朝顔
藤沢周平
(文春文庫「日暮れ竹河岸」収録)
風流なタイトルで、話の序盤も風流な雰囲気だったのに、途中から突然にどろどろした怖いものになりました。
38歳の畳表屋の女将さん。子供はおらず、かといって仕事場に自分が出ていく必要もなく、日々ゆったりと過ごしていました。
人混みに行くと頭痛が出るので、基本的に家の中でなにか手慰みに裁縫をしたり、本を読んだり…と、ゆるゆると日を過ごすだけ。
亭主には外に妾がいることも気づいているけれど、この女将は文句を言うでもなく、おとなしく過ごしているだけでした。
夫がある日、取引先から貰った、と朝顔の種を女将に渡しました。
女将はそれを庭に植え、世話をしているうちになんだかその成長が無性に楽しみになってきました。
楽しむ様子を亭主にからかわれるほどに夢中になりました。
綺麗に咲きほこった朝顔。
ですが、葉の裏に毛虫がたくさんついているのに気が付きました。
慌てて小僧を呼んで処理させます。
横で女将が箸を使えというのも聞かず、素手でぽいぽいと処理していく小僧。
この間、あっちの家でも処理してきたから毛虫なんか平気ですよ
…と、ぽろっと口をついて出た小僧の言葉の意味に、女将は鋭く反応します。
妾の家にもこの朝顔と同じものがある…!
たちまちどす黒いものがこみ上げてきた女将。
朝顔は次々と無残に引きちぎられてしまったのでした。
この終盤がとにかく怖かったです。
女将さんはおとなしくておっとりしていた描写が続いていたのに豹変ですもの。嫉妬って人を狂わせるのもさもありなん。
それにしても朝顔可哀想に。