「セレーネさん、大丈夫でしたか?」
「えぇ、何もされてないわ。それにしてもあなた達が悪魔だったなんて...。」
その言葉にクラルテとナハトはうつむく。
「...やっぱり、悪魔なんて嫌ですよね...。」
「実はね......
私の夫、悪魔なのよ。」
『 ・ ・ ・ えぇ~!!!』
「私にとって悪魔は一番身近な存在よ。まったく嫌じゃないわ。」
驚く2人を見てクスクスとセレーネは笑っている。
「良かった~。嫌われたらオレ立ち直れなかったよ。」
「そろそろ夫も帰ってくるわ。家に戻って紹介してあげる。」
先ほどお世話になったばかりの家にまた戻ることになった。
家の中にはすでに誰かの気配がする。
「ただいま、もう帰ってきていたのね。」
「おかえり、セレーネ。あれ?その子たちは...。」
30代くらいの優しそうな男性。セレーネの話だとこの人は悪魔らしい。
帰ってきたばかりなのか、まだ、スーツ姿である。
「あ!かいちょーじゃん!!」
ナハトが言う「かいちょー」とは「会長」のことだろう。
「おぉっ!ナハト君じゃないか!しばらく見ないうちに大きくなったな!」
2人は再会を喜んでいるが、初対面であるクラルテはまったくついていけない。
「知り合いか?」
「そうだよ。それに悪魔界ではそうとう有名な人だしね。」
「...もしかして、君はユーベルさんの娘さんかい?」
「お母さんを知ってるの...?」
それを聞いた男性とセレーネは一瞬驚き、嬉しそうな顔になった。
「一緒にハンターに捕まってしまったと聞いていたけど...。」
「生きてたんですね...。」
「あなた達は、お母さんとどういう関係だったの?」
数少ない母の話が聞けるとクラルテは目を輝かせていた。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕は、ブルート。
『人間と友好関係を築いてみたいなと考えている人や実際人間界で暮らしてみたけど困ったり悩んだりしてることがある人たちが集まる会』、略して『友好会』の会長をやってるよ。」
「...長いな。」
「...いっそのこと『友好会』だけでいいのにね。」
クラルテとナハトのツッコミが聞こえなかったのか、ブルートは続けて語りだす。
「この会はね、また人間と仲良くしたいという人たちが活動していて、ユーベルさんもその中の1人だった。」
「それに、私とユーベルさんってそっくりでしょ。だから、仲良くなって個人的な付き合いもあったのよ。昨日のアップルパイもユーベルさんとよく一緒に作ったから、味が似てたんじゃないかしら。」
その話を聞き、クラルテは懐かしい味だった理由に納得する。
「前は、悪魔も人間も関係なくとても仲が良かったんだ。だから、たまに人間界の物分かりの良いお偉いさんのところで会議して、今のハンター制度をなくそうと頑張っているんだよ。」
「良かったらあなた達も『友好会』に入らない?」
「...でも、人間と仲良くだなんて...。」
「大切な人を殺され人間を憎む気持ちは良く分かる。ただ、憎しみは争いしか生まない。君たちのように悲しむ人が増えていくだけだよ。...僕はそんな世界は望まない。悲しみを知っている者だからこそ出来ることがあると思うんだ。」
――わたしに出来ること...。
「お母さんが入ってたから入る。」
「決めるのはやっ!普通はもっと悩むでしょ。あんなに人を殺してきたんだから。」
「...正当防衛。」
「指名手配犯だし。」
「...どうにかなる。」
「テキトーだね...。まぁ、オレも入ろっかな。姉貴が入ってたし。」
「お前も似たようなもんじゃねぇか。」
「フフッ、2人ともこれからよろしくね。」
2人の加入の理由はおかしいが友好会に入ることが決まった。
・
・
・
「さて、君たちは友好会に入ったけれどこれで安全になるわけではないんだ。人間界にいれば、また命を狙われる。」
「じゃあ、悪魔界に避難してればいいの?」
ナハトがブルートに尋ねる。
「あぁ、それが一番安全だよ。」
「...わたし、悪魔界にいったことない。」
