昨日の宝塚記念を回顧しようと思ったが、正直リスグラシューの話だけをすることになるだろう。
リスグラシュー 5歳♀、父ハーツクライ、母リリサイド、レーン騎手、矢作厩舎 優勝
(一部写真は、Ko-Meiさんより)
戦前の出馬表では、キセキが単独逃げる展開で、インからのレイデオロが相手候補だった。
リスグラシューも、金鯱賞ではアルアインを退けており有力ではあったのだが、大外のピンク帽。
外々を回るロスも考えると、同じクラブではレイデオロ>リスグラシューかと思っていたのだが、
レーン騎手が抜群のスタートを決めて、そのまま2番手へ。
逃げるキセキをマークし、直線の入口では交わして、最後は3馬身差。呆れるほどの強さであった。
なぜ、歴戦の牡馬を相手に、これだけの大差がついたのだろうか。それを少し考えてみたい。
① 当日の馬場と展開、レーン騎手
ある程度のスローペースで行った場合、前の先行馬が残る芝馬場であった。今回の宝塚記念の5Fは
1:00:0のスロー判定。それが最後には2:10:8の好タイムの決着になったので、前半スロー、後半ハイの
後傾ラップである。そこで、レーン騎手の好判断で2番手につけていたリスグラシューに流れが向いた
(昨年の秋の天皇賞、JC、春の大阪杯と、キセキの中距離G1戦は、ラップ的にはこのパターンである)
因みに、2012年にオルフェが2:10:9で勝った時は、5Fは58.4秒のハイペースであった。
② 夏の牝馬
しかし、①だけでは説明がつかない大差である。ここは、牡馬との2kgの差と、開催時期も考慮したい。
先の安田記念でも、2、3着馬は牝馬だった。牝馬故に、冬の有馬よりは、夏の宝塚の方が利がある。
③ 2200mの距離特性
中央競馬で、2,200mの距離のG1はこの宝塚記念と、秋のエリザベス女王杯のみ。昨日の勝利は、
ピンク帽のマリアライトがドゥラメンテとキタサンブラックを下した2015年のレースと同じ衝撃を受けた。
スイープトウショウも宝塚記念を制した後、エリザベス女王杯を制しており、古馬の女王級になると、
距離適性も合って、牡馬相手に春のグランプリを制するレベルの馬が出てくるということかもしれない。
④ ハーツクライ産 3勝
それでも、昨日の勝ちはまだ衝撃的であった。そこで当日に阪神芝で勝った馬の種牡馬を見てみると、
ハーツクライ産が3勝をしていて、ディープ1勝、ヴィクトワールピサ1勝であった。
4Rでは同じキャロットのアメリカンウェイクが、1年前デビュー時に2.9秒差の大差負けを喫していたが
それを覆して見事に初勝利している。
このアメリカンは、奇しくもハーツクライ×母父American Postと、リスグラシューと同配合であった。
従って、ハーツとこの血統には、更に向いていた馬場だったのかもしれない。
しかし逆に5Rの新馬戦では、人気を背負ったハーツクライ産駒のシルヴェリオが、4着に敗れている。
この辺りが以前から書いているように、ハーツクライ産駒の難しさというか、奥深さなのかもしれない。
古馬になってから息が長いのも、活躍するハーツクライ産駒の特徴で、出資者のメリットに違いない。
⑤ 矢作流スパルタ
最近の競走馬は、レースを使い過ぎて疲弊するのを避けるため、トライアルを使わずにG1直行等の
レース起用も増えているが、矢作先生はコンスタントに馬を使うことで有名な調教師さんである。
リスグラシューも、海外G1戦も含めてタフにレースを使われていく事で、競争馬としての進化の過程を
経てきてしまったのかもしれない。
⑥ 覚醒
このように書いてみると、昨日のリスグラシューは、父のハーツクライが2005年の有馬記念で突然の
先行策をして、三冠馬ディープインパクトを破ったのと、類似する進化だったのではないだろうか。
あの時、ハーツクライを覚醒させたのはルメール騎手だったが、今回はレーン騎手だったのである。
父の有馬記念は16戦目。娘の宝塚記念は20戦目であった。
リスグラシューは、父親によく似ているから、血統の持つ歴史がここで繰り返されたのかもしれない。
以上のように、①から⑥までを全て勘案してやっと、キセキに3馬身、その他の馬に5馬身以上の差を
つけた圧勝劇の理由が説明できるかもしれないと思った。
春の古馬チャンピオンとなったリスグラシューは、これからどこに向かうのだろうか。
キャロットの規定では、牝馬の現役は来春までとなっているが、この秋以降も注目をしていきたい。
最後に、陣営および出資者の皆様は、誠におめでとうございました(^^)。