沼地
芥川龍之介
絵の展覧会で、目立たないところにひっそりと飾られていた無名作家の絵。
主人公は、なぜかこの絵に強く惹きつけられます。
見入っていると、記者がやってきて主人公に話しかけます
主人公が「傑作だ」と絵を褒めると、この作者についてバカにした物言いを始めました。
ただの素人画家で、死後に遺族のたっての希望でお情けでこの展覧会の片隅に展示させてもらったのだといいます。
「この画描きは余程前から気が違っていたのです。」
「この画を描いた時もですか。」
「勿論です。気違いででもなければ、誰がこんな色の画を描くものですか。それをあなたは傑作だと云って感心してお出いでなさる。そこが大に面白いですね。」
性格悪いですねえこの記者。
主人公は見る目がないと、暗にバカにしています。
しかし主人公は、そんな記者の思い通りにはなりませんでした。
絵が思い通りに描けず、そのせいで気が違ってしまったこの作者に、大いに感銘を受けたのです。
「傑作です。」
主人公は改めて記者にこう繰り返しました。
ブレない主人公がかっこいい。
万人に受けるものなのか、それともこの主人公のような一部の人間にだけ伝わるものなのか。
いずれにせよ、主人公は自分の感覚を信じてきっぱりと言い切った。
いつもよりもお硬い作風でしたが、やっぱり芥川ですね。
記者の小物っぷりが顕著で、皮肉が効いていました。