「大丈夫!不安になるようなことなんて全然ないよ。それにクラルテちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんもいるし。」
「おじいちゃん、おばあちゃん?」
首を傾げた。
「そう。オレの父ちゃんと母ちゃん。」
「分かった。行く。」
クラルテが小さくうなずいたことを確認し、ブルートが悪魔界に案内すると言って森の奥へ歩き出した。
「...分かりやすいんだな。」
森の中にポツリと扉があった。装飾の施してあるその扉にはプレートがかかっていて、『あくまかい』とだけ書かれていた。
「僕もたまに悪魔界に行くからその時に集合してくれ。」
「はい。じゃあ、また。」
「気を付けてね。」
扉を開けると普通に人の家の庭らしきところに出た。
「ここ、オレの家の庭だよ。」
どうやら、悪魔界なら好きなところにつながるらしい。ど○○○ド○のようだ。
「おぉ!ナハト、おかえり!」
「父ちゃん、ただいま!クラルテちゃんを連れてきたよ!」
おじいちゃんと呼ぶには相当若いが、クラルテのおじいちゃんである人が出てきた。
「クラルテ!ずっと会いたかったよぉ♡」
おじいちゃんはクラルテに抱き付き、頬をすりよせてきた。
――ナハトはおじいちゃんに似たんだな...。
クラルテは迷惑そうな顔をしながらも親族に会えてホッとした。
その後、おばあちゃんのいる病院にいった。体の調子があまり良くないらしいけど、クラルテに会えたことで少し元気になったようだ。
――お母さんの美しさはおばあちゃんゆずりだな。
人と関わることをしてこなかったクラルテは戸惑っていたが、それも最初だけですぐにおばあちゃんには甘えるようになった。
おじいちゃんとは話したりもするけど、ナハトと同じタイプなので少し苦手意識があったり、なかったり...。
ナハトは...相変わらずだ。お兄ちゃんポジションなのかよく分からないが、何かと世話を焼こうとしてくる。まぁ、最近は嫌いではなくなった...かも。
たまに、『人間と友好関係を築いてみたいなと考えている人や実際人間界で暮らしてみたけど困ったり悩んだりしてることがある人たちが集まる会』、略して『友好会』の集まりにも出ている。
ブルートの話だとお偉いさんがそろそろいい報告をしてくれるそうだ。
人間と悪魔の共存する世界。お母さんの望んだ世界。それがもうすぐ始まろうとしている。
お母さんを殺した人間をわたしは一生怨むだろう。
だからこそ、そんな人をこれ以上ださないようにわたし達が変えていくんだ。
幸せな未来を...最期までこの世界を愛してるといったお母さんのために...
どうか、見ていてください。お母さん。
~End~
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さぁ、やっと終わりましたよぉ~(^∇^)
10話まで続いてしまいましたが、ここまで読んでくれた方は果たしているのでしょうか!?
最後から読んでしまったという方のために↴(いるのでしょうか?)
これはマザコンとシスコンが暴走する話です((Σ(゚д゚;)エッ‼
...嘘ではないですよ。実際そんな話です。
さて、前回の記事でもお知らせしていましたようにしばらく小説の更新はお休みさせていただきます。
高校生活が忙しいというのもあるんですが、別の理由に小説のストックがないという理由もあります。
今回の『悪魔の子』は元々出来ていたのですが、それでもこの更新のペースですよ!
完成してないのに更新を始めたら何年かかることになるのでしょう...。
一応、書きかけだったり設定の思い付きはいくつかあるのでどれを優先にすればいいのか、意見があったらお願いします(;^_^A
・暴力少女の観察日記
・他人の考えていることが分かってしまう少年の話
・がくえもん(学園もの)
・地球防衛軍
・自分は神の使いだと言う危ない少女と出会ってしまった話
・転生
・王子が逃げ出したので姫が王子になる話
などなど
他にもあるんですが、何しろ思い出すのが面倒くさくて...
いくつか恋愛要素があるのもあるっちゃーあるんですが、ファンタジーに少し加えられた程度ですね。塩ひとつまみ程度ですね。
では,サヨナラ~:*:・( ̄∀ ̄)・:*: