと
  思い込んだに違いまりません。


  そんなことないよと励ましては居ましたが、それでも結論はすでに話をした時に
  自分で決めてしまっていたのかもしれません。


  それは、やはり”鈴木”だからだと思います。


  彼女であれば、こんな責任の取り方はしていないと思います。


  彼女の中では、結果処理できなかった内容だったと感じます。


  自分たちも、支えきれずに居た気持ちはあります。


  あのことほど、芯のしっかりした子は居ません。


  後輩でも頭の上がらないところもありました。


  そんな中でのこの出来事です。


  私は、その事実を知り、驚きましたが、自分は頼られていると感じ
  うれしくなったことを覚えております。


  ”鈴木”は旅立ちました。永遠の旅に出ました。彼女を忘れることはないです。


  一生彼女への気持ちは、生き続けます。


  彼女へいいたいことがあります。


  一つ、私たちにごめんなさいはなしだぞぉぉぉ~


  鈴木が選んだ道、私たちは受け止める、今を受け止める。


  だから、今までありがとうの感謝の気持ちでちゃんと向こうでも
  生き続けるんだぞぞぞぞぞぉ~……」


 マイクから流れる音がいつまでも響いていた。


 やりきった感はあったが、本当に今のこの素直な気持ちを”鈴木”に届いてくれと
 切実に願った。



 鈴木という存在もさながら、人間の尊厳はなんなのかの部分を確実に自分に刻み込み、

 生きとしいける者の愛しさと再認識をした、出来事だった。



 とにかく号泣をした。  


人前なのにもかかわらず、わんわん泣いた。とにかく泣いた。  


枯れ尽きるまで…  真由美と抱き合いながら、お互い自分を責めたに違いない。

 「救えたに違いない。」と。   

数知れない人の数だが。、自分で命を絶つ事を断罪とする  キリスト教を思い出した。  

なぜそこまでしなかったのか。亡くなったら一生元に戻せないんだよ。  


生まれ変わっても誰も前が”鈴木”だったなんて知らないんだよ。分からないんだよ。  

そんな事を訴えかけたかった。でも、届かないもどかしさがこみ上げる。  


私も自分を責めた。リストカットで責めた。

これは、逃げる為。

今の自分から。  

気持ちがなぜか楽になる。それだけ。  


つらい所からの唯一の逃げ道だった。だから、死にたいとかそういうことではない。  

でも”鈴木”は死んだ。

もう今もいない。こ


れだけ、正直つらいことだとは予想すらできなかった。   

もうこの経験はしたくない。病気とか自然な現象では仕方ない。

人はいづれ死ぬのだから…  自分で命を絶つことこれはかなりつらい事だ。


 もう本当にしたくない。確実にしたくない事だ。  そう決心した。


目の当たりにして、本当に自分でもリストカットは止められるのだろうかは  

まだ分からないが、確実に自分で自分を戒めることはやってはいけないことと  

教えてくれたのは”鈴木”だ。   


泣き続けて、すでに夕方になり、お通夜の始まる1時間前になった。  


私たちはお母さんに呼ばれて、お家に呼ばれた。  


集会所より程近い、場所だ。  


入り口にはお母さんの趣味らしく、

ガーデニングの花でいっぱいでベランダにも 多く飾られえいた。  


入り口を開けると、玄関先すぐ右が”鈴木”の部屋だった。  


誰もいない家は静まり返っていたが、鈴木の部屋も同様だった。  

奥にデスク、すぐ脇にはベットと4畳半の部屋にしては、広く感じた。


 デスクの上にはノートと教科書が置かれていて、さっきまでそこに居たような匂いがした。   



「じゃあ、私は集会所に戻るから、少しゆっくりしてからきてね。鍵置いていくから。」   

お母さんは立ち去った。  


お母さんはまだ遺書らしきものはまだ見つかってないとさっき言っていたので、  


デスクの上にあるノート類をぱらぱらめくっていた。  

その脇には日記帳らしきものを発見した。  



「1994 diary」と書いてあった。   

人のノートを勝手に見るのは気が引けたが、  

「ごめんね。」と一言添えて、ページをめくった。



 そこには鈴木らしく、1/1からちゃんと綴られていて、B5サイズのノートに  

びっしり文字が埋められていた。   


私たちはとにかく最後のページを気になり、最後までめくり続けた。   



■8/5(FRI)=3人で!  という表題になっており、この日だけ3ページに渡っていた。  




 もう小1時間たっていたので、そのノートを拝借して、私たちは集会所に向かった。 




     

集会場の裏に車がつけてきた。


 音を聞いて、慌てて、私たちは飛び出した。

 一直線で…



 ライトバンの後ろがあき、中には白い桐のお棺が置いてある。


 「この中に鈴木がいるのね…」
 そう悲しげにつぶやいた。


 静かにレールから、外に引っ張り出し、両側を私たちと、他の方とで

 8名くらいで持った。重かった。


 なんか、人がなくなるというのはかなりの大きい出来事なんだと

 改めて思った。確かに死んだ友人、知人、親戚までは感情がない人まで

 亡くなったと聞くと、記憶に確実に残る。



 そどうしてだろ、それだけ大きなショックなんだろうと感じる。

 


 お棺は静かに中に運ばれる。


 集会所の中にはもう、一回の大広間には祭壇が組まれており、隣の6畳の部屋が

 一時の遺体の安置場所となった。


 お棺は外らかもわかるが、異様に冷たく、ときおり隙間から流れてくる冷気に驚く。

 もちろんドライアイスなのだが、それでもあの子の気なんだということを感じる。



 遺体はそのまま、お通夜を向かえ、明日の告別式までこの集会所で待つ。



 集会所といっても大変豪華なつくりで、一軒一軒がコンドミニアム状態になっており、

 優雅さを感じる。昔はたいしたことない、団地だったのだが、一気に生まれ変わり、今では

 名前も横文字を使うまでにしようかと話まででていたらしい。

 


 和室に通された”鈴木”は静かに、横たわる、無論顔を見れるのも、今日と明日の出棺で

 最後なんだが…



 だから、今のうちに別れを告げよう、でも顔を見たら絶対に泣いて、泣いてそれどこじゃなくなる
 



 気がしてきた。



 
 私と真由美は意を決して、お棺のお顔の部分を開けた。






 驚愕した。




 顔を変形して、誰が誰なのだが分からなかった。




 正直顔は腫れ上がり、嗚咽を発するまでだ。




 これを強烈に見た私たちは完全に言葉をなくした。




 こうまでして、自分の命を投じた彼女を救ってあげられなかった、

 自分が情けなかった。





 真由美も同じ事を考えていたに違いない。



 


 人間の命を尊ぶことができた一瞬だった。