赤毛 | キネマの天地 ~映画雑食主義~

キネマの天地 ~映画雑食主義~

レンタルビデオ鑑賞日誌



(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

赤毛 [DVD]/三船敏郎,岩下志麻,高橋悦史
¥4,725
Amazon.co.jp


内容:三船プロ製作、岡本喜八監督による明治維新の裏にあった犠牲と矛盾を現代に問う幕末アクション。慶応4年。百姓上がりの赤報隊士・権三は、代官屋敷から年貢米を百姓に返したり、女郎を解放したりと民衆のために働くが、その働きが官軍の目に止まり…。 (Amazonより)


▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



はい!今週の岡本喜八 監督枠は、1969年製作「赤毛」です!

ちなみに本作の製作は三船プロダクションでございます<(_ _)>






慶応四年、江戸に進撃する官軍の先駆となったのは、相楽総三を隊長とする赤報隊であった。赤報隊は東山道軍参謀から年貢半減令の旗印を与えられ、沿道各地の民衆を鎮撫して行った。百姓あがりの隊士権三は、次の目的地が郷里の沢渡宿と知るや許しを得て単身この地に乗込んだ。その頃、幕領沢渡宿は代官と結託した博徒駒虎一家に支配され、民衆はその圧制に苦しんでいた・・・(goo映画より)





…幕末に官軍の一部隊として活躍したものの、時代の趨勢によりやがて不本意な結末を

迎えることになる私兵集団、赤報隊。本作はその赤報隊の一員である一人の男を

主人公とした架空の物語です。赤報隊と聞くと朝日新聞阪神支局襲撃事件を思い出す方も

少なくないかと存じますが、アレもおそらくこの幕末の赤報隊から取ったんでしょうね。



官軍の先鋒隊として東山道を江戸に向けて進軍する赤報隊の中で、農民上がりの権三

(三船敏郎)途中産まれ故郷の沢渡宿に寄ると知り、隊長の相良総三(田村高廣)

許可を得て一足早く出立する。赤報隊士の証しである赤毛の鬘と官軍の証しである

菊の御紋を身につけ意気揚々と帰郷した権三だったが、沢渡宿は代官(伊藤雄之助)

博徒の頭目駒虎(花澤徳衛)、金貸しの木曽屋嘉兵衛(冨田仲次郎)らに牛耳られており、

人々は圧政に苦しめられていた…ってなお話。

 そこにいかにも裏のありそうな木曽屋の番頭左右吉(岸田森)や彼に雇われて

権三を狙う浪人一之瀬半蔵(高橋悦史)、瓦版屋の“雨蛙”(砂塚秀夫)などなど

一癖も二癖もある人物達が絡んで、沢渡宿の面々の運命は思わぬ方向へと

転がっていきます。




で、感想。






・°・(ノД`)・°・





この作品、正直言って最初はあまりピンときませんでした。「七人の侍」の菊千代よろしく

学は無いが陽気で誠実な農民上がりの武士・権三を三船さんが演じており、それはもちろん

ぴったりハマっているのですが、しかしいささかコミカルな演技が過ぎるせいか、

岡本監督らしい「ユーモアの中に潜むダンディズム」が希薄でただただ騒々しく

上滑りな笑いを繰り返しているように感じられたんですよね。

権三が民衆の先頭に立ち代官や謎の刺客に立ち向かう中盤までを観た限りでは、

あぁこれは失敗作だなとそう思いましたよ。



ただ!怒涛の展開が待ち受ける後半は良かった!!ヽ(゚◇゚ )ノ

本作はフィクションですが、背景にあるのは「赤報隊の運命」。彼らに関する歴史上の事実が

本作のストーリーでも大きな意味を持っているんですよ。なので「コミカルな活劇」の

色が濃かった前半と違い、後半は歴史モノとしても非常に見応えのあるものに

仕上がっているんですよね。とりわけラストの“ええじゃないか”はねぇ・・・

思わず涙がちょちょぎれてしまいましたよ。。。(ノω・、)



そしてキャストも素晴らしかったです!ヽ(゚◇゚ )ノ

まぁ主演の三船さんはいつもの豪放磊落キャラでしか無いんだけど(汗)、脇を固める

助演陣がいずれも素晴らしい存在感を発揮してるんですよねー!( ´艸`)

木曽屋に雇われ権三と敵対しながらも、斬る気が有るのか無いのかどうにも底が見えない

謎の浪人一之瀬半蔵を演じた高橋悦史さんもカッコ良かったし、もう見るからに

何か裏が有りそうな番頭を演じた岸田森さんも出番は然程多くないながら存在感抜群。

一方で伊藤雄之助さん砂塚秀夫さんといった“岡本組”の常連もいつものように

しっかり笑わせてくれるし、権三のかつての恋人トミを演じた岩下志麻さん

女性キャストもそれぞれ女の情の深さや悲哀を見事に体現してくれてたし。

そして何と言っても忘れちゃならないのが乙羽信子さん!ヽ(゚◇゚ )ノ

出番自体は然程多くないし主要キャストというワケでも無いんだけど、最後の最後に

鬼気迫る圧巻の演技で全部持ってっちゃいますよーー!ヘ(゚∀゚*)ノ





総評。

前半は三船さんの色が強過ぎて喜八カラーが薄く感じちゃうんだけど、後半の展開には

紛れもなく喜八監督の歴史観、社会観が強烈に現れています。

「葵が菊に代わるだけさ」と冷たく言い放つ半蔵、

「騙りだー! 騙りだ――!!」と悲痛に叫ぶ権三、

「ええじゃないか、ええじゃないか、ええじゃないか!」と踊り狂う民衆たち。

・・・うん、これは幕末を舞台としてはいますが、やはり戦争の不毛さと権力の不条理を

説き続けてきた喜八監督流の反戦映画だとおもいますよ。

以上、オススメです!!